Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    七海

    しんした

    PROGRESS七灰原稿進捗(2021.04.25頒布予定の生まれ変わり本)
    気に入った部分を細切れにあげていく予定。
    上から新しい→古い順になってます。
    七海視点
    2021.03.01〜


    また巡り会えた。やっと思い出せた。
    二度と失いたくない。絶対、放したくない。
    「灰原、頼むから」
    ──もう、どこにも行かないでくれ。
    七海がそう囁くと、灰原は一瞬大きく目を見開いた。
    濡れた頬を拭い、そこへ静かに唇を寄せる。黒い瞳からまた涙の雫がこぼれたが、七海はそのまま、薄く開いていた灰原の唇をゆっくりと塞いだ。

    2021.03.11




    彼は暗く澱んだ世界で見つけた、唯一の明かりのようだった。
    ハキハキとよく通る声で名前を呼ばれると、頬が勝手に緩んでいく。くるくると表情を変える瞳に見つめられると、胸の奥があたたかくなる。大きな口から発せられる言葉はいつも前向きで、自然と背中を押されていた。
    彼のそばにいると、世界が鮮やかに見えた。辛さや苦しさが、少し楽になる気がした。
    いつの間にか特別になった。誰よりも大切にしたいと思った。ずっと共にありたいと望むようになった。

    2021.03.07




    メッセージだけでも嬉しいというのに、わざわざ写真まで送ってくれたことに胸の奥があたたかくなる。七海は手早く『綺麗に咲きそうだな。明日でも大丈夫だけど灰原はどうだ?』と送った。 1219