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souma25250311

かきかけ少しずつ恋になっていく、キメ学ベースの現パロ宇善を書きたかったけど、なかなかすすまないので投げとく(´・ω・`)
どちらも恋に発展してない
穏やかな春の陽気、暖かな風に攫われて桜色の花弁が舞う中、雲一つない青空、入学式に相応しい日だった。
欠伸を1つしたあと、伸びをして、視線を前に移すと晴れやかな日だと言うのに、蒲公英色の派手な髪色をした1人の生徒がただ静かに佇んでいた。
その少年のまわりだけがゆっくりと時が過ぎていく、そんな錯覚に陥るほどだ。
指1本動かすこともできず、ゴクリと喉を鳴らしたのがやけに耳につき、その生徒から目を離せなかった。




入学式の時の物静かな少年は錯覚だったのか?と自分を疑いたくなるくらいに、次に会った時の少年は別人のようだった。
名は我妻善逸、この我妻はとにもかくにも煩い。
表情が声が全てにおいてうるさく、風紀員になったとかで朝の校門で行われるやり取りは毎度のことだ。
やれピアスだ、やれ髪の色だ、やれ派手なメイクだとイチャモンをつけてきやがる。
派手なことがなにが悪い!芸術は爆発だ!俺様がいいと思ってるんだからいいんだよと頭を鷲掴んで、痛い痛い離せ筋肉ダルマだとか、イケメンゴリラだとか喚くのも毎度すぎて、またやってるよと生徒から見られることにもなれた。
最初のうちは我妻に同情する生徒もいたが、今じゃ朝の名物として我妻の友人以外の生徒達は受け入れている。
我妻の友人のピアスの少年と猪の被り物をしている少年だけは我妻を助けようとすることもあるが、2人はそれぞれ冨岡と不死川に追いかけられて校内に入っていくのもいつものことだ。
走り去っていく2人、その後を追いかける同僚の怒声とホイッスルの音を───…嘘すぎでしょ、トミセンも空気読んでよ、俺いつも輩先生に絡まれてるのにさぁとぼやいていた。
掴んだ頭を無理矢理自分のほうに向かせて、ニィッと人の悪い笑みを浮かべてこう言った。

「我妻喜べ、俺様の手伝いをさせてやる、放課後逃げずに準備室に来いよ」

と、上機嫌に告げてパッと頭から手を離して、ひらひらと手を振ってその場を後にした。
後ろから喧しいくらいきゃんきゃん吠える我妻を残して。





我妻は呼び出せば律儀に来る奴だ。
逃げたら俺になにされるかわかったもんではないというのが本人の言い分らしいが。
今日も朝呼び出しておいたから放課後、我妻は渋々といった表情を浮かべて美術準備室に姿を現した。

「何を手伝えばいいんですか?」

「ああ、今日は手伝いっつうより、なんだ、モデルやれ、お前」

「…………は?」

一瞬の間のあと、間抜けツラをした我妻にだろうなとは思った。
予想通りの反応に苦虫潰したような顔で我妻を見れば、小心者なのか、臆病だからなのか、ビクッと肩を跳ねさせた我妻がため息を吐き出して───…ポーズはどうすればいいんですか?と尋ねてきた。

「ポーズはとらなくていい、そこの椅子に座ってろ」

「わかりました、動いたらダメなんですよね?」

「まぁ、そうだな、できるだけ大人しくしてろよ、あっ、そうだ、モデルの褒美は用意してあるから期待しとけ」

「俺そんな安くないんで、飴玉1つとかだったら怒りますよ」

「はっ、派手に期待しとけ、俺様がンな地味なことするわけねぇだろ」

派手な頭が気に入っていて、1度でいいから描いてみたいと思っていた。
緊張でもしてるのか、ガチガチに強ばる我妻に──モデルみたいにちゃんとしろとは言わないがも少しマシな顔できないもんかね。
それでも、筆が進んでいくうちに自然な表情を見せるようになったのだから意外だった。
眠そうに欠伸をしたり、興味津々に俺を見てきたり、できるだけ動くなって言ってんのに顔がうるさかった。
体は動かさず椅子に座ってるが、表情はコロコロ変わる。
さすがに黙っていた俺も変わりすぎる表情に我慢できなくなって、描いてんのに表情コロコロ変えんなよと注文をつけると、眉尻下げて照笑をうかべた善逸が───モデルって照れちゃうね、うひひ、ごめんなさいね、落ち着きなくて…なんて言うものだから開いてはいけない扉を開きそうになって心の扉にしっかり施錠までして閉じておく。
我妻を見据えて筆を走らせていく、完成に近づくにつれて自分の中での我妻象がまだ不確かで、これじゃダメだなと筆を置いた。

