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    nekodamashii12

    @nekodamashii12
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    nekodamashii12

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    ※書きかけ。ハロウィンな魔法で若返った門倉さんとキラウシくんな門キラ。続きが書けないの…ので置いておきます。気がついたら…

    あの素晴らしい若さをもう一度。「お前さんがよ、ほんとに俺で満足してんの?」

    事が終え、だらりと体をベッドから垂らした門倉は目も合わさずそう問うてきた。既にもう寝ていたと思っていたのでその横で本を読んでいたキラウシは眼鏡を外して本をベッドサイドに置くと、呆れた様子でそっぽ向く相手の鼻をつまんだ。

    「いてっ」
    「カドクラ、その質問は何度目なんだ。」
    「…ってよ…」

    膨れていじけるような年齢ではないことはわかっているが、これがどうしてやはり自分の年齢と若い恋人と釣り合っているのかというのは不安にはなる。
    先程の行為だって自分より若くそしてアウトドア系の相手が本当に満足してくれているのかさえわからない。行為の間も腰痛持ちの自分に対してかなり配慮してくれているはずだし、何より門倉は果てるとすぐに眠気が来るタイプだ。行為が終わり身を整えるとバタンキュー。そんな自分とは違い、恋人のキラウシは行為が終えると今のように本を読み始めたり、明日の支度や料理の下拵えなど始め出すのだから本当に満足しているのか心配にもなる。
    これまで幾度かその質問をしてきたが、馬鹿なことをと何度も窘められた。

    「俺は門倉がいいんだ。」
    「…ありがとさん。」

    言葉に乗せられてほっとする自分が馬鹿らしくなる。本当はどう思っているのか。
    もしも自分がもう少し若ければ…。門倉は叶わぬ願いを呟くのだった。


    あの素晴らしい若さをもう一度。


    そんな秋のある日の事だった。

    今日は珍しく日の出ている会社を出ることが出来た門倉は、自宅で待つ恋人であるキラウシに「お疲れ様‼️今日☀️は早めに🐸そう🚗💨キラウシ🦌くんは今日はナニしてたのカナ❓‪( ˙꒳​˙ᐢ )歳のせいか疲れちゃって…お腹空いた😤🍱💨晩ご飯🍙はナニカナ⁉️」と送って返事も「グラタン」と短い返事が返ってきたばかりだ。浮き足立つような足並みで早々に帰路に着いたのだ。電車も珍しく快速に乗れたし、改札で止められることもなかった。
    雨も降らないし、ガムをふむこともなかったし、階段を踏み外すこともなかった。キラウシが作ってくれた弁当の中に入っていた冷凍食品の占いも大吉だった。
    なんていい日だ。今日は多分いい日なのだと勘違いしていたのだ。と門倉は雨に唄えばでも歌いたい気分になっていた。



    そんな折門倉は誰かに呼び止められたのだ。

    「おじさん。」

    あと数百メートル先で家だと言うのに、不意に呼び止められ門倉は歩みを停めた。声がした方に振り向くと、ジャックオーランタンの被り物をした少年が立っていたのだ。

    「な、なんだよ。生憎金は持ってねぇし、エアマックスも履いてないぞ。」
    「おじさん、おじさん、」

    すると少年は門倉になにかをこうように両手を差し出してきた。一瞬何をされるのかと身構えたが、特に何もしてこないまま数秒が過ぎた。

    「え、何?いや金はねぇって…」
    「トリックオアトリート!」
    「え?」

    あぁそういえば今日は会社でなんか作業員さん(65歳独身男)がそんなことを言いながらお菓子配ってた気がするな。門倉もちゃっかりカンロ飴貰ったのを思い出した。
    そうか、今日はハロウィンか。渋谷でコスプレをして車を倒して〜若者が〜的なニュースしか印象がない門倉だが、こうして目の前にコスプレをした少年にお菓子をねだられているのだから日本にも根付いた文化なのだと言えるだろう。
    門倉は少年にちょっと待てと言いながら鞄の中やポケットの中を探る。お菓子なんてそうそう食べるタイプではないし、中性脂肪だ生活習慣病だなんだで恋人に厳しく言い付けられている身だ。探せど探せど昼間に作業員(65歳独身男)に貰ったカンロ飴の包み紙しか出てこないのだ。
    (え、何?これお菓子無かったら金渡せばいいの?もしかしてだけど俺殴られたりしない?え、いやもうこれでいいや)
    所謂キレる若者が怖い中年男性の呟きだ。焦りに焦った門倉はカバンの中のそれに触れると少年の両手に明け渡した。

