初心 鬼島と天生目が、まだ小学生だった時の話。
その頃から一緒にいる割にお互い好きに過ごし、たまに取り留めなく会話をするのが常だった。そんな風にいつも通り過ごしていたある日。
「空良はだれか好きな子いるの?」
読んでいた雑誌の影響か、天生目が澄ましつつも面白がっている顔で鬼島を見ていた。
「おまえ」
考えるより先に自然と口から出た言葉は、妙にすっと胸に馴染んで〝あぁ、オレはこいつが好きなのか〟と、この時初めて鬼島は自覚する。
「そういう意味じゃないよ」
けれど天生目はきょとりとした後、直ぐにカラカラと笑って言うと雑誌に目を戻してしまう。幼い鬼島は天生目の言う『意味』がよく分からず困惑したが〝フラれた〟と、言う事は直感的に理解出来てしまった。
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