好敵手の条件「冬居お前さあ、ちょっとくらい悔しかったりしねーの」
放課後の部活動を終え、職員室へ体育館の鍵を返しに行く道すがらのことだった。とうに日も落ちてひとけの少ない廊下を歩きながら、幼馴染みであり部活の先輩、そして主将でもある彼——山田駿は僕に問い掛けた。藪から棒に何を、と聞き返しかけて自ずと思い当たる。本日の練習前、いよいよ一ヶ月後に迫った冬の大会に臨むスタメンの発表があったのだ。僕に割り当てられた背番号は八、交代要員筆頭といったところ。一年生の中では最も期待されている立ち位置と言っていいだろう。
「悔しいも何も。先輩方の次につけたんだから、順当じゃないですか」
「……自信があるんだかないんだか」
「僕は満足ですよ」
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