政府の飼い犬VSフダツキのワルズルリ、ズルリと、嫌な音がした。
何かが這い回るような、重たい音。
深夜の街外れということも相まって、自分以外誰も居ないその空間に響く、不気味な衣擦れの音に、クロコダイルは葉巻を咥えたまま振り向いた。
「・・・に、・・・で、」
蚊の鳴くような声と、土の地面を這いずる男の姿に、流石のクロコダイルも怪訝そうに顔を顰める。
必死に、こちらに向けて腕を伸ばす男の顔に、凡そ見覚えは無かった。
「"奴ら"に、渡さないでくれ。」
厚く掛かっていた雲がちょうど晴れて、月明かりが男を照らす。
真っ赤に濡れた口元、ズルズルと体を引き摺った地面には、血の跡が続いている。
その片脚は、見るも無惨に千切れていた。
悲鳴を上げる程でも無いが、無視出来る程、小さな出来事でも無い。
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