「月島、お前少し鯉登に冷たいんじゃないか」
「はあ……」
数日前までは和田が掛けていた机へ肘を付いた鶴見が目の前に立つ月島を覗き込むようにして見上げた。まさかそんな話をするために急に呼び出されたとは思ってもいなかった月島は呆れを隠しきれない。
早くも帰りたいと顔に出始めた月島を窺うように鶴見はウン?とめくばせをする。
「そんな事はありませんが……」
「だが本人はお前の信頼を得られていないと考えているようだ」
言われて月島は黙り込む。鯉登少将からの大切な預かり物であり、鶴見にとって利用価値の高い駒である。慎重に手厚く上手く扱わなければならないことは承知の上だったが、月島は心のどこかで一線を引いているのが自分でもわかっていた。
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