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    兵士

    きたまお

    TRAININGただそこにいた兵士の話その男が動くたびに、鎖がじゃらじゃらと鳴った。左の手首と両足首が太い鎖でつながれている。男には右腕がなかった。巨人に食われたのだと噂で聞いた。
     調査兵団第十三代団長エルヴィン・スミス、その人だ。
     兵士は憲兵団に所属していた。巨人がいる壁外へ行こうとする調査兵団のやつらは彼には理解できなかった。なにを好き好んでわざわざ食われに行くというのだろう。訓練兵団同期で調査兵団へ進んだものは、一握りの変わり者と、成績が悪くて憲兵団に入れず、駐屯兵団に入るためのくじ引きに負けたものだけだった。そのほとんどがもう死んでいる。五年前のウォール・マリア崩壊後の奪還作戦、その後のマリアルート確立のための壁外調査で命を落とした。
    「処刑台に連れて行け」
     宰相の言葉でエルヴィン・スミスの身体が、兵士の上司の手で引き起こされる。兵士は上司に手を貸すために近くに寄った。エルヴィン・スミスの顔が見えた。今、死刑を宣告された男は、薄ら笑いを浮かべていた。拷問で左目をつぶされ、あごにも無数の傷を負った男が笑っている。兵士はギョッとして動きを止めた。死の恐怖のあまり、この男は頭がおかしくなってしまったのだろうか。
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