夕方か夜に少しでも良いから会えないか。七月十九日の昼ごろに虎之介のスマートフォンの画面に到着した短いメッセージは「渡したいものがある」、と簡潔に続いた。
今からバイトだからその帰りなら、とぶっきらぼうに返信する。何時になるかわからないけど、と追記して、虎之介は自身が働く中華料理屋のまったく読めない繁盛ぶりを思う。夕飯どきに目の回るような繁忙を極めたかと思えばピークを過ぎると閑古鳥、ということもあれば、閉店時間までほどほどに混み合いが続くということもある。
「じゃあ終わったら連絡して」
「駅の近くにおるね」
駅、というのは今虎之介がギノとイレーと一緒に住んでいるアパートの最寄駅のことだ。かつて渡辺が幽霊と共に住んでいた部屋の最寄り駅でもある。
1564