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    Rhea_season

    DONEディミトリが眷属となった世界線のディミレトです。
    現代を生きています。
    とても長生きをしてきたので、色々雰囲気違う…ということにしてください。
    前後編予定なので、そのうち後編もあると思います。
    (後編はR-18予定なので、その際は色々また設定を変更します)
    全編はR-18ではありませんが軽く接触はしているのでそういうのがNGの方、BLが無理というかたはお気をつけください。
     □

     人混みのなかで、ふいに視界がにじんだ。
     疲労というよりは、おそらくこの暑さのせいだろう。
     じっとりとまとわりつく空気に呼吸さえ重たくなり、額に滲む汗を拭うことさえ億劫に思える。

     暑さに関しては、いつまでたっても好きにはなれなかった。ファーガスで過ごした日々から、もうずいぶんと時が経つ。あの厳しい冬を越えてきたファーガスの記憶が、肌の奥に残っているのだろうか。今は穏やかで温暖な土地に身を置き、季節の移ろいもやわらかく感じるようになったというのに、こと暑さだけは、昔と変わらず身体に馴染まない。むしろ、記憶にある冷たい風や雪の匂いが、恋しくなることさえある。けれど、そんな苦手な暑さのなかでも、こうして隣に彼がいてくれるだけで、心は静かに落ち着いていくから不思議だ。
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