saisai
DOODLEオルストss最終話オルさんのストへの呼び名ぶれぶれですが後ほど統一しますすみません…
『君の世界』最終話 オルステッドの視界が真っ白になり、ふわふわと身体が浮かんでいく。水の中から浮上するように、ゆっくりと、身体が上昇する。
鎧を着けているから水に浮かぶのはまずあり得ない。だからとても不思議な気分だった。
段々視界が明るくなってくる。鳥の囀りが聞こえる、風が鳴く声が聞こえる。オルステッドは誰に言われなくとも理解していた。もうすぐ自分は現実世界に帰るのだと。
世界のどこかにある、深い深い森の中。
青みを帯びた黒髪を腰まで伸ばし、青いローブに赤いマント、そして片手に杖を持った男が一人、歩いていた。
表情は虚ろで、どこに焦点を当てているのか分からない。そしてかつては美しかったであろうローブやマントもボロボロになり、顔は土気色に染まっていた。
3082鎧を着けているから水に浮かぶのはまずあり得ない。だからとても不思議な気分だった。
段々視界が明るくなってくる。鳥の囀りが聞こえる、風が鳴く声が聞こえる。オルステッドは誰に言われなくとも理解していた。もうすぐ自分は現実世界に帰るのだと。
世界のどこかにある、深い深い森の中。
青みを帯びた黒髪を腰まで伸ばし、青いローブに赤いマント、そして片手に杖を持った男が一人、歩いていた。
表情は虚ろで、どこに焦点を当てているのか分からない。そしてかつては美しかったであろうローブやマントもボロボロになり、顔は土気色に染まっていた。
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DOODLEオルストss8話まだ続きます。
君の世界『最下層』 「俺なんて、初めから生まれなければよかったのに」
「俺はあいつと一緒に居たいだけだったのに、どうしてこんなことを」
「……くるしい、死にたい」
あぁ、なんて悲しい声なのだろう。声の主はどれ程の苦しみを……。
目が覚める。視界は真っ暗闇。
一歩先も、何もかも見えず、真っ暗だった。
その中で声だけが聞こえる。後悔と絶望、ずっとずっと繰り返される嘆き。
私は、生きている安堵よりも、その声の主が気になって仕方がなかった。
「ストレイボウ、何処だ……」
誰に教えられるわけでもなく分かっていた。声の主はストレイボウだと。あいつはこの空間の何処かに居ると。
手を前に出し、障害物が無いか確認しながらゆっくりと歩み出す。
1793「俺はあいつと一緒に居たいだけだったのに、どうしてこんなことを」
「……くるしい、死にたい」
あぁ、なんて悲しい声なのだろう。声の主はどれ程の苦しみを……。
目が覚める。視界は真っ暗闇。
一歩先も、何もかも見えず、真っ暗だった。
その中で声だけが聞こえる。後悔と絶望、ずっとずっと繰り返される嘆き。
私は、生きている安堵よりも、その声の主が気になって仕方がなかった。
「ストレイボウ、何処だ……」
誰に教えられるわけでもなく分かっていた。声の主はストレイボウだと。あいつはこの空間の何処かに居ると。
手を前に出し、障害物が無いか確認しながらゆっくりと歩み出す。
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DOODLEオルストss7話君の世界『第5層』 落ちた先は、闇だった。
真っ暗闇、ではない。両手を広げ、仰向けになった時に見えた視界は、黒と血の色を混ぜた赤が渦巻いていた。何処かで見た景色だ。
その場から身体を起こしゆっくりと立ち上がると、べちゃ、と何かが地面に落ちた。
視線をそちらに向ける。すると、自分の背に粘ついた黒いものがへばりついていたらしく、辺り一面にそれらが地面に広がっていた。べたべたとした泥、と言えば良いのか。それは浅い沼のように、何もない空間に地平線まで広がっている。
「何だこれは、瘴気……? 酷い臭いだ」
