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    いるか

    kotyou

    PROGRESS卒業式の日に告白したいと思っている出久と、そんな出久の気持ちを察しているかっちゃんのところに、未来の出久がやってくる話。の前編です。死ネタや、後編ではR18シーンもありますのでご注意ください。webオンリーにて全編展示予定。お楽しみいただけましたら幸いです。
    卒業式の日、桜の木の下で【出勝】前編ヒーローコスチュームのマスクを外した途端に、凍てつく大気に鼻の奥がツンと痛んだ。日はすっかり暮れ落ちて、お腹はいつからかぐぅぐぅと煩く鳴っている。報告書は、チームアップを主導した事務所がまとめてやってくれると言っていた。つまり、この後の用事は、何も無い。たぶん、たった今「寒い!」と言って、出久からマントを強奪した、勝己にも。
    「ねぇ、かっちゃん。良かったらさ、ラーメンでも食べに行かない?」
    「ぁ゙あ゙?」
    「いや、だって、寒いし、ね。温かいものが食べたいだろ。着替えて、寮に帰って、作るっていうのも大変だし。もうお腹ペコペコだし。この近くに、辛くて美味しいラーメン屋があるって教えてもらったし」
    不機嫌に眉を寄せる勝己が、ハッキリと断ってくる前にと、出久は慌てて言葉を重ねる。教えてもらった、なんて口にしてしまったのは、失敗だったかもしれない。勝己を誘うために事前に情報を仕入れていたのが、バレてしまうかもしれない。
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    なかりせ

    DONE一人一人称、K富の人間が書きましたが恋愛描写なし、診療所メンツとほのぼのが主です。
    ちょっと怪談チックなお話が書きたくてタグをお借りします。季節外れですが夏のお話です。恐怖・暴力描写はありません。
    一人先生は幽霊や魂をどのように切り分けて接することができるのだろう……。引っ張られそうになった時に踏みとどまれるのは、帰る場所・呼ぶ人がいるからってことが書きたかった。
    炎と息吹―200X年 8月XX日 
    とても暑い日だった。オレはたまたま行きあった患者を治療し、病院から帰るところだった。

    ***

    「では、また後日伺いますので」

    一人は一礼して病室を出る。踏みしめるリノリウムの床はひんやりとした空気を抱えており、外のじりじりとした熱射もここまでは届かない。夏の長い日がようやく傾きだし、まだ暑さが残っているだろうビル街を歩くと思うと憂鬱であったが、目の前で倒れた急病人を助けられたことで一人の心は風が通り抜けるようにすっきりとしていた。

    N県からふたつほど県境を越えたところにあるこの都市に来たのは、以前手当をした患者の経過を見るためであった。その用事を終えたときはまだ昼前であったが、帰路に着こうと大通りに出たところで急病人に行きあったのだった。
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