「ああ、なんだ、お前また来いよ、今の俺じゃ我妻を描けねぇわ」

「へっ?」

「上辺だけのお前を描いてもそれは我妻を描いたことにならねぇわけよ、俺が描きたいのはお前の魂だ」

「はぁ…」

「まぁ、そのうち描けんだろ」

なにやらぶつぶつ小言で喋りはじめた我妻が身を乗り出して、今まで描いていたキャンパスを覗く。
そこには表面だけを捉えた姿形は似てる我妻の絵がある、だが、これは魂がこもってない、宇髄はこれでは納得できないのだ。
ぽつりと我妻が呟いた。

「似てると思うんですけどね」

「見た目だけならな、こんな魂のこもってないもんじゃねぇよ」

「芸術ってやつですか、やくわかんないですね」

「お前壊滅的に絵が下手だからな」

ケラケラ笑って我妻の頭を乱雑にかきまぜると、指に触れる髪が思ったより柔らかくクセのない触り心地がいいものだと知った。
いつも頭や顔面を鷲掴んではいるが、しっかり触れたことがない髪だ。
その触り心地を堪能するように手櫛で髪を梳いて、弄ってると、大人しくしていた我妻が嫌そうに顔を顰めてじっと俺を見ている。

「あ、なんだよ、その不満そうな顔」

「男に髪を触られて嬉しい男がいると思います?」

「色男に触れられて光栄だと思え」

「はあああああ???いくら色男だとしても男は男なんですよ、アンタの頭腐ってんのか、脳みそ仕事してます?あ、すいませんね、アンタにそんなこと言っても無駄でしたね」

「おうおう、言いたい事はそれだけか?覚悟はできてんだろうな」

青筋をピキピキ浮き立て、我妻がビビるの承知で低い声色で圧をかけるように言葉を紡げば、小さく悲鳴をもらして血の気が引く様子を見て吹き出した。

「ぶはっ、おまっ、ビビりすぎだろ!!」

「え?」

「冗談だよ、冗談、からかっただけだ」

「はああああああ!?!?からかっただけってアンタわかりにくいんだよ!心臓まるびでるかとおもったわ!!」

ほっと安堵したような表情を浮かべて、騒ぎ立てる我妻の頭をぐしゃぐしゃに撫で回しながらニッと意地悪く笑う。

「くくっ、生意気なガキにはちょうどいい仕置になったろ?」

「帰る!輩先生の手伝いなんてもうしないわ!!!」

「まぁまぁ、そんなカリカリすんなよ、お前今日ひまか?このあと」

「はぁ?……俺にだって用事があるに決まってんでしょ!」

呼び止めて予定を聞けば拗ねてるのか、怒ってるのか、用事があると返ってきた。
それをきいて瞳を細めて、前に聞いた大好物、これを言えば絶対に釣れるという確信を持ちながら残念そうに言葉を紡ぐ。

「あっそォ、ご褒美特上うなぎでも奢ってやろうと思ってんだけど、いらな「それを早く行ってくださいよ、うなぎ奢ってくれるなら今予定なくなりました!」」

「お前調子いいな、用事はいいのかよ?」

「なくなったって言ってるでしょうが、うなぎより大事な用事なんてないんで」

「ふーん、んじゃま、さっさと用意してこいよ、裏門で待ってるわ」

「はーい!」

「好物の前じゃ返事いいな、現金なヤツ」

喜んで準備室を出ていく後ろ姿を眺めながら、簡単に釣れるチョロい我妻に悪い大人に騙されるんじゃないのかと一抹の不安を覚えた。

自分も帰りの準備をするため1度職員室に寄ると、斜め後ろからよく通る声で話しかけられた。
振り向けば、焔色の髪の同僚が爽やかな笑顔で俺を見ていた。
こいつの髪はド派手で好きだ。学生の頃から気があって職場まで一緒になった時は驚いたもんだ。

