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    はるち

    好きなものを好きなように

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    はるち

    DONE甘いものの過剰供給に限界を感じる博のお話。
    囁くあなたの甘い舌 ラテラーノは確かに楽園だった。滞在三日目までは。
    「もう向こう半世紀は甘いものを見たくない」
     ソファに崩れ落ちるように座り込んだドクターの台詞に、リーは苦笑した。
     ラテラーノ人の甘いもの好きについては知っていたが、まさかここまでとは。路地には甘味を販売する露店が立ち並び、三歩と行かない内に別の甘いものに行き当たり、アイスクリームを売り歩くワゴンとすれ違う。極めつけはジェラート供給所だ。何故あんなものが街中に常設されているのだ。
    「ドクターだって甘いものは好きでしょう」
    「限度があるよ、限度が」
     確かに仕事で疲れている時は自分だって甘いものが恋しくなる。しかし連日のようにそれを口に来続ければ話は別だ。朝食にフレンチトースト、昼食と夕食にはデザートがつき、任務の合間に街へ行こうとせがむオペレーター達を連れて三時のおやつを食べに行く。それだけならまだやりようもあったのかもしれないが、甘いものに合わせる飲み物さえも甘いのだ。一体何が悲しくてザッハトルテと一緒に蜂蜜がたっぷり使われたカフェラテを飲まなければならないのか。無闇矢鱈と砂糖を使った暴力的な甘さではなく、繊細な味わいのする上品なスイーツだからこそ今日まで耐えられたが、しかしそれもそろそろ限界だ。ニェンが振る舞う火鍋が恋しい。
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    はるち

    DONE二人で飲茶を食べるお話
    いつだってあなたと晩餐を アルコールは舌を殺す。
     酒の肴を考えてみれば良い。大抵が塩辛く、味付けが濃い。それは酒で鈍くなった味覚でも感じ取れるようにするためだ。煙草も同様だ。喫煙者は食に興味を示さなくなることが多いと聞くが、それは煙が舌を盲目にするからだ。彼らにとっては、食事よりも煙草のほうが味わい深く感じられるのだろう。
     だから。
     酒も煙草も嗜む彼が、こんなにも繊細な味付けで料理をすることが、不思議でならない。
    「今日のは口に合いませんでした?」
    「……いや、おいしいよ」
     考え事をしている内に手が止まっていたのだろう。問いかけに頷き返すと、そりゃ良かった、とテーブルの向かいで彼が微笑む。
     飲茶に興味がある、と言ったのはつい先日、彼が秘書として業務に入った時のこと。それから話は早かった。なら次の休みは是非龍門へ、と彼が言うものだから、てっきりおすすめのお店にでも案内してくれるのかと思ったのだが。彼に連れられてやって来たのは探偵事務所で、私がテーブルにつくと次から次へと料理が運ばれてきた。蒸籠の中に入っている料理を、一つ一つ彼が説明する。これは焼売、海老焼売、春巻き、小籠包、食事と一緒に茉莉花茶をどうぞ、等々。おっかなびっくり箸をつけてみれば、そのどれもがここは三ツ星レストランかと錯覚するほどに美味しいのだから。
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