Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    ピアノ

    佐伯雛子

    DONE坂視点坂伴ssです。坂の母を捏造していたり、モブ上官が出てきてたりな短い話です。ピアノを弾くサカノーエコージが書きたかったんです。
    因みに作中で坂が弾いている曲はタイトルの曲です。編曲は作曲者の妻版でご想像ください。元々原曲が歌曲でそれをピアノ用に編曲しているので、歌詞を読みながら、曲を聴きながら読んでみるとより楽しいかもしれません。

    ※9話ネタバレ注意
    ※ばんちゃは最後しか出ません。
    Widmung【坂視点坂伴ss】少し昔話をしよう。
    これは私がまだ少尉に上がりたての頃。季節は夏、上官に連れて行かれた迎賓館での夜会での話だ。

    ***

    上流階級の社交場とは退屈なものである。華やかなドレスや着物に身を包んだ淑女達、仕立ての良い正礼装姿の紳士達が一つどころに集まっては噂話に花を咲かせ、上辺だけの微笑に、言葉尻にじわりと欲を潜ませて。何とも居心地の悪い場所であった。

    おまけに黒を纏った男達の中で第二種軍装の白は目立つのか。至る所から無数の視線を向けられているのが痛い程分かった。頭のてっぺんから爪先までを這う、ねっとりとした視線。粗はないかと誰も彼もが己に点数をつけているようで堪らなく不愉快だった。

    己の成功の為に飾り立てた連中から勧められるがまま上機嫌で杯を煽る上官を横目に、青二才であった私はこのくだらない集まりが早くお開きになることをただ願っていた。
    4481

    LIL Little(LL)

    SPUR ME今書いてるクソ長いジェイピアの話
    ーAM4:00


    そろそろ人々が寝起きする時間帯になってきている。 個々の生活によって街並みに明かりが灯り始めるという事だ、きっと煙草でも吸おうとベランダに出れば見渡す限り人の住処にちらほら光が見える筈だ。それはまるで地上に輝く星、命の灯火。人々の営みそのものだ。灯り始めた街の明かりがとても好きだった。煌々としていて綺麗だとも思っていた。そして自分もその輪に連なる一つだと感じさせてくれる時間。 ジェイクはそんな光景を眺めているのが好きだった。 ……いや光景というよりは憧憬、だったのかも知れない。

    あのたくさんの灯の中には暖かくて幸せな家族たちが居る。帰れば母親が出迎えてくれて、宿題を済ませると用意してくれたお菓子を食べながら父親の帰りを待つ。ただいまと笑う父親に飛び付いて今日の出来事なんかを話すのだ。兄弟姉妹もいるかもしれない。 きっと一家団欒と過ごし、テーブルを囲んで夕食を摂りつつ他愛無い話で笑いあっている。 そして両親に頭を撫でて貰い、おやすみ、とベッドで大きなテディベアを抱いて眠るのだろう。幸せな夢を観ているに違いない。 あぁ想像するだけでじわりと熱を持つ、憧れという気持ちが溢れ出す。…あの灯りの中はジェイクにとって幸せの象徴だった。 人々は皆そんな過去を持って生きている。それら全てに愛があり相手が居てこそ紡がれていく関係。 ……自分は知らない繋がり…。 そういえば幼少期…顔も知らない父親はいつ帰って来るのかと、玄関でずっと待っていた事がある。 今日がダメなら明日かな、明日じゃないなら明後日かも知れない。そう座って待つ床が冷たくて、芯からすっかり冷えた体を母は摩りながら謝っていた。 …言われなくても分かっていたのに、そんな事をしても誰も帰ってきやしない。…本当に馬鹿なガキだったな。 ……全て自分には無かったものだ、どうしたって手に入らない。 それが理解出来てからより一層寂しさが付き纏うようになった。 だから…好きだった街の明かりも、1人では無いと感じられるこの時間も… 心の底からの安堵に至らないものになってしまった。だけどそれを表に出すことはできなかったし受け止めてくれる人も居なかった。 …何故だろう、皆同じ世界で産まれ生きているのに。…自分だってこの繋がりの中で存在しているのに、どうして自分には与えられなかったのか…。 世界から切り離さ
    18617