怪物
竹星そ〜キ
DOODLE@TRPG_TL念の為未通過と現行は見ないでね〜って文が全然見えてなかったので再稿!
怪物a初回し中どうしても描きたくなったFA。
#ジャックの秘密浮世ゑ
何とは言いませんがよせてます。落書きです。 2
ふじたに
PROGRESS猫と怪物 8の裏 笹さに♂猫と怪物 8の裏 避けられてるのが寂しいのは変わらないけれど、とりあえずオレは今できることをすることにした。
和泉守に指摘されて、反省したんだ。確かにオレは主で頭がいっぱいだった。
とりあえずまずは練度を上げる。それから交友関係を広げる。みんなが主をどう思ってるのか知りたいし。
ぼんやり主にも、なんか聞いてみようかな……。
そんなことを思いながら、戦闘は今までより慎重に、仲間とは積極的にくだらない話をしながら日々を過ごした。
風呂でいっしょになった正国に、主のことを聞いてみた。正国とは割りと話すし、はっきりしていて話しやすい。
「正国は、主のこと冷たいとか、距離があるとか思わない?」
「俺は、戦にいくらかかるとか、俺たちを食わせんのにいくらかかるとか、偉い奴と話し合いとか好きじゃない。主はそれやって、飯も奢ってくれる。いい奴だろ。別に話すのに距離が問題になったことはねぇ」
1875和泉守に指摘されて、反省したんだ。確かにオレは主で頭がいっぱいだった。
とりあえずまずは練度を上げる。それから交友関係を広げる。みんなが主をどう思ってるのか知りたいし。
ぼんやり主にも、なんか聞いてみようかな……。
そんなことを思いながら、戦闘は今までより慎重に、仲間とは積極的にくだらない話をしながら日々を過ごした。
風呂でいっしょになった正国に、主のことを聞いてみた。正国とは割りと話すし、はっきりしていて話しやすい。
「正国は、主のこと冷たいとか、距離があるとか思わない?」
「俺は、戦にいくらかかるとか、俺たちを食わせんのにいくらかかるとか、偉い奴と話し合いとか好きじゃない。主はそれやって、飯も奢ってくれる。いい奴だろ。別に話すのに距離が問題になったことはねぇ」
ふじたに
PROGRESS猫と怪物 8の表 笹さに♂猫と怪物 8の表 笹貫に直に会って触れてみた効果はすごくて、読書も仕事も捗った。会わないと決めたのは自分だし、もう怪我なんてしてほしくないから、またしばらくは会えないほうがいい。そう頭では理解しているのに、彼がすぐそばにいた日のことを何度も思い返してしまう。
研修のものがいないときは、基本的に蜂須賀が近侍を兼ねている。とはいえ蜂須賀は忙しいので、簡易版と言うべきだろうか。起こしてもらって、朝の支度はひとりでして、戻ると食事があるのでそれを食べ、器を厨に返してから執務室へ行く。猫のところはいっしょに行ってくれて、昼食は自室で取り、東屋へは執務室の誰かがついてきてくれる。蜂須賀に余裕があるときは内番を見に行ったり、私の仕事に余裕があるときは誰かを護衛に立てて演練へ。いっしょに猫に行って風呂に入ったら、部屋に食事を運んでくれて終わり。簡略化しても蜂須賀は残業をしている気配なので、私としてはもっとひとりでもいいと思っているのだが、本丸初期の本当に手が足りていないときに、私が不意に湧いたあやかしと遭遇してしまって以来、蜂須賀は常についていられる近侍に向いているものを見つけるのに熱心だ。
2423研修のものがいないときは、基本的に蜂須賀が近侍を兼ねている。とはいえ蜂須賀は忙しいので、簡易版と言うべきだろうか。起こしてもらって、朝の支度はひとりでして、戻ると食事があるのでそれを食べ、器を厨に返してから執務室へ行く。猫のところはいっしょに行ってくれて、昼食は自室で取り、東屋へは執務室の誰かがついてきてくれる。蜂須賀に余裕があるときは内番を見に行ったり、私の仕事に余裕があるときは誰かを護衛に立てて演練へ。いっしょに猫に行って風呂に入ったら、部屋に食事を運んでくれて終わり。簡略化しても蜂須賀は残業をしている気配なので、私としてはもっとひとりでもいいと思っているのだが、本丸初期の本当に手が足りていないときに、私が不意に湧いたあやかしと遭遇してしまって以来、蜂須賀は常についていられる近侍に向いているものを見つけるのに熱心だ。
