ジュリー稲 @oryza_spontaneakmtぎゆさね小説only全年齢、日常系です ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji POIPOI 10
ジュリー稲DONE【夕凪時に薫る風書き下ろし】キメ学ぎゆさね。付き合ってる二人。週末お泊りデートの約束をした二人。初めてのことに喜びを押さえきれず、不死川を迎える準備に勤しむ冨岡だったが……。俺の名前は冨岡義勇3 俺の名前は冨岡義勇。キメツ学園高等部で体育教師をしている。 恋人は同僚の数学教師・不死川実弥だ。俺の地道な努力によって先日ようやく気持ちを受け入れてもらえて、晴れて恋人同士となれた。 そんな訳で俺は近頃気分が常に高揚しているのだが、さらにもう一段高揚させてくれる出来事があった。 何と不死川が、土曜の夜に泊まりに来てくれるというのだ。 不死川は七人きょうだいの長男で、弟妹達はまだ学校に通っている年齢だ。母親は働いているし、父親は物の役には立たないし(これは俺の見解ではなく不死川の言い分だ)、休日でもなかなかに忙しい。 勿論それは付き合う前からわかっていたことだし、俺自身不死川には家族優先でいて欲しいと思っている。何故なら、家族のことを話すときの不死川の幸せそうな顔が大好きだからだ。不死川から家族を奪うなど、いくら恋人とはいえしてはならないことである。 5148 ジュリー稲DONE【刀嵐4書き下ろし】DKぎゆさね。実弥の誕生日、きょうだいたちが準備したサプライズに現れたのは、交流0のクラスメイト・冨岡だった。誕生日の闖入者 その日、不死川実弥は、いつもより軽い足取りで家へと向かう道のりを急いでいた。 実を言うと、今日は実弥の十六歳の誕生日だった。もっとも、いい加減誕生日に浮かれる年頃でもない。実弥の気持ちを逸らせているのは誕生日そのものではなく、それを祝うために弟妹たちが計画しているサプライズの方だった。 弟妹たちは勿論、実弥がサプライズに気づいていることは知らない。一番年の近い弟―――小学五年生の玄弥―――を筆頭に、まだ小さな弟妹たちは一生懸命秘密にしているつもりなのだが、実弥にはバレバレだった。それでもその気持ちが嬉しくて、今日まで知らんぷりを決め込んできたのである。 「ただいまァ」 家の玄関の引き戸を勢いよく開け、実弥は大きな声で家の奥に呼びかけた。帰ってきたことを殊更アピールしているのは、勿論サプライズ成功を助けるためである。何を計画しているにしろ、こっそり帰ってきては台無しになるのは大体目に見えている。 5120 ジュリー稲DONE【春水咲書き下ろし】キメ学ぎゆさね。付き合ってる二人。久々のデートに浮かれる冨岡だったが、当日朝、普段することのないやらかしをしてしまう……!俺の名前は冨岡義勇2 俺の名前は冨岡義勇。キメツ学園で体育教師をしている。 今日は俺の最愛の恋人・不死川とデートの日だ。 俺達は所謂職場恋愛中である。そして職業は教師という聖職。つまり、周囲に関係を悟られてはならない仲である。 恋愛は自由だし、俺は不死川が恋人であることを恥ずかしいと思ったことは微塵もない。だが同じ学校に勤める教師同士の恋愛を、世間が必ずしも好意的に見てくれるわけではないことも理解している。かくして俺たちのデートは必然的に、普段の生活圏とは離れた場所になることがほとんどだ。 その日はとにかく朝からついていなかった。 まず寝起き。朝、目覚まし時計が鳴らなかった。まぁそんなものはなくても、体内時計の力で日頃は同じ時間に目は覚めるのだが、その日に限って体内時計が狂った。