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    菅野

    michi2_

    DONE服部悪夢合同誌『on the bubble』に載せたおはなしの再録です。
    服部と菅野班。メインスト前提のためseason4までのネタバレを含みます。

    この耀玲は服部が四十になる年のいい夫婦の日に入籍する、という設定ありきで書きました。これを知った上で読むと腑に落ちる部分があるかもしれません。
    いつか美しくなる未来にゴォオ、と巨大な動物の唸り声のような音を上げて、古いエアコンから吐き出された温風が首もとを撫でる。さりさりと風に揺られる毛先がくすぐったくて、その感触を知覚したと同時に、意識がひと息に浅瀬まで引き上げられた。次いで耳が拾ったのは、誰かのデカいいびき。それから、うすい仕切り越しの喧騒、肉の焼ける音。香ばしい匂いと、煙たさ。壁に寄り掛かった身体はそのままに薄目を開ける。が、目の前がぐるりと回ったような不快感に、開けた目はすぐに閉じる羽目になった。
    (いッ……た)
    磨かれたテーブルに反射した光に目を貫かれたかと思った。眉間とこめかみが軋むように痛む。
    いったい何がどうして今こうなっているのか。記憶を遡ろうとしても、熱に浮かされたように頭がぐらぐらするばかりでまったく要領を得ない。少なくとも視覚以外から拾える情報としては、ここは平和な焼肉屋であり、なにか危機的な状況であるわけではなさそうだということくらいだが。
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