ふじたに
PROGRESS猫と怪物 7の表 笹さに♂猫と怪物 7の表 笹貫と会わなくなってどのくらいだろうか。モニターの中で動き回る姿を見ると、元気にしているみたいで満足した。報告書にはあいかわらずかかり気味と書かれることが多いが、皆と仲良くやっているようだ。内番の時はそちらに行かないように気をつけている。蜂須賀は口にはしないが、私が記憶を失っている間の世話を笹貫に任せていることは知っている。自分では読んでいない古い御伽話が、少しずつ先に進んでいるからだ。自分の意識がない間に別の自分が笹貫と仲良くしているのかと考えて、喉になにかつかえたような心地だった。やめさせたくはあったが、他のものにかける迷惑を思うと言い出せなかった。
ある日笹貫が、初めて重傷を負って帰ってきた。彼の戦闘スタイルでは、いつかは起こるだろうと思っていたことだ。それでも聞いた途端体が冷たくなり、拍動が跳ね踊った。
1616ある日笹貫が、初めて重傷を負って帰ってきた。彼の戦闘スタイルでは、いつかは起こるだろうと思っていたことだ。それでも聞いた途端体が冷たくなり、拍動が跳ね踊った。
ふじたに
PROGRESS猫と怪物 6の裏 笹さに♂猫と怪物 6の裏 主はちゃんと煙草を買いに連れ行ってくれた。オレのためにたくさん煙草を買って、ライターも買ってくれようとしたけど、それは断った。まだ初心者だし、こだわりができて大事にする自信が持ててからでいいかなって。煙草が吸える喫茶店を教えてもらって、そこで全種類試した。煙草にまつわる話は主を傷つけないのか、現世にいた時の話も少ししてくれた。オレはちゃんと主が直感で選んだ一箱を当てられたし、それはちゃんとオレの好みだった。
主とはそれから何度も出かけた。演練はみんなもいっしょだけど、会議とか政府の集まりにはふたりで行った。会議とかの時も、主はお茶に誘ってくれた。
「みんなには内緒ですよ」
そういう時の笑顔はとびっきりかわいかった。
2235主とはそれから何度も出かけた。演練はみんなもいっしょだけど、会議とか政府の集まりにはふたりで行った。会議とかの時も、主はお茶に誘ってくれた。
「みんなには内緒ですよ」
そういう時の笑顔はとびっきりかわいかった。
ふじたに
PROGRESS猫と怪物 5の裏 笹さに♂猫と怪物 5の裏 スマホが振動する音で目が覚めた。
主を確認すると、穏やかな寝息が聞こえる。音を切っておいて正解だった。
そっと部屋を出て、自室で身支度を整えて食堂に向かう。
「おはよう」
「おはよ」
先に食べ始めていた蜂須賀と挨拶を交わしてから厨へ。朝餉の盆を受け取って蜂須賀の元に戻った。今日は白い魚の煮付け。
「君が思わせぶりなメールをくれたから、気になって早く起きてしまったよ」
いつもオレより先に来ている蜂須賀の早くは、いったい何時なんだろう。
味噌汁をすすってから、頭の中で昨日のことを整理する。味噌汁の具はわかめとお麩。廊下は寒かったから、お腹が温まる。
「たくさんは聞けなかったんだ。一個だけ、現世とは一切連絡取ってないってことがわかったのが重要だったかな。現世で使ってた連絡手段は全部不通にして、ここに来てから新しいものを用意したって言ってた。もし現世の人が政府に連絡してきたら繋がるかもしれないけど、それは絶対ないって思ってるみたいだった。それで、この話は蜂須賀にしかしちゃダメだって」
11017主を確認すると、穏やかな寝息が聞こえる。音を切っておいて正解だった。
そっと部屋を出て、自室で身支度を整えて食堂に向かう。
「おはよう」
「おはよ」
先に食べ始めていた蜂須賀と挨拶を交わしてから厨へ。朝餉の盆を受け取って蜂須賀の元に戻った。今日は白い魚の煮付け。