「なんだ?」

「宇髄、今日飲みに行く話しをしていたんだが、どうだろうか?」

「ああ、悪ぃ、先約があるんでな、パス、また今度頼むわ」

「うむ!また誘うことにしよう、女か?」

「おまっ、学校だぞ、ここ、露骨にんな事きくんじゃねぇよ、ちげぇから勘違いすんな」

学生時代からの悪友とは時には面倒くさいものだ。
派手に遊び回ってた経歴から、いや、今でも女遊びは別に辞めちゃいねぇが学生時代より教師という職業柄遊んではいない。
だというのに、露骨な物のいいで聞かれて呆れるしかなかった。
これ以上追求されては面倒だとばかり急いで身支度を整えて職員室をあとにした。



職員玄関から出て、裏門のほうに歩いていき、自分より先に用意を済ませたらしい我妻がすでにそこに立っていて、物静かな様子に入学式のことが脳裏に浮かぶ。
あの時は儚く今にも消えそうだった。実際はそんなことはなく、とにかくうるさいくてモテたいモテたいと馬鹿の一つ覚えみたいにボヤいている健全な男子高校生とも思える。
なのに今は静かにしてるだけで1枚の絵のような、そんなふうに思わせる儚さがある。
普段うるさいヤツが静かだとそう感じるのだろうか、足音を立てず近づいてスマホを見ている我妻の肩をぽんと叩いた。
予想通りというか、なんというか、儚い雰囲気は一瞬にして消えて、いつもの我妻善逸に戻った。

「ギャアアアアアアア!!あっ、アンタさ、俺が心臓まろびでたら責任取れんの!?音もなく近づくなって何回も言いましたよね?」

「おうおう、気づかなかったのは自分のせいだろうか、スマホいじってるのが悪い」

悪びれもなくそう言えば、行くぞォと促して連れ立ってよく行くうなぎ屋に我妻を連れていく。
特上うなぎと言われても高級そうなお店に連れてこられるとは思ってなかったらしく、案内された個室に引き攣った表情を浮かべる場馴れしてない初々しい反応を見せる我妻が可愛いと思った…が、絶対に本人に言うつもりはない。

「特上うなぎでいいんだろ?」

「いや、あのさ、本当にこんな高そうなお店に連れてこられると思ってなかったわけ?気軽な気持ちでうなぎご馳走になりに来たのに、なにこれ、メニューに値段ものってないし、時価って…ちょっ、まってまって、本当落ち着かない、こんなの味がわかるわけないじゃん!馬鹿なの?ねぇ、馬鹿なの?なんで高校生をこんなところに連れてきたわけ?」

「ああ?俺のなじみの店だわ、よく来るんだよここ」

「はぁ???教師ってそんなに稼ぎがよかったでしたっけ?なんなの、まじなんなの?顔もよくてお金もってるからさ、向かうところ敵無しってか、ふざけんなよまじで、イケメン滅べよ」

「あのなァ、妬むのは勝手だけどよ、顔は生まれつき、金はあれだ、絵を売ったりしてるしな」

「は?」

「お前知らなかったのかよ、俺は非常勤講師だぞ?副業問題ないわけ、いや、こっちが副業か、本業は画家だしな」

「はあぁ?顔がよくて背も高くて金持ってて教師だけど、本業は画家とかなんなの?それ、チートなの?どんな徳を前世で積めば天に二物も三物も与えられるわけ?神のお気に入りかよ」

不満を隠さず顔を顰めて文句を言う我妻は気づいてないのだろうか。
内容が貶してるんじゃなくて褒めてることに。
まだ止まらない妬みもここまでくると清々しいほどだ、面と向かってここまで妬まれた経験はない。
学生時代に俺のおこぼれにあやかろうと媚びてくる連中はたくさんいた、そいつらが裏では陰口をたたいていたことも知っている。
そんな奴らとは違い、俺に直接文句をつける勇気だけは感服するものがある。

「お前うなぎを奢ってくれる人間に対してよくまあそこまでつらつらと文句言えるな」

「こんなもんじゃありませんよ、顔がよくて背が高い時点で男としては勝ち組なのに、金まで持ってたら最強じゃないですか、どんだけ女にモテたいんですか」

「ああ…、モテたいなんておもったことねぇわ、昔から勝手に寄ってきたしな」

「こ、れ、だ、か、ら、モテ男は!!!!まじ許せない、どんだけ女の子を泣かせたんですか、吐け今すぐ吐け!」

「いちいち覚えてるわけねぇだろ、お前今まで食べた食パンの枚数覚えてるのか?それと同じ」

「おいいいいいぃぃぃぃ!!!アンタ、アンタね!それ違う作品のキャラだから!アンタが言っていい台詞じゃないからマジふざけんなよ、なんでもありかよ、このやろぉぉぉぉ!」