つんとした感覚がする臭いがする。視界は薄い霧がかかっていて、それの臭いだろう。魔王山のものともまた違うが、少なくとも良い匂いとはとても言えない。
1363真っ暗闇、ではない。両手を広げ、仰向けになった時に見えた視界は、黒と血の色を混ぜた赤が渦巻いていた。何処かで見た景色だ。
その場から身体を起こしゆっくりと立ち上がると、べちゃ、と何かが地面に落ちた。
視線をそちらに向ける。すると、自分の背に粘ついた黒いものがへばりついていたらしく、辺り一面にそれらが地面に広がっていた。べたべたとした泥、と言えば良いのか。それは浅い沼のように、何もない空間に地平線まで広がっている。
「何だこれは、瘴気……? 酷い臭いだ」
つんとした感覚がする臭いがする。視界は薄い霧がかかっていて、それの臭いだろう。魔王山のものともまた違うが、少なくとも良い匂いとはとても言えない。
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DOODLE続きものの6話。オルスト完結したら支部に載せるかもです。
君の世界『第4層-2』 「さっきぶりだね、オル」
「君は、どうしてここに?」
小さなストレイボウは、つぶらな瞳をくりくりさせて私を見上げている。
「だって、このままじゃ全然先に進めなさそうだったから」
「あぁ、そうだな……。違う世界に何度も飛ばされて。でもここは同じ層なんだろ?」
「オルにしては察しが良いね」
ふんっ、と彼は腰に手を当て、胸を張る。
「私にしては、か……。そうかもしれないな」
「認めちゃうの!? そこはもっとさぁ、反応して欲しかったんだけど」
小さなストレイボウは、今度はむっとした表情でこちらを見つめる。ストレイボウは、幼い頃はこんなに表情豊かだったろうか?
うまく思い出せない。
「そういえば、君の事は何て呼べば良いだろうか」
2073「君は、どうしてここに?」
小さなストレイボウは、つぶらな瞳をくりくりさせて私を見上げている。
「だって、このままじゃ全然先に進めなさそうだったから」
「あぁ、そうだな……。違う世界に何度も飛ばされて。でもここは同じ層なんだろ?」
「オルにしては察しが良いね」
ふんっ、と彼は腰に手を当て、胸を張る。
「私にしては、か……。そうかもしれないな」
「認めちゃうの!? そこはもっとさぁ、反応して欲しかったんだけど」
小さなストレイボウは、今度はむっとした表情でこちらを見つめる。ストレイボウは、幼い頃はこんなに表情豊かだったろうか?
うまく思い出せない。
「そういえば、君の事は何て呼べば良いだろうか」
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DOODLEオルスト第5話です。タイトルをつけるとしたら『反転』かなぁ。
君の世界『第4層』 「……はっ!」
「魔王! 遂に追い詰めたぞ!」
木の根に底に呑み込まれた私は、視界が暗転してそのまま意識を失って。次に目が覚めた時には、禍々しい空とストレイボウが視界に入っていた。それに加えストレイボウの後ろには、沢山の城の兵士もいる。
「魔王め、この勇者ストレイボウが直接叩っ斬ってくれる!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、勇者……?」
私が魔王呼ばわりされるのはともかく、ストレイボウが勇者? 彼は私に向かって真っ直ぐ指を刺して、睨んでいる。それに強烈な違和感を与えるのはその見た目だった。いつものローブ姿ではなく、私がいつも身につけている鎧を纏っている。手に持っている物も、杖ではなく剣。まるで剣士だった。
2079「魔王! 遂に追い詰めたぞ!」
木の根に底に呑み込まれた私は、視界が暗転してそのまま意識を失って。次に目が覚めた時には、禍々しい空とストレイボウが視界に入っていた。それに加えストレイボウの後ろには、沢山の城の兵士もいる。
