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    ytd524

    DONE五伏版ワンドロワンライ 第44回「成長」

    ※33歳×20歳
    ※事変はなかった世界
    ※なんちゃってムーディ(全年齢)
    ※伏の喫煙描写があります(常習ではないです)
    初めてそれを口にした時、口いっぱいに広がる煙に思わず咳き込んでしまったことを覚えている。
     階段の隅にある狭い喫煙所、勧めてきた相手はカラカラと笑って俺の背中をドンドンと叩き『吸い込むなよ!』と声を上げた。
     舌の上に広がる苦味も、喉の奥に引っかかりそうな煙も、どれも違和感が強すぎて、これは俺には一生縁がないものだなと、まだ火のついていたそれをそいつに押し付けた。

    『これで伏黒も大人だな』

     うるせぇ、こんなもん吸わなくったって大人は大人だろうが。そう思いながら咳き込み続ける俺後ろで、相変わらずその男は笑い声をあげ続けている。
     十二月二十二日。仲間内の中で最も遅くに迎えることとなった、二十歳の誕生日当日であった。



     ふと、窓の外の景色が見たくなって、俺は温まった布団の下から体を這いずり出した。暖房の効いた部屋であってもさすがに寒さを覚え、床に放られたクシャクシャのシャツを肩に羽織る。そうして壁際に備え付けられているデスクの前に座り、真っ暗な窓の外へと視線を向けた。
     部屋が明るいせいで反射してしまい、顔を近づけなければ外の光景を伺うことはできない。加えてビジネスホテルからの 3542