フルーツタルトは甘くない 三という数字を神秘的なものだと考えるのは、国が変わっても変わらない。
モスティマと共にテラの大地を旅する中で、フィアメッタはそう思った。三賢人、三女神という表現は、違う文化圏でも使われる表現だった。物体は二つではなく三つの点を持つことでようやく安定するし、社会性が生まれるのも人間が二から三に増えたときだ。三というのは、非常に安定して、神秘的な数字なのである。
だから。
「フィアメッタ、そんなに急いで食べなくてもいいのよ」
「別に急いでないわ」
フィアメッタは眉間にシワを寄せながらフルーツタルトを食べていた。レミュアンが作ったものだ。お見舞いに訪れたフィアメッタとモスティマのために、彼女自身が作ってくれたのだという。ラテラーノ人は総じてデザートが好きであり、自分でもよく作る。ナパージュされたフルーツはさながら宝石のように綺麗であり、サクサクしたタルトの歯触りと、上品な味わいのカスタードクリームのバランスも丁度よい。
1479