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    解像度

    Asahikawa_kamo

    PASTリプきたセリフで一コマ描く のタグで葛餅さん(@.kzmt1110)から頂いたセリフ「きみが見る景色を見てみたかった」で書きました。
    本当の兄弟になりたかった🥂✨の話です。だいぶ解像度の悪いホスクラ描写、モブ姫が出てきます。
     醒めきらない頭が、網膜に光を取り込む。ああ朝かと思った不破の視界には、立ち昇った太陽が映り込んでいた。眩しさに目を細めた彼の隣で、わあと小さな声を上げる女性の声が耳へと滑り込んでくる。

    「ああ、もう朝なんだ。眩しいね、ミナト」
    「……そうだね」

     朝六時過ぎの歓楽街はひどくさみしい。闇夜の中で浮かび上がる不夜城のように、あちこちで誰かの声がしたり、ネオンがうるさく輝いているのが不破の日常であった。誰かの顔色を伺うのは特段苦だと思ったことはなかたが、時折頭の裏がぼうとすることはある。ただそれさえ不破は隠すことが上手く、夜の仕事中にそれが誰かにバレることは一度もなかった。
     既に何件かアフターと称してバーを梯子した後だからか、隣にいた姫は少しばかり酔いが回っているようで口調がふわふわと怪しい。丁度道端を走っていたタクシーを停めて彼女を乗せると、姫は不破の胸ポケットへ紙切れをするりと滑り込ませてからぽんぽんと叩いた。確認せずとも、それが無言のアフター代のつもりであることは何となく察する。おそらく黙ってバーの料金を払っていた不破へのお返しのつもりなのだろう。奢りのつもりだったが、ここで今変に押し問答しても、と一瞬過ぎった不破へ笑いかけた彼女は、ひらりと手を振ってタクシーへと乗り込んで行ってしまった。どこか敵わないなと思ったのは、彼女がもう古い常連客だからかもしれない。
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