AM5:48 瞼を開けて真っ先に飛び込んだのは、ベッドの縁に掛けて煙草を燻らす半裸の男の姿だった。カーテンの隙間から漏れ差す光や、背中に残る生々しい傷跡――不穏な傷痕とつけたばかりの爪痕の両方――まで含めて計算されたかのようなその姿は、何度見ても「美しい」の一言に尽きた。もちろん本人にその言葉を直接吐くわけではないものの、自然と見惚れてため息が零れてしまうのだ。
ふう、とゆっくり煙が吐き出されるのを横になったまましばらく見つめる。左馬刻がようやくこちらに気づいて、おう、と目を細めた。節ばった指先が、灰皿に煙草を押し付ける。それから、ギシ、とスプリングが軋んだ。
「おはよ」
言葉と同時に、苦くて優しくて甘いキスが唇にふわりと落とされる。砂糖菓子のような甘い時間にはまだ慣れないけれど、まあ、多少は慣れたのかもしれない。紅が近づいてきた瞬間に、そうくるだろうなと思う程度には。
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