「君が思わせぶりなメールをくれたから、気になって早く起きてしまったよ」
いつもオレより先に来ている蜂須賀の早くは、いったい何時なんだろう。
味噌汁をすすってから、頭の中で昨日のことを整理する。味噌汁の具はわかめとお麩。廊下は寒かったから、お腹が温まる。
「たくさんは聞けなかったんだ。一個だけ、現世とは一切連絡取ってないってことがわかったのが重要だったかな。現世で使ってた連絡手段は全部不通にして、ここに来てから新しいものを用意したって言ってた。もし現世の人が政府に連絡してきたら繋がるかもしれないけど、それは絶対ないって思ってるみたいだった。それで、この話は蜂須賀にしかしちゃダメだって」
ふじたに
PROGRESS猫と怪物 4の裏 笹さに♂猫と怪物 4の裏 結局主の隣で眠りこけてしまって、スマホのアラームの音で目が覚めた。主の部屋に居続けとなることが決まった時に、切っておくべきだった。慌てるとうまく止められない。主がうっすら目を開けるのが視界の端に映った。
「ごめんね、起こしちゃったね。オレは仕事だから行くけど、主はまだ寝てていいよ。あとで起こしに来るね」
触ったりしたら余計起こしてしまいそうで、囁くようにそれだけ言って部屋を出た。とても眠そうな顔をしていたし、そのままもう一度寝てくれるといいな。
自分の部屋に寄って身支度を済ませてから食堂へ行くと、蜂須賀が食事を始めていた。厨に言って自分の分の朝餉を受け取り、向かいに座る。
「おはよ」
「おはよう、どうだった?」
16807「ごめんね、起こしちゃったね。オレは仕事だから行くけど、主はまだ寝てていいよ。あとで起こしに来るね」
触ったりしたら余計起こしてしまいそうで、囁くようにそれだけ言って部屋を出た。とても眠そうな顔をしていたし、そのままもう一度寝てくれるといいな。
自分の部屋に寄って身支度を済ませてから食堂へ行くと、蜂須賀が食事を始めていた。厨に言って自分の分の朝餉を受け取り、向かいに座る。
「おはよ」
「おはよう、どうだった?」
ふじたに
PROGRESS猫と怪物 3の裏 笹さに♂猫と怪物 3の裏 早朝起床、身支度をして、蜂須賀と朝食を取りながら打ち合わせ、出陣メンバーと遠征メンバーの確認と告知。猫の餌やり。
「今日は予想通りなら、執務はあまり進まないだろう。仕事を進めるため、ではなく体調を崩さないために、いつもと同じ行動を取らせる、というのが目的になる。仕事は優秀な執務員に任せるつもりでいてくれ。とはいえ本当に今日がそうだという確証がないので、予定自体はいつも通り組もう」
鮭をほぐしながら、蜂須賀が言っていた。
昨日散々脅かされたし、神経を研ぎ澄まして主の部屋に入ると、電気はついたままで、主は起きていた。布団の上にうずくまって本を読んでいる。
しゃがんで覗きこんだ顔は、いつも以上に真っ白で、目の下には濃く隈がある。主はおはようございます、と言ったけれど、本から顔を上げなかった。昨日の執務に集中していた時みたいだ。
15219「今日は予想通りなら、執務はあまり進まないだろう。仕事を進めるため、ではなく体調を崩さないために、いつもと同じ行動を取らせる、というのが目的になる。仕事は優秀な執務員に任せるつもりでいてくれ。とはいえ本当に今日がそうだという確証がないので、予定自体はいつも通り組もう」
鮭をほぐしながら、蜂須賀が言っていた。
昨日散々脅かされたし、神経を研ぎ澄まして主の部屋に入ると、電気はついたままで、主は起きていた。布団の上にうずくまって本を読んでいる。
しゃがんで覗きこんだ顔は、いつも以上に真っ白で、目の下には濃く隈がある。主はおはようございます、と言ったけれど、本から顔を上げなかった。昨日の執務に集中していた時みたいだ。
ふじたに