「魔王め、この勇者ストレイボウが直接叩っ斬ってくれる!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、勇者……?」
私が魔王呼ばわりされるのはともかく、ストレイボウが勇者? 彼は私に向かって真っ直ぐ指を刺して、睨んでいる。それに強烈な違和感を与えるのはその見た目だった。いつものローブ姿ではなく、私がいつも身につけている鎧を纏っている。手に持っている物も、杖ではなく剣。まるで剣士だった。
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DOODLE続きものの4話。まだまだ続くオルスト
君の世界『第3層-3』 ぽつぽつと点在する光を手掛かりに、私は暗闇の中を走り続ける。
どこまでもどこまでも続く一本道。いくら走っても行き止まりはなく、体力に自信がある自分でも息が荒くなってきた。
やがて走ることが出来なくなって、その場で息を整えていると、何処かでガリガリと音がする。ぶつぶつ呟く人の声と共に。
私は音の方へ足を向け、歩み始める。
暫く歩いていると、キノコの光が等間隔に並んでいることに気づいた。ガリガリ音が大きくなって、それと共に人の声も大きくなる。
「ここをこうして……あぁ違う。こっちの式が……あぁ! どうして上手くいかない!」
ぼんやりと光るキノコの中、ストレイボウが木の幹を削りながら、羽ペンで数式めいたものを書いていた。その木は大人一人を寝転ばせたくらいの太さがあり、枝と葉が洞窟全体を覆っている。光を遮っていたのは、全てこの木の仕業なのだろうか?
1249どこまでもどこまでも続く一本道。いくら走っても行き止まりはなく、体力に自信がある自分でも息が荒くなってきた。
やがて走ることが出来なくなって、その場で息を整えていると、何処かでガリガリと音がする。ぶつぶつ呟く人の声と共に。
私は音の方へ足を向け、歩み始める。
暫く歩いていると、キノコの光が等間隔に並んでいることに気づいた。ガリガリ音が大きくなって、それと共に人の声も大きくなる。
「ここをこうして……あぁ違う。こっちの式が……あぁ! どうして上手くいかない!」
ぼんやりと光るキノコの中、ストレイボウが木の幹を削りながら、羽ペンで数式めいたものを書いていた。その木は大人一人を寝転ばせたくらいの太さがあり、枝と葉が洞窟全体を覆っている。光を遮っていたのは、全てこの木の仕業なのだろうか?
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DOODLE3話です。オルスト君の世界『第3層-2』 「君も……ストレイボウ、なんだよな?」
「そうだよ。見ればわかるだろ」
目の前のストレイボウは、いつもは私より少し背が低いのに、背が高くて、ローブではなく暗い色のシャツとズボンを履いていた。相変わらず、すらっとした体型をしている。
彼の姿を見て、何となくだが、この世界の事が理解できてきた。
世界自体が、何層にも分かれていて、深淵に繋がる洞窟のように下に降りるしか道はない。そして、その層ごとに様々な姿や性格をしたストレイボウがいるようだ。
だが、下に行けば行くほど、現実世界のストレイボウとはかけ離れていく。特に性格が。
「ちょっと静かにしててくれないか、今数式を解いてる」
ストレイボウはそう言って、再び机に向うと羊皮紙に羽根ペンを走らせている。
1592「そうだよ。見ればわかるだろ」
目の前のストレイボウは、いつもは私より少し背が低いのに、背が高くて、ローブではなく暗い色のシャツとズボンを履いていた。相変わらず、すらっとした体型をしている。
彼の姿を見て、何となくだが、この世界の事が理解できてきた。
世界自体が、何層にも分かれていて、深淵に繋がる洞窟のように下に降りるしか道はない。そして、その層ごとに様々な姿や性格をしたストレイボウがいるようだ。
