若者に押されるかたちでの恋人関係だと思っていたが、確実に絆されている自覚はあった。兄を失い、父親の帰りを冷たい路上で一人待っていたあの少年が、ジェハンの隣で幸せそうにしている。小さなことにも顔を綻ばせる様子を見せられ続けて、胸が暖かくならないわけがない。
そもそも同居人としての相性は元よりよかった、と思う。ヘヨンの気遣いを気遣いと感じさせない心地よさに胡座をかいているわけではないと信じれば。
身の回りを小綺麗に整え、丁寧な暮らしぶりのヘヨンではあるが、他人に強制することはない。雨の日のチヂミだとか、いいことがあれば牛肉を焼き、季節の魚や野菜を選ぶ。伝統的な韓国料理ばかりかというとそんなこともなく、オムライスやハンバーグ、パンの朝食などもそれなりに作っていた。ジェハンの方でも、以前は素通りしていた小洒落た店に立ち寄り、パンやコーヒーを買ってみたりするようになった。今では新しい雑貨屋や流行りのカフェの噂にすっかり耳敏くなってしまった。
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