女権話 二人で、回廊を歩いていた。
いつもは墨と竹簡と、革と血のにおいしかしない私を、今日包んでいるのはむせ返るようなわざとらしい甘い香の匂い。
頭には、しゃらしゃらと光る石のゆれる髪飾り。
女としては骨ばった頬に白粉と、乾いた唇にぬるりとした紅。
きらびやかな衣装は、裾が床を掃けるほど長くひらひらと揺れている。
それらはぜんぶ、ただひとりのためのもの。
私の愛したのではない、別の、顔も知らぬ男のための。
「……お手を…」
履き慣れぬかかとの細い沓が、上手いさばき方をもう忘れてしまった長い裾を踏んで転びそうになる前に、周泰は私の手を取って歩いてくれた。
向かう先はこの城の入り口。皆はすでにそこで私と、私を迎えに来る者を待って集まっているから、城内に人けはなくてしんと静まり返っていた。
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