アイツなんかに近づくな「あれはやめておけ、陸遜。」
回廊で呼び止めてそう言えば、涼しげで大きな目がぱちりと瞬いた。
「あれ、とは何ですか?呂蒙殿」
「この間、魯粛殿が連れてきた諸葛亮という者のことだ。今日の軍議の後、話しかけに行ったそうだな。なんでも陣形の教えを請うていたとか。」
『諸葛亮先生、宜しければ是非、お話を伺いたいのですが』
『おや、あなたは…』
『私は陸伯言と申します。』
『ああ、あの…』
「ええ。…それがなにか問題でしょうか?」
「今、あの者がどういう立ち位置にあるかを考えないといかん。孫権様のご決断で決着がついたとはいえ、先日の軍議で穏健派の文官武官をしたたかにやり込めたあやつをよく思わない古参の臣も多い。いらんいざこざに巻き込まれるのは避けるべきだ。
1922