明日は不死川とデートだからとわくわくしすぎて、なかなか寝つけなかったせいかもしれない。 4364 ジュリー稲DONE【再録】キメ学ぎゆさね。付き合ってる二人。季節外れの冬のお話。朝の校門の番人・風紀担当冨岡義勇には、恋人には絶対に知られたくない秘密があった。俺の名前は冨岡義勇1 俺の名前は冨岡義勇。キメツ学園高等部で体育教師をしている。 恋人は同僚の数学教師・不死川実弥だ。俺の地道な努力によって先日ようやく気持ちを受け入れてもらえて、晴れて恋人同士となれた。 幸せ絶頂のはずの俺だが、実は誰にも言えない悩みを抱えている。不死川に知られたらどうしようかと日々悶々としているのだが、解決策は未だ見出せない。 その悩みというのは、冬のジャージ問題だ。 体育教師という職業柄、俺は一年中同じ青色のジャージを着用している。しかしこのジャージというやつ、案外と快適度の低い衣服なのだ。 夏は夏で通気性が悪く蒸す。しかし冬は冬で、妙に風を通すので冷える。これまでは冬はズボンの下にいわゆるあったかインナーを着込んで耐えていたのだが、これは男としてどうだろう。 2300 ジュリー稲DONE【再録】余生ぎゆさね。ぎゆのほんのり片思い。迫りくる最期の時を前に冨岡が想うのは、遺していく不死川のことだった……。旅立つ前に 眠気が強くなってきたのは体が衰えてきた証だと神崎に言われて、やはりそうかと冨岡は納得した。 近頃はいろんなことが億劫になってきた。食事の量も減ったし、家でも将棋盤を前にぼんやりしていることが増えた。 いよいよその時が近づいてきた。痣者として覚悟は出来ていたから今更狼狽えることはなかったが、一つ気がかりなのは不死川のことだった。 不死川には体の変化を話していない。今でも週に何度か好物のおはぎを片手に、不死川の家を訪ねる生活を続けている。言う必要はないと思っている。いずれわかることだ。 不死川は今まで多くのものを喪ってきた。最後に残ったのが自分の命であることに、複雑な思いを感じているだろう。 だからと言って限られた命を無駄遣いするような男ではないが、一人で耐えるには余生と呼んでもいい日々は時々辛かった。 2244 ジュリー稲DONE【刀嵐3書き下ろし】余生ぎゆさね。ふらりと立ち寄った冨岡の家で、不死川が目にしたものとは…?いろは 座敷に足を踏み入れると、足袋に包まれた足がかさりと何かに触れた。 視線を落とすと、爪先が紙を踏んでいる。見渡せば座敷のあちこちに紙が散らばっていた。屋敷の主はその中心に置かれた卓に座り、背筋を伸ばし眉間に皺を寄せて慎重な手つきで細筆を握っている。 「オイ冨岡、何だこりゃ」 「不死川か」 紙に向き合ったまま冨岡は不死川の名前を呼ぶと、たっぷり墨の含まれた震える筆先をまっさらな紙に押し当てた。そして左腕をぎこちなく動かし、かろうじていろはと読める文字を書きつける。 書き終えると冨岡はふぅと息を吐き、硯に筆を乗せて不死川に顔を向けた。眉間の皺は、もうどこかへ消えていた。 「来てくれたのか」 「散歩のついでだァ」 3046 ジュリー稲DONE【刀嵐3書き下ろし】DKぎゆさね。昼休み、毎日ぼっちごはんの冨岡には、ひとつだけ楽しみがあるのだった。ぶどうぱんとささやかな楽しみ 屋上に通じる階段は、昼食を取るのに丁度いい。 閉鎖されている屋上に近づく生徒などいないし、教室から少し離れているそこは静かで落ち着く。 昼休みと言えばクラスメイトは、授業のことから部活のことから昨日のテレビのことまで口々に話しながら昼食を取る楽しい時間だが、冨岡は入学以来ずっとその輪には入れずにいる。 ぼっちだからではない。 