【ヒス晶♀】不明瞭な好意 まだ、恋とは呼べない不明瞭な好意だった。
机の上のランプの灯りと、仄青い月明かり。揺らめきが溶けた薄闇は、不意の触れ合いに情欲をひそませた。重なった指先をすべらかになぞり、手のひらの下へ入り込んだ彼の指はひんやりとつめたかったのに、私の奥底に微熱を灯した。
目を瞑ったのは私。だから、ぜんぶ私のせいにしてよかったのに。
――晶様。
うわごとのように、どこか呆然とした口調が私を呼んだ。そうして刹那の沈黙ののち、くちびるに柔い熱が触れた。
一秒にも満たない、関係性の逸脱。
覆された予定調和に、彼はひどく狼狽した。
熱に染まった頬を手の甲で覆って、すみませんと口走って、私の視線を受け止めないまま部屋を後にした。
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