ウテンの話 ファラザードの魔王、ユシュカに仕える侍女、ウテンは鏡を眺めて嘆息した。
鏡に映るのは紺の髪に黄緑の瞳のとてもとても地味な魔族女性だ。
だが、ウテンはそんな自分の容姿を悲観して考えてはいない。むしろ地味でよかったと思っているくらいだ。
その最たる原因は、ウテンが主であるはずのユシュカよりも敬愛しているとある人物である。
「ようこそ! 大魔王さま」
語尾にハートマークをつけたいくらいに弾んだ声をかければ、大魔王と呼ばれた少女ははにかんで笑った。とても可愛い。
元はユシュカのしもべと言われていた少女は、大出世を果たして現在は魔界の最高位、大魔王となっている。しかも、世界を滅ぼす神を倒したという大魔王の中でも飛び抜けた英傑だ。
3834