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    書き初め

    hiz_tb

    DOODLE2021年かどかじ書き初め!
    丑年といえば、なお話し。些か不穏
    「今年って丑年なんですね」

     年が明けた日の昼間、何をするでもなくテレビを観ていた梶がポツリと呟いた。
     その声に反応して、門倉もテレビの方へ顔を向ける。

    「あぁ……そうみたいやねぇ」

     梶が観ているのはバラエティ番組の正月特番なのだろう。テレビ画面には、最近売れ出したばかりの芸人が今年の干支である牛の着ぐるみを着ておどけている姿が映っていた。
     干支などさして気にした事も無い門倉は適当に返事をしたが、梶はとてもバラエティ番組を観ているとは思えない神妙な表情でテレビ画面を見つめている。
     しかしその目に芸人の姿は写っておらず、門倉の声も届いてはいない。
     今の梶が見ているのは、彼の脳裏に焼き付いて離れない……青銅製の雄牛の姿だった。
     どれだけ経とうが忘れられない、忘れてはいけない記憶。自らが焼かれた熱、自らで火を着けた熱。
     鳴けなくなった雄牛の中から引きずり出された、もう動かない筈の巨体が恨めしそうに此方を見る。
     梶を見据えた巨体はゆっくりと口を開き、そしてーー

    「梶?」
    「……ッ!」

     そこから発せられるであろう呪詛を聞く前に、梶の意識は門倉の声によって現実へ引き戻さ 1290

    nnmy_02

    DONEろむじょで書き初めしました。
    砂糖と読点ましましです。
    “あけましておめでとう”

    朝に送ったメッセージに返事が来たのは、もう日付も変わろうかという頃だった。
    続いた謝罪の言葉に返信をしながら、頬が少し緩むのが自分でも分かった。

    “仕事で近くまで来てたんだが、今、外出られるか?”

    お疲れ、と打っている途中で送られてきた新しいメッセージを見て、一瞬固まる。
    しかしすぐに体は動き、上着を身に付けるのも忘れ、玄関の扉を開いた。
    すると少し離れた場所に、メッセージを送り合っていた相手が立っている。
    こちらに気付いて、少し照れくさそうに笑った。

    「寝るところだったのに悪ぃな。何となく、顔が見たくなってよ」
    「いや、俺も会いたいと思ってたから……」
    「そうか……あけましておめでとう。今年もよろしくな」
    「こちらこそ、よろしく」

    一度メッセージ上で行ったやりとりを繰り返す。
    それが何だかおかしくて、どちらともなく笑みが溢れてきた。

    「その、今日、よかったら、泊まってくか?」
    「あぁ、いや、明日も仕事でよ」
    「そっか……」

    そう思い通りには進まないか、と苦笑いをすると、あたたかい手が頬に触れる。

    「明日、仕事終わったら来てもいいか?」
    「っ! 650