大切なものだから、今すぐに君に"これ"を、返さないと。
軽く握りしめた手の平に入れてから……早10分経つ。僕はふらふらと漂うように、まだいるだろうかと見渡しながら校内を彷徨うーーー
探しているのは寺刃ジンペイ。
僕の後輩、手の平の私物の持ち主だ。
いや、私物なんて、返せる時に返せばいいじゃないか…そう思うのは必要性の無い私物ならではの話。よりによって変身メダル・紅丸を落としているんだからタチが悪い。一番花形のメダルを、廊下のど真ん中に堂々落としていく奴の 気が知れない。
(嗚呼……知っていたよ……そういう子だって)
時は黄昏時過ぎ。…最近は暴走化した怨霊も頻繁に出没しており、この時間帯は特に油断ができない。
万が一を考えて、本人かその友人に会えれば、と色々と場所を当たってみたが見つけられなかった。
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