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    ハッピーハッピ

    nico

    INFOジェイフロ小説アンソロのサンプルです。NRC時代の冒頭部分と、25歳になってからの彼ら部分を少々追加しました。冒頭しんみりめいてますが、しんみりしてるのは最初だけで内容はラブコメだと思ってます。ハッピーハッピーハッピーエンドなジェイフロです。
    余談ですがあまりの文字数の多さに主催のしののさんに泣き付きました……!
    ふゆのおわりにうたう唄 息が白い。
     海の中では見られない現象を面白く思いながら、オレは出来たばかりの魔法薬を雲がかかる空にかざした。虹色に輝く半透明の液体が、ガラス瓶の中で揺らいでいる。なにとはなしに左右に振れば、それは美しく光りながらたぽたぽと瓶の中でたゆたった。
    「キラキラじゃん」
     まるで他人事のようなつぶやきが白く変わって空気に溶ける。外廊下に隣接している学園の裏庭。流れる吐息に誘われて目を向ければ、そこは一面真っ白な新雪に覆われていた。
     寒さのせいか、庭に人の気配は全くない。まっすぐ歩いていた外廊下から、裏庭へと向きを変える。芝生の上に落ちた雪が、平らな革靴の底で圧縮される感覚があった。もう少し積もったら、滑って転んでしまいそうだ。そんなことを考えながら、オレはうっすらと雪がかぶったスチールのベンチを、ゴム手袋をしたままの手でぞんざいに払った。脚を伸ばして腰かけて、灰色の空を大きく仰ぐ。
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    狭山くん

    TRAINING2022-08-23/高校時代に空閑とハーレーで走った道を1人で走る汐見♂の話。今週末にはハッピーハッピーです(予言)
    空閑汐♂デイリー【Memories】23 ひとり荒野をバイクで駆ける。この場所で暮らしはじめて少しした頃に買ったバイクはすっかり馴染んでしまって。汐見は休暇の殆どをこうやってバイクを走らせ過ごしていた。
     同じ部隊の先輩は気のいい人間で、同期は学生時代からの仲ではある。けれど、余暇の時間まで過ごしたいとはどうしても思えなくて。大体の誘いを断り結局一人で過ごすことが多いのだ。あまりにも人付き合いが悪くて、自分でも笑ってしまう。そんな自分が平穏に過ごせているのは、ひとえに同期であるフォスターがフォローしてくれているお陰だろう。
     ――ヒロミに何を言われたのかは知らないが。
     フォスターは保護者よろしく汐見を構い、汐見が辟易とするようなあからさまな誘いの防波堤のような位置にその身を置いていて。軍に入ってから筋肉も持久力も学生時代よりも増えたとは言え、体質的なものなのか見た目はどうしても細く軟弱に見える汐見からして見れば羨ましい事この上ない恵まれた体格を持つフォスターはこの場所でグリズリーと呼ばれていた。
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