「とし兄だ!」
「よぉ、なんだ遊んでたのか?」
大家族の末っ子として生まれた俺は兄弟が学校に行き始めた頃は寂しくてよく泣いて母親を困らせていたらしい。寂しくてしょっちゅう近所の空き地に一人で木の枝を鹿の角に例えて遊んでいたのは覚えている。
そんな俺によく話しかけてくれていたのはとし兄と呼んでいた近所の高校生だった。
とし兄は近所の高校に通っていて帰宅部という名のクラブ活動に勤しむがてら俺が遊ぶ空き地によっては暫く遊んでくれていたのを覚えている。サッカーや鬼ごっこ、兄弟もまだ帰ってこず、近所に同じ歳の子がいない俺にとってとてもいい遊び相手だった。まぁたまにとし兄が蹴ったボールが近所の窓ガラスを割ったりだとか不幸なことは多かったが。
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