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    さめしば

    @saba6shime

    倉庫兼閲覧用。だいたい冬駿

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    さめしば

    TRAINING冬駿の掌編
    お題台詞「もう、ついて来いって言わないんですか?」で書きました。⚠️未来捏造要素あり
    今度は命令じゃない「……ねえ駿君。もう、ついて来いって言わないんですか?」
     すぐ隣から静かに降ってきた声は、言いようもなく重い響きと化し、俺の鼓膜を震わせた。思わずぱっと見上げてみれば、声の主はとっくに俺のことを見つめている。
    「……冬居、そりゃどういう」
    「はぐらかさないで。お願い」
     切羽詰まった台詞に、思い詰めたような表情。縋るみたいな色をして俺を捉える、この瞳。身長なんかとうの昔に抜かしていったくせに、子どもの頃と変わることなく冬居は見上げるように俺を見る。自分より小さい相手に上目遣いだなんて、まったく器用な真似をする奴だ。
     テーブル上にちらりと目をやる。部屋に入ってすぐ気付いてはいたのだ、これ見よがしに広げた進路希望調査票の存在には。そういえば飲み物を拝借しに一階へ寄ったとき、「進路の相談乗ってやってね、駿君。迷惑じゃなければだけど」とおばさんに話しかけられたことも思い出した。そっか、もうそんな時期なんだな。今一度、隣の男へと視線を戻してみる。数秒前と変わらず、その両目はじっと俺に向けられていた。
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    さめしば

    DONE冬駿の未来捏造SS
    ⚠️20代後半くらい。インドで同棲してる設定
    プロカバd選手のシュンヤマダがイ○スタグラムに自撮りを投稿してみたら、年下彼氏が不機嫌になった話
    #aftertodaysworkout ——コトリ。テーブルにマグカップの着地する音が、しんとした部屋に大きく響いた。湯気を立てる中身をひとくち啜ってから、向かいに座る俺の恋人——霞冬居はついに、その重い口を開いた。
    「……で? 昼間のあれは、どういうつもりだったんです」
     ——ま、やっぱこうなるよな。予想した通りの展開を前に、俺はひとまずすっとぼけて見せることにした。いわゆる常套の手段というやつだ。
    「……んー? 『あれ』ってだけじゃ、わっかんねーなあ。何の話だ?」
     軽い調子ではぐらかしてみる。するとダイニングテーブルの向こう側で、同居人の纏う空気が急速に下がってゆくのをたしかに肌で感じた。ああこりゃまずいな、ちょっとふざけすぎちまったか。俺は内心冷や汗をかきつつマグカップに口をつけ、唇を湿らせてここからの応酬に備えた。夕食後のティータイムに冬居が今夜選んだのは、温かい緑茶だ。こっちの日本食スーパーで入手した茶葉は、値段も味もそれぞれ別の意味で「それなり」な代物である。とは言え、慣れ親しんだ香りは俺の心をふわりと落ち着かせてくれた。そうだ、別にびくつく必要なんかねえだろ、堂々としてりゃいい。
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    さめしば

    DONE付き合ってない冬駿のSSです。4月のはじまりの日の話。⚠️未来捏造注意
    トリックスターを欺く日「僕、高校まででカバディ辞めようと思います」
    「……へ?」
     ぱちくりと音がしそうなほど大きな瞬きをひとつ。次いで、ふたつの目がみるみるうちに見開かれていく様を僕は興味深く見つめた。台詞の意味をじわじわと理解し始めたらしい彼——ひとつ年上の幼馴染みは、二の句も告げない衝撃をその顔に露わにした。

     何の変哲もない、春休みのとある一日。朗らかな陽気漂う正午前の出来事だった。
     この春から大学生になる幼馴染みは僕の自室に入り浸り、ゲームをしたり漫画を読んだり代わり映えのしないくつろぎっぷりを謳歌している。特に予定もない日の、なんとなく二人で過ごすいつもの自由時間。お昼ご飯どうしましょうか、そういや腹減ってきたな、うち何か食べるものあったかなあ、なけりゃラーメンでも食いに行こーぜ。他愛もない会話が途切れて訪れるその「間」を狙い、ねえ駿君、とまずは名前を呼んで彼の意識をこちらに引きつける。普段と同じ声色を心掛けながら、あらかじめ用意していた台詞を吐いた。自分でも少し驚くくらい平板な響きが空間に放たれ、広がったのは動揺という名の大きな波紋。
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    さめしば

    DONE冬駿のSS 冬→駿片思いネタ。とある冬のおはなし。⚠︎捏造要素あり
    きみのとなりにけぶる朝靄「冬居くんおはよ! 今日も冷えるねー」
    「おはようございます、おばさん。お邪魔します」
    「さあ上がって上がって」
     ほんといつもごめんねえ、と幼馴染みの母親が目尻を下げて申し訳なさそうに微笑む。僕は招き入れられるまま、勝手知ったる他人のお宅へ上がり込んだ。スニーカーを定位置に揃え後ろを振り返ると、彼女はすでに台所の方へ足を向けていた。「あの子まだ寝てるから叩き起こしてやって! すぐご飯持って上がるね」と忙しく立ち回りながら響かせる声に僕ははあいと返事を返し、二階へ続く階段に足をかける。
     部活の朝練がある日はこうして、隣に住む幼馴染み——同じ部に所属する部長と部員の関係でもある——と連れ立って登校することになっているのだ。僕が入部したこの春始まった、約束にも満たない暗黙の了解のようなもの。たいてい僕の方が先に支度を終えるので、我が家から数歩の距離を迎えに上がる流れはすっかり習慣と化していた。彼が自力で起床できた日は居間で待たせてもらうけれど、時間ぎりぎりまで二度寝を決め込む朝はそう少なくない頻度でやってくる。その場合、彼を布団から叩き出す役目を自然と僕が担いがちになるのだ。そして彼の母親が朝食を二階へ運んでくるまでが、ここ最近のお決まりの流れ。すぐそこにご飯があれば起きる気になるでしょ、とは彼女の談。実際その効果は発揮されているだろうけど、居間よりも駿君の自室の方が僕にとって過ごしやすいはずだ、と気を遣ってくれている節もある。
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