夕食の間も松井は歌仙の斜めうしろに待機し、飲み物の補充や、口についたものを拭ったりしている。
少し離れた席で豊前はそれを見ていた。見るつもりはなかったのだが、どうしても目が行ってしまう。
「なあ、なんなんだアレ」
豊前は嫉妬心剥き出しだった。豊前の向かいに座って食事をしていた桑名は、篭手切たちの申し出を断って正解だったと思った。
「めいどさん、らしいよ」
「それくらい俺だってわかってんよ。なんで松井が歌仙の世話してんだって聞いてんだよ」
「さあ、なんなんだろうねぇ。松井家が細川家のお世話するのは自然なことなんじゃないかな?」
ここで豊前がメイドの松井に興味を持ってくれたら、篭手切の気も晴れるのだろう。
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