PROGRESS猫と怪物 2の裏 笹さに♂猫と怪物 2の裏 二日目の朝は早かった。朝は弱いほうじゃないから平気。身支度して執務室に行くと、蜂須賀がもう待っていて、食堂に案内された。食事をしながら今日の動きについて知らされる。昨日はしなかった、出陣と遠征のシフト確認、告知、猫の朝ご飯と主の朝のお世話が発生した。あと今日は急に書類仕事が増えたから、主はおそらく執務室に釘付けになるだろうという予想。そういう時は集中を切らさないように、話しかけるのは少なく、時々飲み物を所定の場所に置くこと。
厨で受け取った猫のご飯を持っていくと、猫の姿はなかった。昨日見たのと同じ場所に置く。近くにいるような気配はあったが、結局出てはこなかった。朝の喧騒が収まった頃に厨番のものが器は回収してくれるらしい。
10294厨で受け取った猫のご飯を持っていくと、猫の姿はなかった。昨日見たのと同じ場所に置く。近くにいるような気配はあったが、結局出てはこなかった。朝の喧騒が収まった頃に厨番のものが器は回収してくれるらしい。
ふじたに
PROGRESS猫と怪物 1の裏 笹さに♂猫と怪物 1の裏 本丸に顕現した時、俺の前には三人いた。紫で金ピカのやつと、布被ったやつと、もうひとり。ほっそりした体に桔梗鼠の着物を纏って、すっきりしたきれいな顔に不思議な目の色をした、泣きぼくろのある青年。その青年だけが人間で、だからその人が自分の主なんだとわかった。
審神者だ近侍だと挨拶されて、布だけ残された。布は「粗相があったら済まない、俺が写しなばかりに」と断って、だだっ広い本丸を案内してくれた。厠、厨、厩、畑、鍛錬場、浴場、掃除用具置き場。庭の奥の木苺がなるところ。主が猫と仲良くするところ。主には近づきすぎないように、触らないように。主自身に関する質問はだめ。
他にも名前の書いてある食べ物には手を出さないとか、冷蔵庫には使っていいもののスペースがあるとか、夜食はなにがオススメだ、とか。
4559審神者だ近侍だと挨拶されて、布だけ残された。布は「粗相があったら済まない、俺が写しなばかりに」と断って、だだっ広い本丸を案内してくれた。厠、厨、厩、畑、鍛錬場、浴場、掃除用具置き場。庭の奥の木苺がなるところ。主が猫と仲良くするところ。主には近づきすぎないように、触らないように。主自身に関する質問はだめ。
他にも名前の書いてある食べ物には手を出さないとか、冷蔵庫には使っていいもののスペースがあるとか、夜食はなにがオススメだ、とか。
ふじたに
PROGRESS猫と怪物 6の表 笹さに♂猫と怪物 6の表 そんな風にトラブルから始まった笹貫の近侍研修だったが、穏やかに日は過ぎた。
週末には約束していた煙草を買いに出かけた。何種類か買ってみたが、笹貫は私が直感で買った一箱を選んだ。
大抵の日は書類に追われていたが、内番とのんびりする日や、演練に同行する機会も何度かあった。笹貫はもうカフェのメニューを見ても悩まず、最近は上から順に試しているらしい。鍛刀と刀装は、あまり向いていないことがわかった。会議や講習会にも同行してもらった。帰りにみんなには内緒でお茶を飲んで帰った。笹貫が雪が積もるところを見たい、雪が好きだ、とまるきり夏男の格好でいうので、年単位で気候をもう少し寒冷地に変更することにした。誰にも言ったことはないが私も雪は好きだし、短刀たちも喜ぶだろう。
1419週末には約束していた煙草を買いに出かけた。何種類か買ってみたが、笹貫は私が直感で買った一箱を選んだ。
大抵の日は書類に追われていたが、内番とのんびりする日や、演練に同行する機会も何度かあった。笹貫はもうカフェのメニューを見ても悩まず、最近は上から順に試しているらしい。鍛刀と刀装は、あまり向いていないことがわかった。会議や講習会にも同行してもらった。帰りにみんなには内緒でお茶を飲んで帰った。笹貫が雪が積もるところを見たい、雪が好きだ、とまるきり夏男の格好でいうので、年単位で気候をもう少し寒冷地に変更することにした。誰にも言ったことはないが私も雪は好きだし、短刀たちも喜ぶだろう。
米粒の箱庭
DOODLE😈先生シリーズ短編【初恋デビル】其の什三【毒蛇】🐍
蛇さんは兎ちゃん丸呑みしたい様です。
