Stille Nacht ~静かなる聖夜~ 雪混じりの冷たい寒風が、クレーバーを嘲笑うかのように吹き抜ける。
耳が千切れそうな冷たさに、帽子を忘れたことを激しく後悔する。だがクリスマスイブには店も開いていない。
クレーバーは鼻をすすった。ふと、人前で鼻をすするのはやめなさいと博士に言われたことを思い出す。
だが、もうここに博士はいない。
もう一度、派手に鼻をすすると、冷たい空気が脳天を突いた。馬鹿だった。
だが冷たい空気と一緒に、甘く香ばしい香りが鼻をくすぐった。クンクンと探る。たぶん、これは広場の方だろう。あてもなくフラフラしていた足は、突如目的をもってサクサクと雪を踏みしめた。
街の広場には、一応クリスマスツリーが立ち、クリスマスのデコレーションがされている。見回すと匂いの元はすぐ見つかった。広場の片隅の小さな移動屋台。暖かい明かりの元、大きな銅鍋の中で、ローストアーモンドがかき混ぜられている。クレーバーは引き寄せられるようにそちらへ歩いていった。店員が、コーン型にした包み紙に、砂糖をたっぷり絡めたアーモンドを入れて客に渡している。前のカップルが嬉しそうに受け取って離れていくと、店員がクレーバーへ視線を移した。
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