    「…おじさん、これなに?」
    「お、俺の名刺…」

    株式会社土方
    営業部長
    門倉利運

    苦肉の策が己の名刺。行くぞ現代の侍よ。
    少年の両手に差し出す所作は完璧だった。

    「ふーん、」
    「…えと、すまん、菓子をもちあわせてなくてよ。」
    「おじさんも大変なんだね。」

    何故か同情されてしまった。

    「うん、でもカードみたいでかっこいいからいいよ!ありがとう!」
    「え、まじ?それでいいの?」
    「うん!」

    少年は門倉の名刺をクルクルと指の間から間で器用に回しながらそう言った。門倉はどうやら金も取られないで良さそうだとホッと胸を撫で下ろす。しかし、

    「でもお菓子じゃないもんね。だから一日だけの魔法のイタズラにしておくね!」
    「え」
    「トリックオアトリート!」

    門倉はその言葉と共に少年になにかの粉を頭からかけられたが、避ける暇はなかった。かぼちゃの仮面から除き見えた少年の口はとても愉快そうに弧を描いていたのだった。






    「ど、どちらさんで、すか?」


    いつもはぶっきらぼうながらも必ず帰ると玄関まで迎えに来てくれる恋人も、流石に門倉の今の姿を見て敬語にもなる。
    そりゃそうだ。いつもいつもジジイジジイと揶揄してきた相手が帰ってくるとのことで、どうせ帰るなり疲れただのもう動きたくねぇだと言うのはわかっているから、部屋を温めておいて食事もすぐ食べられるようにしておいたし、そこまでして帰ってきたヨボヨボの相手がいつもと違うのだ。

    「あー、門倉だけど?」
    「いや、あの尻穴除きジジイがそんな若いわけないだろ!!」
    「酷くね?」

    そう、門倉は青年に若返っていたのだった。




    「ほ、本当に門倉なのか?」

    キラウシは若くなった門倉を見て警戒するように壁から覗くように身を隠した。
    当然といえば当然だ。いつもは自分よりも年上の恋人が帰宅したと思ったら自分よりも若くなっているのだ。
    中年太りだなんだと揶揄してきた腹はスっと凹んでいて着ていたスーツは少しブカブカになっているし。
    頭の端が白髪になっていてモヒカンのように少しだけ残っていた黒色は全体に染まっているし。
    浮き出ていた頬骨もシャープな輪郭に沿っているし、目尻も垂れ下がっていない。
    何よりだ。キラウシが心の底で隠れて好きだった門倉の血管の浮き出た年季の入った手も肉が着いてガッチリとした手になっていた。
    キラウシの警戒した様子を受け入れつつも、門倉は少し困ったように聞いた。

    「あの…トイレ行きてぇんだけど、入っていい?」
    「か、門倉なのか証明しろ!」
    「あー門倉だってんだろ、貧乏人。」
    「尻穴覗きニシパだ。」

    合言葉のようにそう言うと、キラウシは門倉が家に入ることを許可したのだった。



    「なんか少年に粉かけられたら若くなった。」
    「門倉、今日は頭でも打ったのか?大丈夫か?そんなアホなこと言って。」
    「いや、本当なんだって。」

    無事トイレにも間に合い、若返りの効果で尿のキレの良さに感動を覚えつつもリビングに戻ると香ばしいチーズの香りがたちこめていた。そういえば今日はグラタンだと言っていたな。門倉はぐぅと腹を鳴らす。
    未だに当たり前だが信じられない様子のキラウシはいつも通り帰宅して案内しなくてもトイレや洗面台の場所も把握しているし、ネクタイをはずして財布や時計やらをいつもの置き場所に置くのだから門倉に間違いないと確信はしつつも、事の発端を聞いても理解出来なかった。
    何よりなんでこんなに焦らないんだこのジジイは。とさえ思っていた。

    「まぁ一日だけとか言ってたし、すぐに元に戻るだろ。」
    「そんな呑気な…本当に大丈夫なのか?他はなんともないのか?」
    「まぁ。うん。多分。」

    そんなことより腹が減ったとでも言いたいのかさらに腹を鳴らすものだからキラウシは呆れる。まぁ門倉で間違いはなさそうだしと、キラウシはいそいそと食事の準備をしたのだった。

    「かぼちゃのグラタンか、いいね。胃もたれ心配だけどよ。」
    「大丈夫だ。チーズは門倉の分は減るしてある。」
    「そりゃありがてぇ。いただきマース。」

    そう言って食卓に座りながら少し微笑みを落とす恋人はやはり恋人だが真新しい若い頃の門倉の姿にキラウシはドキリと胸を鳴らす。

    「っ!」

    慌てて赤くなった顔を隠すが、当の本人はグラタンに夢中で気がついていないようだ。
    キラウシはちらりと若くなった門倉を今一度隠れながらもまじまじと見つめる。
    いつも見なれた動きをこなすのは若くなっている門倉だ。ノロノロと酒を飲みながらちみちみと食べる食事も今日は腹がとにかく減っているのだと言わんばかりにガツガツと食べている。
    スプーンの持ち方や、お茶の飲み方、仕草はいつもと変わらないのに溢れるパワーというか若さが滲み出ていて不思議な感覚だった。
    キラウシはゴクリと喉を鳴らして若くなった門倉の手を見た。先程も感じたいつもと違う手。
    そのいつもと違う手がいつも通りの動きをするもんだからキラウシは混乱する。その手がもしも自分を触れるというのならば…

