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    ヨモギ

    DONE『風と来たりし猫の恋』展示小説その2です!パスワードは『旅日記に君をのせて』でした!
    グラいちオムニバス第弐話 歯車 日が昇る前から出勤して、サービス残業は当たり前。社食は硬いパンと薄いスープ。作業員には何を作っているのか知らせず、就職したら最後、骨になるまで利用される。そんな悪しき噂が後を絶たない工場、ブラック工場にグラサン風来坊は来ていた。外見から黒々としていて、名実ともにブラック工場であることを隠そうともしていなかった。あまりの黒さにグラサン風来坊―カラ松はサングラスを外した。一筋の月明りだけが彼を照らしていた。幸い警備は薄いようで、まるで駅に入るみたいに自然と建物の中に入ることができた。建物の中は暗かった。機械の錆と油の臭いが鼻につく。入ってすぐに案内図があったが、真っ黒で何も読めなかった。他の看板も黒く、手探りで向かうしかなさそうだ。工場の中は思ったよりも広かった。地下に通じる階段を下りる。臭いがさらに強くなった。あまりの異臭にカラ松は口元をいつもマントのようになびかせている布で覆った。暗闇にようやく目が慣れてきた。相変わらず道案内の役割を果たすはずの看板は、真っ黒。辺りを見回すと、ほんのりと明かりが漏れ出している部屋があった。部屋のプレートも真っ黒で読めない。思い切って扉を開けてみるとそこはこれまでカラ松が見てきたブラック工場とは似つかわしくない光景が溢れていた。まずはその明るさだ。おそらく一般的な照明のそれと変わりないのだろうが、目が暗闇に慣れたせいでかなり眩しい。カラ松はサングラスをかけた。やはり机やソファといった家具は黒いが、所々にフィギュアや金庫で別の色があるのを見つけた。そして部屋の奥、人影があった。カラ松は声をかける。
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