「重なる願い」 あがった勝鬨からしばらく後の事だった。
自陣に戻り勝利を喜ぶ兵たちを見回したイングリットはようやく探していた相手の姿を見つけた。
束の間の歓喜であっても士気に繋がるのなら良い事だと、そう思いながらも彼女が気になっているのは探し人の事だったのだ。
「ジルヴァン、ちょっときて」
足早に近づいた彼女が共にくるように赤髪の幼馴染の腕を引くと、どうした?と驚きの声を上げながらも導かれるままついてくる。
その場にいたもう一人の幼馴染がまたかとばかりに呆れを含んだ溜息を吐いたのがわかったが、それをも無視してイングリットは腕を引き続けた。
彼女は勝利の後の喧騒から少し離れたところまでやってくると、ちょうど良い高さの場所を見つけシルヴァンに座るように促した。
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