だが、下に行けば行くほど、現実世界のストレイボウとはかけ離れていく。特に性格が。
「ちょっと静かにしててくれないか、今数式を解いてる」
ストレイボウはそう言って、再び机に向うと羊皮紙に羽根ペンを走らせている。
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DOODLEオルストもどき続けられるだけ続きます。
君の世界『第2層〜第3層』 「ストレイボウ……なのか?」
「そうだよ。どこからどう見てもそうでしょ?」
その姿は幼く、声も高い。それに、小さな女の子が着るワンピースを着ている。
それでも斜に構えた態度や声音から、私はストレイボウだとすぐにわかった。長い付き合いだからこそ、だ。そうでなければ、幼い頃のストレイボウに似ている女の子、で終わってしまっていただろう。
彼は、幼い時は魔除けの為に女装をする事が多々あったのだ。
「ストレイボウ、ここはどこなんだ? それに君は……どうしてそんな姿に」
「そんなの見ればわかると思うけど。俺の世界だよ。全く、そんな事も理解できないの?」
はぁ、と彼は溜息をつく。頭が追いつかない。魔王山での出来事、小川に突き落とされた自分、そしてこの花畑と小さなストレイボウ。理解しろと言われても無理だ。
2230「そうだよ。どこからどう見てもそうでしょ?」
その姿は幼く、声も高い。それに、小さな女の子が着るワンピースを着ている。
それでも斜に構えた態度や声音から、私はストレイボウだとすぐにわかった。長い付き合いだからこそ、だ。そうでなければ、幼い頃のストレイボウに似ている女の子、で終わってしまっていただろう。
彼は、幼い時は魔除けの為に女装をする事が多々あったのだ。
「ストレイボウ、ここはどこなんだ? それに君は……どうしてそんな姿に」
「そんなの見ればわかると思うけど。俺の世界だよ。全く、そんな事も理解できないの?」
はぁ、と彼は溜息をつく。頭が追いつかない。魔王山での出来事、小川に突き落とされた自分、そしてこの花畑と小さなストレイボウ。理解しろと言われても無理だ。
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DOODLEオルスト…?のような何か。精神世界にダイブする系の話が好きなんです
続くかもしれない
君の世界『第0層〜第2層』 彼の言葉の意味が、分からなかった。
頭の中が凍りついてしまって、思考が働かなくて。ただ彼の攻撃を阻むしかなかった。
何故彼が生きているのか。いや、それよりも『あの世で俺に詫び続けろ』とはどういう意味なのか、理解できなくて。私は、彼の攻撃を跳ね返すように、正面から剣を振るっていた。
剣の切先が彼に当たる。と同時に、彼の反撃技である魔法が発動した。漆黒の魔法球がこちらへ勢いよくぶつかる。鳩尾に当たり、胃の酸が食道へと上がる感覚が、ひどく気持ち悪い。
黒い魔法球はそのまま私を包み込み、闇へと呑み込んだ。魔法の名は『ブラックアビス』。暗い深淵へと誘う、彼の究極魔法。
「ここは……?」
彼──ストレイボウの魔法で暗闇に閉じ込められていた筈の私は、見慣れた景色にぽつんと立っていた。
1367頭の中が凍りついてしまって、思考が働かなくて。ただ彼の攻撃を阻むしかなかった。
何故彼が生きているのか。いや、それよりも『あの世で俺に詫び続けろ』とはどういう意味なのか、理解できなくて。私は、彼の攻撃を跳ね返すように、正面から剣を振るっていた。
剣の切先が彼に当たる。と同時に、彼の反撃技である魔法が発動した。漆黒の魔法球がこちらへ勢いよくぶつかる。鳩尾に当たり、胃の酸が食道へと上がる感覚が、ひどく気持ち悪い。
黒い魔法球はそのまま私を包み込み、闇へと呑み込んだ。魔法の名は『ブラックアビス』。暗い深淵へと誘う、彼の究極魔法。
「ここは……?」
彼──ストレイボウの魔法で暗闇に閉じ込められていた筈の私は、見慣れた景色にぽつんと立っていた。