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    虫歯

    yk_f02

    TRAINING虫歯になるミノアギ「虫歯になったかもしれねえ」
     昼飯を済ませて店を出たあと、口に違和感を覚えて思わず呟いたのが失敗だった。
    「痛むか?」
    隣の加納が覗き込んできたのを、あえて無視した。あえて、と言うより弱みに関心を持たれるのが癪だった。何でもないという顔で(実際はしくしくと鬱陶しく痛むが)歩き出そうとした。
    「私に任せろ」
     一歩踏み出した途端、隙だらけの胸ぐらを掴まれていた。加納の手が掴んだと頭が理解するより先に体が反射で反応した。何度も組み合ってきた相手の動きに対応して、腰だめで身構える、何をと訊く間もない。
    「食いしばれ、鷹山」
     冷静な加納の声に顎が力む、やはり何をと問う間はなかった。空を切る音と共に、ガードし損ねた下顎に凄まじい衝撃が走った。
     激痛と、構えきれていなかった足が浮く感覚に襲われる。
    「…アッ…ガ…ッ!…!?」
     加納の強烈なアッパーカットをもろに食らって、俺は路上にケツから転がった。忌まわしくも懐かしい、口から頬を切り裂かれた時のショックが一瞬フラッシュバックして、顔を押さえる。案の定、片頬の傷跡はわずかに開き、血が溢れていた。だが、すぐにそれだけじゃないと気づく。口の奥も出 662