山の一夜 ──しくじった…。
日没も近く、木々を通して辺り一面長い影と夕焼けの橙に染まる山中、足許に落ちる乾いた枯れ枝を選んで拾い集めながら、阿国は嘆息した。
──これまでさんざ気を付けていたのに、仕方ないとはいえあれさえなけりゃ…。
忌々しく枝葉の隙間から覗く、夏より短くなった秋の夕空を睨む。どこからか山に帰ってくる鴉の鳴き声が聞こえる。それで改めてまざまざと日没を知らされて、諦念半分、しかしいつまでも消えない口惜しさに鬱々としてしまう。
「…まぁとにかく、早く戻らないとね。いつまでも一人待たせておくのは危険だ」
空から視線を切って溜息をこぼすと、それで一旦後悔は横に置いて、一抱えほどの十分な量になった枯れ枝を小脇に抱え直すと、阿国は来た道にならない道を目的の場所に向けてまた引き返した。
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