【読切ドラロナ】ドライヤーによる駆け引きは引き分け ある夜。ドラルク城にて。
帰城後すぐにお風呂で汗と泥をすっかり綺麗にした退治人くんが、どっかりとソファに腰を落とした。
いつもと変わらぬ黒いインナーとボトムスを身につけたスタイルで部屋に戻ってきた彼を見た私は、ミネラルウォーターのペットボトルを渡しつつ隣に腰掛け、常々思っていた疑問を投げかける。
「ねぇ退治人くん。なんでいつもドライヤーで乾かさないの?」
お湯も滴る美しい男は、手のなかにおさめたよく冷えた水のボトルを無言で開栓したあと、私の問いかけに対して、まるで独り言のように言葉を零した。
「……ドライヤー?」
「何その反応。まさか、君、ドライヤーを知らない……?」
「馬鹿にすんな。知ってるっつの」
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