ユーリ
Satsuki
DOODLEレトユリ。どこかの世界線で賭けポーカーをする二人。賭博をするユーリスの夢を見たから書きました。「レイズだ」
ベレトが完全なる『ポーカーフェイス』でそう宣言したので、ユーリスは信じられないといった面持ちになる。
路銀が必要だった。前金が出そうな傭兵の仕事も、雑用めいた手伝いもない場末の酒場。ユーリスの提案で、二人はあまり素行の良くはなさそうな連中に混じってカードゲームに参加した。勝てる賭けしかしない、と言って憚らないユーリスらしからぬことに、負けが続いた。何のことは無い。イカサマだ。相手は二人組で、何かカードに仕掛けをしてあるらしい。ユーリスが「これで仕舞いだ」と言ったにも関わらず、相手は大勝負を持ち掛けてきた。テーブルの上の金を全部賭けようというのだ。
「俺がやろう」
一瞬しり込みしたユーリスの代わりに、ベレトが勝負を受けた。止める間もなく、相手はさっさとカードを配ってしまう。ああ、とユーリスは頭を抱えた。「あんた、カードなんてやったことないだろ!」と囁くと、ベレトは「きみのを見て、今覚えた」なんてさらりと言う。ああ畜生、これで素寒貧だ。ユーリスはもうどうにでもなれという気持ちでベレトの手元を見守った。あーあ、この短剣でも売り払えばちょっとは金になるだろうか。そう考え始めた時、ベレトは配られた手札を一枚も交換することなく、重ねて手の下に隠してしまった。
1452ベレトが完全なる『ポーカーフェイス』でそう宣言したので、ユーリスは信じられないといった面持ちになる。
路銀が必要だった。前金が出そうな傭兵の仕事も、雑用めいた手伝いもない場末の酒場。ユーリスの提案で、二人はあまり素行の良くはなさそうな連中に混じってカードゲームに参加した。勝てる賭けしかしない、と言って憚らないユーリスらしからぬことに、負けが続いた。何のことは無い。イカサマだ。相手は二人組で、何かカードに仕掛けをしてあるらしい。ユーリスが「これで仕舞いだ」と言ったにも関わらず、相手は大勝負を持ち掛けてきた。テーブルの上の金を全部賭けようというのだ。
「俺がやろう」
一瞬しり込みしたユーリスの代わりに、ベレトが勝負を受けた。止める間もなく、相手はさっさとカードを配ってしまう。ああ、とユーリスは頭を抱えた。「あんた、カードなんてやったことないだろ!」と囁くと、ベレトは「きみのを見て、今覚えた」なんてさらりと言う。ああ畜生、これで素寒貧だ。ユーリスはもうどうにでもなれという気持ちでベレトの手元を見守った。あーあ、この短剣でも売り払えばちょっとは金になるだろうか。そう考え始めた時、ベレトは配られた手札を一枚も交換することなく、重ねて手の下に隠してしまった。
Satsuki
DOODLEユリアシュ。アリルでユーリスにぶん殴られて先生の陣営に来たアッシュくんがアビスで飼われている短い話です。僕は悪い子になりたい「おら起きろ、アッシュ」
コツン、と頭を足先で小突かれて、アッシュはのろのろと目を開いた。
「起きてるよ、ユーリス……ッ」
「そんならさっさと支度しとけよ」
口答えが気に障ったのか、ユーリスは靴の裏でアッシュの頭を軽く踏む。軽く、といっても、アッシュは起こしかけた体をもう一度床に敷かれた薄い毛布に縫い付けられてしまった。やめてよ、と言いたかった口は閉じ、今度こそ体を起こす。まだ回復しきっていない腕が痺れたが、さっさと寝床の始末をする。
「今日は俺らが朝飯の当番だ、行くぜ」
「……」
ユーリスはアッシュの首に付けられた首輪―――かつて灰狼学級の制服に付属していたものだ―――に結んだ縄を掴むと、まるで罪人を引っ立てていく看守か処刑人のように歩き出す。実際、その通りなのだ。一度はローベ家に仕える身となり、ベレト率いる同盟軍に敵対したアッシュは、先の戦場で何人かに弓を射かけ負傷させている。無論、自身の信念に従って行動した結果であり、後悔はない。……はず、だった。
2385コツン、と頭を足先で小突かれて、アッシュはのろのろと目を開いた。
「起きてるよ、ユーリス……ッ」
「そんならさっさと支度しとけよ」
口答えが気に障ったのか、ユーリスは靴の裏でアッシュの頭を軽く踏む。軽く、といっても、アッシュは起こしかけた体をもう一度床に敷かれた薄い毛布に縫い付けられてしまった。やめてよ、と言いたかった口は閉じ、今度こそ体を起こす。まだ回復しきっていない腕が痺れたが、さっさと寝床の始末をする。
「今日は俺らが朝飯の当番だ、行くぜ」
「……」
ユーリスはアッシュの首に付けられた首輪―――かつて灰狼学級の制服に付属していたものだ―――に結んだ縄を掴むと、まるで罪人を引っ立てていく看守か処刑人のように歩き出す。実際、その通りなのだ。一度はローベ家に仕える身となり、ベレト率いる同盟軍に敵対したアッシュは、先の戦場で何人かに弓を射かけ負傷させている。無論、自身の信念に従って行動した結果であり、後悔はない。……はず、だった。