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    Tonya

    MOURNINGお題「泣くくらいなら、笑ってやる」
    流ロク 双葉ツカサ、ヒカル
    公園を駆け回っていた幼児がこてんと前のめりに倒れ、ワッと泣き出した。母親らしい女性が慌てた様子で駆け寄っていく。
     ありきたりな光景。甲高い泣き声に注意を向けていた周囲の人々も、事態を把握するとすぐ各々の行動に戻っていく。一人、ベンチに腰かけている少年を除いて。
    『……うるせぇな』
    「あ、ヒカル。起きたんだ」
     頭の中だけで行われる特殊なコミュニケーション。あるいは自問自答。
    「大丈夫かな。派手に転んだみたいだけど」
     顔面をぶつけたらしく、幼児の小さな鼻が赤くなっていた。
    『あんなの本気じゃねえよ』
     気を引くためだ。何を、とはあえて言わない片割れの言葉にツカサは首肯する。たしかに母親に抱き起こされると、幼児はすぐ涙を引っ込めた。
    「きっとそれは……いいことだよ」
     つまずき倒れたとき、手を差し伸べてくれる人がいるのはきっと幸せなこと。ほら、あの子供だってもう笑顔になっている。
     じゃあ、もしそんな相手がいなかったら。
    『ケッ、くだらねえ』
     疑問を浮かべるのと同時にヒカルが吐き捨てる。
    『他人の手を貸りなきゃ立てねえなんざ、雑魚の証みたいなものだろうが』
    「どうだろう。でも、うん… 728

    masasi9991

    DONE何かと戦っている土蜘蛛さんと大ガマさん落下


     足を滑らせた、かのように見えた。
     高く跳ね上がって、ご自慢の長い髪を振り上げる。同時に空が震える。よく晴れた雲ひとつない空が、水面のように波紋を広げた。
     錯覚である。しかしともかく、あれが妖気の波紋を広げた途端、そこで足を滑らせた。
     空を切り裂く波紋を残し、落下する。
     その仇は我々と異なる理を抱き、不可視であった。音ばかりは耳に届く。悲鳴のごとき轟音が響いた。
     空に巣食っていた目に見えぬ何者かが、目に見えぬ血しぶきを上げ、のたうち回りながら、逃げ去っていくのだった。
     地上では歓声が上がる。勝利と安堵の声を妖怪たちが上げている。
     仇は討った。逃げていく。しかしあれが、真っ逆さま、空から落ちる!
     仇の残した最後の一撃は、あれの胴を撃ち抜いた。だがまるで誰にも見えていない。ただ空で迂闊に足を滑らせたかのような。妖怪たちの軍勢は誰もその一撃を見ていない。だが落ちる。ただ一人、止めの一撃を放ったあれが真っ逆さまに落ちるのを、誰も気付いていない。
     勝利に酔った混沌の中を駆け抜けて、空白の――波紋も悲鳴も血反吐も音もかき消えた晴天の最中へ、たまらず飛び上がった。
     無我 548
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