地味に【怪物の眼差し】👁️🗨️と繋がっています。
お肉は美味しく食べようね🐰❤️🔥(*´꒳`*)
pass🗝️【666】で御座います。 7
ふじたに
PROGRESS猫と怪物 5の表 笹さに♂猫と怪物 5の表 物音がしたような気がして目を覚ますと、部屋の空気が不思議と温かく感じられた。
胸に広がる寂寥感と、乾いた空虚、そして知らない本の記憶。それには覚えがある気がして、読書灯をつけると案の定だった。
古い短編集を読んでいたはずなのに、枕元には見たことのない本が置かれている。また自分は記憶のないまま歩き回っていたのだ。ただ不思議なのは、枕を挟んで両側に本があること、そして読みかけの本の記憶は四つあることだ。普段並行して本を読むことはない。
蜂須賀に聞いてみないといけない。いや、今の近侍は、記憶がない間に交代していなければ笹貫のはずだ。
彼の美しくも寂しげな瞳に、仕事もできない、社会性もない自分はどう映っただろう。
11760胸に広がる寂寥感と、乾いた空虚、そして知らない本の記憶。それには覚えがある気がして、読書灯をつけると案の定だった。
古い短編集を読んでいたはずなのに、枕元には見たことのない本が置かれている。また自分は記憶のないまま歩き回っていたのだ。ただ不思議なのは、枕を挟んで両側に本があること、そして読みかけの本の記憶は四つあることだ。普段並行して本を読むことはない。
蜂須賀に聞いてみないといけない。いや、今の近侍は、記憶がない間に交代していなければ笹貫のはずだ。
彼の美しくも寂しげな瞳に、仕事もできない、社会性もない自分はどう映っただろう。
ふじたに
PROGRESS猫と怪物 4の表 笹さに♂猫と怪物 4の表 耳慣れないアラームの音で目を開けると、笹貫がすぐ横にいた。
「ごめんね、起こしちゃったね。オレは仕事だから行くけど、主はまだ寝てていいよ。あとで起こしに来るね」
寝起きでもかっこいいんだな、なんて益体もないことを思っている間に、笹貫は部屋を出て行ったので、目を閉じるとまたすぐに眠りはやってきた。
笹貫の声に目を開けると、起きられるかどうか聞かれた。思ったより眠くはない。すごくよく寝た。
廊下を歩く間、笹貫はなぜか私の肩に手を乗せていたけれど、歩く邪魔にはならなかったのでそのままにしていた。洗顔歯磨きして着替え。笹貫がすぐに用意して、立っていたら着替えさせてくれた。寝癖を直してもらって部屋に戻る。
9079「ごめんね、起こしちゃったね。オレは仕事だから行くけど、主はまだ寝てていいよ。あとで起こしに来るね」
寝起きでもかっこいいんだな、なんて益体もないことを思っている間に、笹貫は部屋を出て行ったので、目を閉じるとまたすぐに眠りはやってきた。
笹貫の声に目を開けると、起きられるかどうか聞かれた。思ったより眠くはない。すごくよく寝た。
廊下を歩く間、笹貫はなぜか私の肩に手を乗せていたけれど、歩く邪魔にはならなかったのでそのままにしていた。洗顔歯磨きして着替え。笹貫がすぐに用意して、立っていたら着替えさせてくれた。寝癖を直してもらって部屋に戻る。
ふじたに
PROGRESS猫と怪物 3の表 笹さに♂猫と怪物 3の表 夢中で本を読んでいる間は、全てから離れていられる。祖父の怒鳴り声から、祖母が母を否定する声から、私を押しつけ合う両親の争う声から、普通の人間たらんと足掻いた記憶から、その道中で人を傷つけたことからも、傷つけられたことからも。
ノックの音が聞こえたので、返事をした。入ってきた二人におはようございます、と言う。目は文字に魅入られたままで。
「お休みになられていないのですか?」
後ろから入ってきた蜂須賀が言った。
「えっと、わかりません。たぶんそうです」
「まずは厠に行ってください。そのままお支度を。辞書は持っていけませんよ」
それは確かにそうだ。辞書はかさばるし、原書はサイズが大きい。辞書などは紙が薄くて持ち運ぶとぐにゃりとする。やはり持ち歩きには文庫が至高だ。それに仕事、仕事。本を読むためには仕事が大事。
