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    kor_game87

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    オルストもどき
    続けられるだけ続きます。

    #LAL_腐

    君の世界『第2層〜第3層』 「ストレイボウ……なのか?」
    「そうだよ。どこからどう見てもそうでしょ?」
     その姿は幼く、声も高い。それに、小さな女の子が着るワンピースを着ている。
     それでも斜に構えた態度や声音から、私はストレイボウだとすぐにわかった。長い付き合いだからこそ、だ。そうでなければ、幼い頃のストレイボウに似ている女の子、で終わってしまっていただろう。
     彼は、幼い時は魔除けの為に女装をする事が多々あったのだ。
    「ストレイボウ、ここはどこなんだ? それに君は……どうしてそんな姿に」
    「そんなの見ればわかると思うけど。俺の世界だよ。全く、そんな事も理解できないの?」
     はぁ、と彼は溜息をつく。頭が追いつかない。魔王山での出来事、小川に突き落とされた自分、そしてこの花畑と小さなストレイボウ。理解しろと言われても無理だ。
    「まぁ、いいや。せっかく来たんだし遊ぼうよ。俺はオルをいじめたりしないよ」
    「いじめるって」
    「魔王山の時みたいに」
    「……っ!」
     彼は、覚えている。今までの出来事を。この場所が彼の世界というのなら当たり前の話だが、こう直接指摘されると身体が強張ってしまう。親友に怯えるなんて、普通はありえない筈なのに。
     私はこんなにも、彼に怯えている。
    「そんな構えないでよ『魔法ごっこ』するだけだから」
    「魔法ごっこ?」
    「そう! 俺が覚えた魔法をね、オルに掛けるから、オルは逃げて欲しいの!」
     ストレイボウは目を輝かせている。それこそ、新しい玩具を買ってもらった子供のように。
    「『ごっこ』ってことは、魔法じゃないのか?」
    「魔法だよ?」
    「え」
    「いくよ!『敵を穿て、火の魔弾!』」
    「うわっ!」
     文字通り火の魔弾が、こちらに向かって襲いかかる。走って避け切ると、ストレイボウは木の棒を持ってきゃっきゃと笑っていた。威力は低いが、これはレッドバレットに違いない。
     近くの花が、黒く焼け焦げている。
    「次は……『銀の風よ、敵を貫け!』」
     今度は鋭利な氷の塊が追いかけてくる。当たったらひとたまりもない。右へ左へと走って避け、自分も剣を振り回し氷塊を壊す。
    「すごい! オルいっぱい遊んでくれる!」
    「やめてくれ! こんなの遊びじゃない!」
     これは、遊びじゃなくて実戦じゃないか。下手したら大怪我してしまう!
    「なんだ……やっぱり遊んでくれないんだ。そうだよね、魔法で遊ぶなんてつまんないよね……」
    「そうじゃなくて、その」
     上手く言葉が出てこない。ストレイボウは、私が憎くてこんな事をしている訳じゃないと、そう信じたい。彼は子供で、心も幼いから、加減が分からないだけなのだ。
    「オルも、もう遊んでくれなくなるの?」
    「え……?」
    「オルは、俺と違って力があるから。剣士になってもっともっと凄くなるんでしょ。強くなって偉くなって、遠い所に行っちゃうんでしょ」
    「行かないよ。私はストレイボウとずっと一緒だよ」
    「嘘だよ! だって偉くなったじゃん! 姫様と結婚するんじゃん!」
    「そうだけど、それと離れ離れになるのとは違くて」
    「離れ離れだよ! 俺は簡単にお城に入れないもん! もうオルと遊べないんだ! うわああぁん!」
     ストレイボウは、出会ってから今まで見たことがないくらい、わんわんと大声をあげて泣いた。
    「オルのばか! 嫌い! だいっきらい!」
     大粒の涙を流して泣くストレイボウを、私は膝をついて、優しく抱きしめる。
    「大丈夫、大丈夫だ。ストに会う日も、一緒に過ごす時間も、ちゃんと作るから」
    「……本当に?」
    「ストは、私の大事な人だから」
    「……でも、オルは大事にしてくれない。おれ、オルの為にいっぱい頑張ったのに、全然気づいてくれない」
    「私は……」
     ストレイボウには感謝しているつもりだ。だが、それを上手く伝えられなかったのだろうか。
    「もっと大事にしてよ……もっとわかってよ……」
    「うん」
     ストレイボウは私の服の裾をぎゅっと握りしめる。やがて落ち着いたようで、泣き止んでくれた。目が真っ赤に腫れている。
    「よしよし、ストは、私にとってとても大事な親友だよ」
     幼い彼は涙目で笑った。だが、何故だか寂しそうにも見えた。


     「えっとね、この崖から飛び降りれば下の層に行けるよ。また別の俺がいるから、そいつと話してやって」
    「え、下が見えないんだけど……。怪我どころか死んでしまうんじゃ」
    「言ったでしょ? ここは俺の世界。死んだりしないよ」
     私とストレイボウは、花畑の端にある、そこが見えない崖に立っていた。下は真っ暗で何も見えない。
    「流石にその、心の準備が」
    「えいっ」
     ストレイボウに背中を押され、崖の足場が消える。ふわっと空を飛ぶ感覚に襲われ、そのまま奈落の底に落ちていく。叫ぶ余裕もなかった。


     「ぶっ!」
     柔らかい大きなクッションに叩きつけられる。反動で跳ねて、何度か跳ねて。どうやらストレイボウの言う『下の層』にたどり着いたようだ。
     クッションらしきものは、人間一人覆えるくらいの傘があるキノコ。とても食用とは思えない斑点模様が付いていた。周りは洞窟のように暗く、ぽつぽつと小さなキノコから明かりが灯されていた。
    「……ん、オルステッドか。もう少し静かに出来ないのか?」
     今度は、大人の姿のストレイボウ。彼は机に向かって作業をしていた。ただ現実と一つ違うのは、彼は普段掛けない眼鏡を掛けていた。
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