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    はこ

    hamco1228

    DONEサガオンリーWebイベント「Parallel Gate」様での展示用作品。リブロフのハリエレ。むしろ、ハリ姫を応援したいエレンの話かも。
    諸王の都関係の話は過去にもいろいろなパターンで書いてますが、今回はこういう味付けになりました。ここ一年くらいほとんど文章書かない生活をしていたので、リハビリも兼ねて。
    2024/5/11~5/12「Parallel Gate」限定展示 * * *

    「ね、あたし悪い酔い方しなくなったでしょ」
     ――からん。
     エレンが左隣へ目くばせしたのと同時に、グラスの中で氷の転がる音が響いた。偶然にしては、まあまあ洒落ている。
     氷は貴重品だ。安定して提供できる飲食店は少ない。商都リブロフのメインストリートに連なる店の中でも、このバーは高級店の部類に入る。席は七、八割ほども埋まっているのに、溶けかけの氷がグラスの中で音を立てるのさえ、よく聞こえるほど静か。普段なら滅多に足を踏み入れることのないような場所ではある。こんな日くらいは特別にいいだろうと、左隣の男に許してもらって今夜はここにいるのだった。
     カウンター席に陣取ってから、かれこれ二時間くらいになるだろうか。そろそろ就寝時刻を気にしなければならない――何せ隣の男はこう見えて、生活リズムにはうるさいのだ、少なくともエレンに対しては。その証拠に、ほら。エレンよりも大きめのグラスを傾けつつ、にこりともしないでこちらへ横目を向けてくる。
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