⑥唄を娯しむ忍術学園を卒業して、7度目の春。
忍務のついでに頼まれた学園長宛ての書状を片手に門前へと降りると、それを察知していたように門脇の子扉が金属を擦り合わせる音と共に開いた。
「やあ!誰かと思えば、七松小平太君。久し振りだねぇ」
「小松田さん、お久しぶりです」
あれから7年経つが、たびたび顔を合わせている小松田さんは一向に老ける気配がない。そんな彼から入門票を受け取りサインをする。
「小松田さん、鉢屋は――」
「……ごめんね」
ダメもとで尋ねてみるが、返答は毎回変わらない。
入門票をぱらりと捲ってみても、“鉢屋三郎”の名前はどこにもない。
「学園長先生は庵ですか?」
ふっ、と強く息を吐くとにこりと笑顔を貼り付ける。
眉を八の字にした小松田さんが首を縦に振るのを見て、お礼をひとつ。
870