なにを慌ててるのか意味不明なことを叫びながら怒る我妻にドン引きして冷めた眼差しを向けてると、それに気づいたのか、ピタッと動きを止めて睨んでくる我妻の目をじっと見据えた。

「ん?もう終わりか?」

「はぁ、もういいです、俺が馬鹿でした、この規格外の人間にはなにを言っても無駄だってことが、俺とは相容れぬ存在だってことも」

スマホを取り出してもう喋る気はないと無言でいじりはじめるのが気に入らなかった。
無性に腹が立って座敷で向かい合って座ってることもあって、自分の足の長さならちょっかいをかけるのは容易い。
足で我妻の足をつつくとジロっと睨まれるもんだから、口元が自然と綻んで笑顔を向ける。

「なぁ、そんな睨んでどうしたよ?」

「このセクハラ教師!」

「ははっ、これくらいでセクハラなんて言わねぇよ、本当にセクハラしてやろうか?」

「したら淫行教師って叫びますよ、俺は別に困らないんで」

険悪な雰囲気が流れる中、店員がうなぎをもってきて、場の空気が変わった。
よっぽどうなぎが好きなのか、さっきまでの冷めた目はどこへやら、花が咲いたように笑顔を振りまいて蓋を開けては感嘆の声をあげた。

「うわぁ、つやつや、なにこれマジやばくない?めっちゃ身がやわらかそうでふっくらしてて、食べて食べてって声が聞こえてきそうだよ」

「……お前、ほんっと…」

「ん?なんかいいました?」

「なんでもねぇよ」

笑ってると可愛いと思ったとか、死んでも認めたくねぇ。
我妻善逸だぞ?俺、しっかりしろ、なにをとち狂ってるんだ。
たしかに、派手な髪をしていて、からかいがいがあるから気に入ってはいる。
だがそれはあくまでもお気に入りの玩具みたいな感覚であって、可愛いとかそんな気持ちになるもんじゃ…いや待てよ?ペット感覚か。5794 文字
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shido_yosha

かきかけ100日後に死ぬ鳴瓢百貴船太郎と鳴瓢秋人はもともと警視庁刑事部捜査第一課の警察官だった。
 同じ捜査チームに所属し、百貴の方が先輩だったけれど、出会ってすぐに意気投合した。互いの趣味が読書と格闘技観戦とかぶるところも起因した。だから仕事でバディを組むのみならず、プライベートで交流するようになるまでさほど時間は要しなかった。
 鳴瓢は既婚者で、夫婦の借りるアパートに招待されたことがある。彼の妻、鳴瓢綾子はとても美人で、垂れた目尻そのままの柔和な人柄だった。また、鳴瓢よりいくらか歳上らしく、夫の我の強さをうまく包容する度量もそなえていた。百貴が持参したケーキをつつきながら談笑する。夫人が緑茶を淹れなおそうと台所へ立った隙に、百貴は旦那を小突いて、
「お前にはもったいないくらいだな」
とからかう。すると鳴瓢は臆面もなく、
「俺もそう思います」
と綻んだのだった。
 鳴瓢がマンションを買ったときはささやかなパーティーを催した。センスのよいカジュアルモダンなインテリア。その隙間に、写真や思い出の品が並べられていた。
 夫婦が初子を授かると宝物はさらに増え、百貴が一家を眺めるたび光の洪水を幻視した。
 捜査で張り込みをしていたときのことだ。
「俺、自分の血縁と仲良くないんです」
 前を向いた鳴瓢がぽつりと語ったことがある。
「だから、自分の家族をつくるの、すごく憧れだったんです」
 百貴は生来独身である。都度恋人はいたし、厳格な実家からよく見合いを勧められた。忙しさを理由に逃げつづけて、気付けば四十路。その選択を未だ後悔したことはない。
 しかし。どれほど検挙しても犯罪は増えていく。凄惨な死体、うちひしがれる遺族。理不尽と怒りに出くわすたび、己れの無力さを痛感することが増えていった。
 だから百貴は、鳴瓢秋人の存在を尊く思っていた。自分の傍らでごく普通のささやかな幸せを築く相棒を少し羨ましいとさえ思っていた。あのマンションの一角は、相棒のみならず百貴にとっても幸福の象徴だったのだ。


