Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    しもやけ

    @shimoyake_p_p

    主にえむ・X(Twitter)百々秀

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 20

    しもやけ

    ☆quiet follow

    #百々秀

    ウェディングフォト/百々秀 モラフィネの花が一面を埋め尽くす。
     モラフィネの淡い青色と、雲一つない空の透き通るような青色が混ざり合い、一面青の世界に迷い込んだようだ。風に揺らされる小さなモラフィネの花々はまるで波のようで、「モラフィネの海」という表現はこの光景にぴったりの表現だった。
     
    「わぁ」
     ため息が出そうなほど美しい景色に、思わず声が漏れた。晴れて良かったね、と隣にいた百々人が嬉しそうに微笑む。
     今日、秀は百々人と共にモラフィネで有名な公園に訪れていた。百々人はデジカメを新調したらしく、画材にする景色の写真を撮りたいと言っていた。それで、秀がここを提案した。初めて来たが、写真の撮りがいもありそうだ。ここを選んで良かった。秀は満足そうな表情を浮かべる。
     
     土曜日ということもあり、テレビでも紹介される有名観光スポットは多くの人で賑わっていた。人々は皆モラフィネの花畑の写真を撮ったり、それを背景に自撮りをしたり、各々に写真撮影を楽しんでいた。
     
    「せっかくだし、僕たちも写真撮ろうか」
     モラフィネを背景に写真撮影を行う人々を横目に、百々人はそう提案した。秀が頷くと、彼は早速コンパクトな三脚の準備を始めた。
     
    「いいですね!そのまま、もう一枚撮りましょう!」
     耳に入ってきた男性の声に視線を向ける。少し離れたところでは、真っ白なタキシードと、純白のドレスに身を包んだ男女と、モラフィネの海をバックに彼らにカメラを構える男性の姿が見えた。
     ウエディングフォトの撮影だ。2人は顔を寄せ合い微笑み合う。カメラを構える男性はいいですね!と声を上げながらシャッターを数回切る。
     今度は、そのまま口付けを交わす。再びシャッターを切る音が数回響く。淡い水色のモラフィネ畑の中に、2人の真っ白な衣装と、眩しい笑顔はとても映えていた。
     
    「しゅーくん」
     名前を呼ばれて、秀は我に返る。つい、見とれてしまっていた。
     
    「ねぇ、僕たちもあんな感じにする?」
     百々人はウエディングフォトを撮影している夫婦の方に目を向ける。
    「いや、流石に…、人目もあるし…」
    「じゃあ、2人きりならいいの?」
    「そういう意味じゃ…」
     秀はじんわりと顔が熱くなるのを感じた。そんな姿を見て百々人は笑う。
     カシャ、とシャッター音が聞こえた。変なところを撮られた、と秀はまた1人で恥ずかしくなった。
     
     もう1回撮ろうか、と百々人は再びカメラのタイマーをセットし直す。
     戻ってきた百々人は、今度は長めにセットしたから、と付け足した。
    「ほら、しゅーくん、笑顔」
     そう言うって満面の笑みを見せる。
    「誰のせいだと思って…」
     これが仕事の撮影ならすぐに気持ちを切り替えられる。それに、笑顔なんて求められればすぐに作れるのに。百々人の前だとどうにもペースを乱されてしまう。秀はまた笑顔が崩れた。
     
     秀があれこれと考えていると、
     突然、真っ白な布を頭の上から被せられ、視界を奪われた。
    「せんぱいっ、」
     布の中に入ってきた百々人の淡いピンク色と目があう。
    「誰も僕たちなんて見てないよ」
     そう、小声で囁かれ、そっと唇を重ねられた。
     
     一瞬の出来事だった。しかし、とても長い時間の様に感じれれた。
     人々の喧騒も、眩しいほどに降り注ぐ太陽の日差しさえも、全てが遮断された、2人だけの世界のようだった。一枚の布を隔てた先では、多くの家族連れ、カップル、友人同士、多くの人々の話し声が嫌でも耳に入ってきていたのに。
     布が頭から滑り落ちるように剥がされる。それが落ちるのと同時に唇も離され、代わりに人々の喧騒がまた戻ってきた。
     
     カシャ、
     ちょうどタイミングが良かったのか、シャッターが切れた音が聞こえた。秀は突然の出来事に驚きながらも、自然と笑顔がこぼれていた。
     
    「なんか、暑くなてきちゃった」
    「奇遇ですね、俺も」
     太陽の日差しがやけに暑く感じた。日差しだけじゃない、体の内側からも火照ってくる。頬を撫でていく春風はまだ少しだけ肌寒さを感じさせるのに。
     
     後ほど百々人から送られてきた写真には、モラフィネの海の背景に、向き合いながら微笑み合う2人の姿が写っていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works