Nightmare 目の前に横たわる骸に、外傷があったのかどうかは憶えていない。
暗い路地裏、雑に転がるその身体。
呼びかけはしなかった、呼んだところでもう聞こえないと、何故だか感覚で理解していたから。
傍に屈んで、触れた頬に弾力はなく、冷たい。
そんなにも長くこんな場所に独りにして済まないと、声に出さず謝った。
薄く開いたままの瞼、乾いて、知っているよりも色の薄くなっている虹彩。
それでも真っ直ぐに覗き込めば己が映るから、まるでまだ、俺を、見てくれているように思えてしまうから、そのままに、して、おきたくて。
そこでようやく名前を口にした。
だが、その後は、続かなかった。
ありがとう?
さようなら?
ごめん?
浮かぶどれもが相応しく、ないような、気がして。
2784