11317ノックの音が聞こえたので、返事をした。入ってきた二人におはようございます、と言う。目は文字に魅入られたままで。
「お休みになられていないのですか?」
後ろから入ってきた蜂須賀が言った。
「えっと、わかりません。たぶんそうです」
「まずは厠に行ってください。そのままお支度を。辞書は持っていけませんよ」
それは確かにそうだ。辞書はかさばるし、原書はサイズが大きい。辞書などは紙が薄くて持ち運ぶとぐにゃりとする。やはり持ち歩きには文庫が至高だ。それに仕事、仕事。本を読むためには仕事が大事。
ふじたに
PROGRESS猫と怪物 2の表 笹さに♂猫と怪物 2の表 笹貫が近侍の二日目。笹貫と蜂須賀が起こしに来てくれた。ノックでは起きられなくて、二人が部屋に入ってきて布団をはがされた。
「夜ふかしされたんですか?」
「してませんよ」
実際に昨日は早く寝ようとしたのだが、風呂場でのことを何度も思い出してしまって、眠れなかっただけなのだ。お試し近侍の間は、なるべく新しい長編は読まないようにしているし、新刊確認も控えめにしている。
笹貫に付き添われて洗顔、歯磨き。支度部屋で着替え。着替えは自分ですると言ったのに、手伝われた。笹貫の指が肌をかすめると、ドキリとする。
急かして支度を終え、部屋に戻ると蜂須賀が食事を運んでおいてくれた。一人で部屋に入り、布団があった場所で食事を取る。布団の上で取るときもあるけれど、今日は蜂須賀が畳んだのだろう。夕餉はだいたい布団の上で取る。蜂須賀はそれを快くは思っていないが、長年の失敗や妥協を経て何も言わなくなった。私の部屋は8畳ほどの洋間で、この部屋だけ襖ではなく外開きのドアがついている。これは越してきたときにこの部屋だけ改装してもらったからだ。窓はなく、ドア以外の壁面は本棚にしてある。工事人と蜂須賀の懇願で、換気口とエアコンはつけた。買ってすぐにいじったのは自分の部屋と、各部屋の畳替えとエアコンの設置だった。襖と障子は蜂須賀と私でちまちまと貼っていった。そうなるだろうな、と思ってはいたが、本は本棚には入り切らなくて床に積まれている。いずれ飽和する前に、万屋が古本買取のサービスを行っているか調べなければ、と思ってからもう何年も経つ。ドアから布団に続く細い通路を設けてあり、布団の横には蜂須賀が跪坐できる分だけのスペースがある。
9075「夜ふかしされたんですか?」
「してませんよ」
実際に昨日は早く寝ようとしたのだが、風呂場でのことを何度も思い出してしまって、眠れなかっただけなのだ。お試し近侍の間は、なるべく新しい長編は読まないようにしているし、新刊確認も控えめにしている。
笹貫に付き添われて洗顔、歯磨き。支度部屋で着替え。着替えは自分ですると言ったのに、手伝われた。笹貫の指が肌をかすめると、ドキリとする。
急かして支度を終え、部屋に戻ると蜂須賀が食事を運んでおいてくれた。一人で部屋に入り、布団があった場所で食事を取る。布団の上で取るときもあるけれど、今日は蜂須賀が畳んだのだろう。夕餉はだいたい布団の上で取る。蜂須賀はそれを快くは思っていないが、長年の失敗や妥協を経て何も言わなくなった。私の部屋は8畳ほどの洋間で、この部屋だけ襖ではなく外開きのドアがついている。これは越してきたときにこの部屋だけ改装してもらったからだ。窓はなく、ドア以外の壁面は本棚にしてある。工事人と蜂須賀の懇願で、換気口とエアコンはつけた。買ってすぐにいじったのは自分の部屋と、各部屋の畳替えとエアコンの設置だった。襖と障子は蜂須賀と私でちまちまと貼っていった。そうなるだろうな、と思ってはいたが、本は本棚には入り切らなくて床に積まれている。いずれ飽和する前に、万屋が古本買取のサービスを行っているか調べなければ、と思ってからもう何年も経つ。ドアから布団に続く細い通路を設けてあり、布団の横には蜂須賀が跪坐できる分だけのスペースがある。