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    iduha_dkz

    DONE綾と桃吾の高校での卒業式の話です。
    前半は1年時、後半は3年時。
    3年一緒に過ごすうちに色々理解して仲良くなり情も湧いたけど、それでも桃吾の一番は円なので綾の一番にはなれないことを最後に突きつける、一番のために他の大事なもの切る痛みを伴う別れが100通り見たくて書きました。
    最後の日を迎えて卒業式で久しぶりに会った二つ上の先輩は、綾瀬川と桃吾が二人で花束を持ってきたのを見て、はじめは落第点しか取れていなかった学生が百点満点を取った時の教師のような顔で微笑んだ。
    「二人一緒に来るとは思ってなかった」
    「元主将を心配させるなって、二年の先輩たちが二人で行けゆうてくれはったんです」
    「桃吾、それ言っちゃったら不安にさせるやつじゃない?」
    「大丈夫だよ綾瀬川。雛がどうしても俺に渡したかったって言えない照れ隠しなのはわかってるから」
    「主将ぉ!」
    「あ、ならよかったです」
    抗議の声を出した桃吾を綾瀬川はまったく気遣わず「ほら渡すんでしょ」と花束を差し出すように促す。長持ちすることを考慮してドライフラワーで作られた花束を二人から受け取り、鮮やかな花束に一度視線を落とした後、彼は自分より身長の高い後輩二人を見上げた。
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    ミトコンドリア

    DONE『かくのみにありけるものを君も吾も千歳の如く頼みたりけり』

    相互の誕生日に捧げた👹🦊
    ▓隠し 待ちに待った夏祭りの日だってのに熱が出て、ミスタはひとり布団の中で不満げにグスグス鼻を啜っていた。
     昼には38度近かった熱も日が落ちるにつれて和らぎ、暇を持て余してウゴウゴと暴れる。少しダルい感じはあるが動けないほどではなかったので、夕食を持ってきたお手伝いの老婆に行ってもいいか訊いたのだが、案の定宥めすかされて畳の上に逆戻りである。
     壁掛け時計の針の音が畳に落ちる。ボーーン…と間延びした渦巻きリンの鈍い音が午前2時を告げた。全ての生き物が眠るこの時間を丑三つ時というのだと、ミスタは3歳のときに病気で死んだ祖父に教えられて知っていた。
     パチッと目を開けて、庭に面した障子をゆっくり開ける。冷たい沓脱石に縁側の下に隠しておいた草履を履いた足の裏をペタリとつけて、十数えた。それで誰も起きてこないのを確認してからミスタは勢いよく走り出した。裏の勝手口から猛然と家を出て、田舎のだだっ広い畦道を突き進む。真夏の生ぬるい風が火照った頰を撫でた。高い空に幾万の星がチカチカしている。蛙と虫の鳴く声を置き去りにして、珍しい鬼を祀っている神社の長い石段を駆け上がった。人々の喧騒と馬鹿囃子が近くなる。
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