 「ももぎさっ……やこが、……あ、っやごが!!」
 午後七時。一時間前に別れた相棒から錯乱した電話を受けとる。百貴は車をとばして、彼の自宅へと駆けつけた。マンションの管理人に連絡し、オートロックのドアを開けてもらう。
 玄関扉を開いた瞬間、顔をしかめる。腐敗と鉄錆の匂いが鼻をかすめた。同僚の姿を探していると、否が応でも部屋の荒廃した有り様が目についた。ゴミ袋の堆積。切れかけた電球。
 居間を通り抜け浴室へ向かう。すると鳴瓢が、背広の胸を血まみれにして愛妻を抱きしめていた。鳴瓢綾子は、全身をずぶ濡れにして、夫の腕のなかで事切れていた。
「ゔわぁあああ!あやこ、あやこ!!」
 百貴は走り寄って、
「鳴瓢。どうした、何があった」
「ももぎさっ……あやこが!あやこがぁあ!」
 薄暗い室内に相棒の絶叫がこだまする。浴槽を見やると水溜めが朱色に染まっていた。夫人の身体は青白く、最後に葬式で会った時と比べはるかに痩せ細っていた。鳴瓢が不在のあいだ、湯船につかり手首を掻っ切って自殺したのだ。
 百貴はすぐさま所轄の警察署へ連絡した。駆けつけた警察官に検視を頼む。第一発見者である鳴瓢は留置所へと連行された。
 清潔な慈愛で満ちていた家が、一変して血と汚濁の地獄と化していた。薄暗い室内で、食卓テーブルに置かれた白い箱がやけに浮かんで見えた。百貴はいたたまれなくなって外廊下へ出る。欄干に手をかけ、雑居ビルを睨んだ。あれは、百貴も手土産にしたことのあるケーキ屋の箱だ。


 検死の結果、鳴瓢綾子の死因は自殺とみて間違いないという報告を受けた。百貴は溜息を吐いて携帯電話をしまう。
 二〇一六年十一月十三日。鳴瓢の一人娘である鳴瓢椋が連続殺人鬼「対マン」によって殺害された。加えて、当時鳴瓢と百貴は別の連続殺人事件の捜査に当たっていた。よって自殺を偽装した他殺の可能性を除外すべく入念な現場検証が行われたが、状況からみて、娘の死を苦にした自死という結論だった。1670 文字
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kanamisaniwa

かきかけクローンドクターで銀博(ちらっとファントム→ドクター)『罪人は罰を受けるべき、なんだろ?それなら贖罪のために人身御供になってくれないか?フェリーン男性の鉱石病治験記録がどうしても欲しいんだ。無認可、無保証、前代未聞のないない尽くしの治験を受けてくれる人がいなくてこまってるんだ。
ん?贖罪になってない?そんなことないけどなぁ…それじゃ、私からの貸しってことにしておこう。回収はそうだなぁ……君が鉱石病を克服して舞台俳優に復帰してオペラ座の怪人を演じる舞台の一番の席をプレゼントしてくれよ。勿論君は端役じゃなくて主役のファントム役で、大きなハコ(劇場)をお客さんで一杯にしてさ。君の一番の晴れ舞台を特等席で私に見せてくれ』

オペラ座の怪人のファントム役しか演らないことで有名な役者、ファントムがヴィクトリア国立劇場でオペラ座の怪人を演じる。その一報が報じられた瞬間から、壮絶なチケット争奪戦が開始された。
そも、ファントムを名乗る男の素性は謎に満ちていた。かつて鉱石病にかかりロドスに滞在して治療したというカルテが公表、もとい週刊誌にすっぱぬかれたくらいで、その他は完全になぞだった。その上、無名の頃から舞台でファントム役しか演らないことで舞台好事家の間ではちょっとした変人として見られていた。
そんな役を選り好みする役者などすぐに干されそうなものだが、何せファントムが演じる"怪人"は迫力がありすぎた。初演は十人入れば一杯の劇場、ともいえない狭いホールもどきだったにも関わらず一晩で噂になり半年もたつ頃にはあちこちの劇団、劇場から引っ張りだこになっていたという。655 文字