しゃべりながら食べれないからだ。 居心地のいい場所を探して校内を彷徨ううちに見つけたのがこの階段で、以来冨岡は昼食の定番・ぶどうぱんとパックの牛乳を手にここに来るのが日課になっていた。 その日もいつものように遠くから届く賑わいに耳を傾けながらもそもそとパンを頬張っていると、一組の足音が向こうから近づいてくるのが聞こえてきた。冨岡は一旦食べるのを止め、素早く足音の方に視線を向ける。 1974 ジュリー稲DONE【再録】ぎゆさねワンライより『公園/ランチ』。同棲ぎゆさね。ぎゆさねワンライより 『公園/ランチ』 同棲するときに決めたルールのひとつに、喧嘩しても絶対に一緒のベッドで寝るというのがある。 その日先に怒りを見せたのは珍しく冨岡の方で、不毛な言い争い――――と言ってもまくし立てていたのは主に不死川の方だったが――――の途中で大きなため息をつくと無言のまま寝室へと去ってしまった。 去り際に浮かべていた気難しげな表情は冨岡が滅多に見せるものではなく、下手に顔立ちが整っている分一層冷たく感じて、見送る不死川の胸は鋭く痛んだ。 (あんな顔見たかったんじゃねェ) きっかけが何だったのかも忘れた、些細な始まり。大概は喧嘩の最中でも変わらずストレートな好意をぶつけてくる少々ズレた冨岡の様子に毒気を抜かれて不死川の怒りもとけてしまうのだが、今回は違った。明らかに、言い過ぎたのは不死川の方だった。 3425 ジュリー稲DONE【再録】ぎゆさねワンライより、お題『声/わざと』。キメ学軸、玄弥視点です。外泊した翌日、実弥に起きたとある変化に気づく玄弥。その原因は……?ぎゆさねワンライより 『声/わざと』 週末じゃないのに飲み会だって言って、兄ちゃんは昨夜帰ってこなかった。 泊まった先はいつも通りの、冨岡先生の家。 学校で見てる限り兄ちゃんと冨岡先生はすっごく仲がいいってわけでもないのに(むしろ兄ちゃんは冨岡先生をしょっちゅう怒鳴りつけてるから、仲悪いって思ってる生徒も多い)、飲み会の日はほとんど必ずと言っていいほど冨岡先生の家に泊まる。 気楽だから、っていうのがその理由らしいけど、本当の訳は他にもあるんじゃないかって俺は思ってる。 それは平日の夜にかかってくる冨岡先生からの電話にこっそり出る兄ちゃんの様子がやけに嬉しそうだったり、休みの日に示し合わせて出かけたりしてることを俺が知ってるからで、もちろん他の誰にも話したことはない。母ちゃんにもない。兄ちゃんは必要な時期が来たらその理由をちゃんと話してくれる人だから、俺はただその日をじっと待つだけだ。 2092 ジュリー稲DONE【再録】余生ぎゆさね。宇随の勧めで湯治場にやって来た冨岡と不死川。明け渡る この湯治場へ来たのは、冬の寒さに痛む古傷を癒すのにいいからと、宇随に勧められたからだった。 湯治など贅沢な気もしたが、折角の勧めを断るのは悪いと言う不死川に引っ張られ、やって来て十日あまり。失った右腕以外の傷にも効果はあったのだろう、ここに来て随分体は楽になった。そしてそれは、不死川も同じのようだった。 穴場の秘湯だという温泉は人も少なく、毎日は静かに過ぎていった。大きな宿もない湯治場は自炊が基本で、食事は毎食不死川が作ってくれる。軒を並べる部屋に逗留する他の湯治客からお裾分けを貰うことも多く、昔住んでいた下町の長屋での暮らしみたいだと不死川は楽しそうだった。 冨岡は湯に浸かる以外は詰将棋をしたり、本を読んだり、昼寝をしてみたりと、すっかり怠惰な生活が身についてしまった。これまで張り詰めた生き方をしてきたのだからそれもいいと、不死川は笑う。 2951 1