    「ウシ…キラウシくん?」

    キラウシは名前を呼ばれハッと我に返る。

    「な、なんだ?門倉」
    「いや、なんかすげぇ腹減っててさ。なんか他に食べていいって聞いたんだけど…」

    ふと向かいにの食卓に座る門倉の前に置いた食事を見るとペロリと完食している。本当に腹が減っているようだ。

    「え、あぁ…なにか作るか?」
    「いや、そりゃ面倒だろ?まぁ何だ…久しぶりにあれを食べたくてな。」

    と言って門倉は食器棚の上のそれを指さした。
    それはキラウシがたまに食べるように買い置きしていた激辛ラーメンだ。所謂蒙古的な北極的なラーメンだ。

    「大丈夫か?あれ、前門倉が食べて胃もたれで二三日腹壊してただろ?痔も悪化するぞ?」
    「なんか今なら行けそうな気がしてよ。ものすごい久しぶりに食いてぇ。」
    「胃袋まで若返ってるのか?」
    「そうかも。」

    そう言ってすくっと立ち上がり、キッチンに向かうとやかんに水を入れる門倉をキラウシは横目で見つめる。
    やっぱり夏太郎くらいだろうか。それくらいまで若返っていそうだ。歩き姿まで若々しいのだ。

    「…何だか違うやつが家にいるみたいだ。」
    「え、何?なんか言った?」
    「…別に。」

    自分より若くなった恋人に何だか寂しさを感じていたキラウシだった。




    「あ〜さすがに腹いっぱいだわ」
    「だろうな。」

    辛い辛いと言いながら何度もお茶を飲んで食べ終えた所謂中本的なラーメンに満足気に若い胃袋が吠える。キラウシが心配してキャベジンとボラギノールを置いておいたがどうやらその心配は無用らしい。

    「なんか全然腹も胃もたれしてる感じしないし、なんなら元気もありあまってる気がする。」
    「本当に若返ってるってことなんだな。」
    「久しぶりになんでも出来そうな気がするな。」
    「なんでも?」

    誰もが1度は思うだろう、もう少し若けりゃ…それが現実に起きている事に先程のラーメンによって呼び覚まされた門倉は見たこともないほどやる気に満ちていた。

    「ほらよ。若い時にやっときゃ良かったこととかあるだろ?そういうの今若返ってるわけだしよ。やり残したこと今晩中にやろうかなって思ってよ。」


    その言葉にキラウシはドキリと胸を鳴らした。
    先程まで自身が考えていた邪な願望が漏れてしまっていたのか。
    いつの夜かに聞かれた所謂冒頭のやり取りを思い出す。
    (なぁ、若もんのお前ほんとに俺で満足してんの?)
    年老いた自分を憂いて吐いた門倉の言葉がもし若さを取り戻した今行動に変わるのか。
    満足させられちゃうのか、俺?
    キラウシはカァーと全身が赤く染まるのを感じていた。
    そんなキラウシの事など露知らず門倉は立ち上がると、拳を握りしめてこう語った。




    「よしっ!今夜はずっと読めてなかった司馬遼太郎の胡蝶の夢を寝ないで読むぞ!」

    キラウシは椅子から転げ落ちたのだった。





    続く?
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    nekodamashii12

    MAIKING※書きかけ。ハロウィンな魔法で若返った門倉さんとキラウシくんな門キラ。続きが書けないの…ので置いておきます。気がついたら…
    あの素晴らしい若さをもう一度。「お前さんがよ、ほんとに俺で満足してんの?」

    事が終え、だらりと体をベッドから垂らした門倉は目も合わさずそう問うてきた。既にもう寝ていたと思っていたのでその横で本を読んでいたキラウシは眼鏡を外して本をベッドサイドに置くと、呆れた様子でそっぽ向く相手の鼻をつまんだ。

    「いてっ」
    「カドクラ、その質問は何度目なんだ。」
    「…ってよ…」

    膨れていじけるような年齢ではないことはわかっているが、これがどうしてやはり自分の年齢と若い恋人と釣り合っているのかというのは不安にはなる。
    先程の行為だって自分より若くそしてアウトドア系の相手が本当に満足してくれているのかさえわからない。行為の間も腰痛持ちの自分に対してかなり配慮してくれているはずだし、何より門倉は果てるとすぐに眠気が来るタイプだ。行為が終わり身を整えるとバタンキュー。そんな自分とは違い、恋人のキラウシは行為が終えると今のように本を読み始めたり、明日の支度や料理の下拵えなど始め出すのだから本当に満足しているのか心配にもなる。
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