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    kor_game87

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    kor_game87

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    オルスト第5話です。
    タイトルをつけるとしたら『反転』かなぁ。

    #LAL_腐

    君の世界『第4層』 「……はっ!」
    「魔王! 遂に追い詰めたぞ!」
     木の根に底に呑み込まれた私は、視界が暗転してそのまま意識を失って。次に目が覚めた時には、禍々しい空とストレイボウが視界に入っていた。それに加えストレイボウの後ろには、沢山の城の兵士もいる。
    「魔王め、この勇者ストレイボウが直接叩っ斬ってくれる!」
    「ちょ、ちょっと待ってくれ、勇者……?」
     私が魔王呼ばわりされるのはともかく、ストレイボウが勇者? 彼は私に向かって真っ直ぐ指を刺して、睨んでいる。それに強烈な違和感を与えるのはその見た目だった。いつものローブ姿ではなく、私がいつも身につけている鎧を纏っている。手に持っている物も、杖ではなく剣。まるで剣士だった。
    「ストレイボウ、私は魔王なんかじゃない! 君なら分かるはずだろう!?」
    「何をふざけた事を……!」
     そうだそうだ、勇者様やってしまえ、と後ろの兵士達がストレイボウに声援を送る。完全に私が悪者で、ストレイボウがそれを倒す勇者の図だ。彼は私と同じ、剣を顔と同じ高さに上げる構えを取った。
    「うわっ!」
     ストレイボウが剣を振る。対抗する武器もなく、必死に避け続けることしかできない。何回目かの攻撃の後、鎧の上から羽織っていたマントに切り込みが入った。
     ……あれ、どうしてマントなんて羽織っているんだろう。それに赤い。ストレイボウみたい。
    「隙ありっ!」
     一瞬の隙を突かれ、私はストレイボウに押し倒される。もう身動きができない。
    「さっさと俺に倒されろ! 魔王!」
     ストレイボウの剣が顔の前にやってくる。まずい。私は命の危険を察して、咄嗟に彼を突き飛ばした。
    「なっ!?」
     ストレイボウが突き飛ばされた、と同時に天と地がひっくり返る。私を含む全てが下へと落ちて、がしゃん、と自分が倒れる音と、何かが割れる音が聞こえた。
    「痛た……」
    「うわっ、びっくりした。変な姿勢で寝てるから転ぶんだよ。怪我はないか?」
    「うん、大丈夫……」
     目を開ける。視線の先にはストレイボウ。良かった、今度はいつもの彼だ。私は椅子から転げ落ちたらしく、椅子と共にテーブルの近くに寝転がった体勢になっていた。近くには割れたカップらしきものがある。
     ここは……ストレイボウの家だろうか。
    「割れた食器片付けるから、触るなよ。箒取ってくる」
    「あ、待って!」
     いつもの彼だと安堵したくて、呼び止めた次の瞬間。
     ぽよん。
     ……ん? ストレイボウに柔らかいものが。
    「な、お前……! 最近してないからってその、直接的すぎるだろ……!」
    「え、待って、どういうこと。ストレイボウに胸、が……?」
    「はぁ!? 確かに俺は小さいかもしれねぇし、女らしくないかもしれねぇけど! そこまで言うことねえだろ!」
     パチン! と破裂音。頬に痛みが走る。このデリカシーなし! と罵声が遠くで聞こえ、世界が暗転する。

     今度は暗い、山の中。この景色は最近見たものだ。魔王山の中。
    「オルステッド」
     声の方を向くと、またいつものストレイボウが横に立っていた。今度は騙されないぞ。きっと普段とは違う彼なんだ。
    「お前はいつも通り、前方支援を頼む。俺とウラヌス様はメインで戦うから」
    「うん……うん?」
     前方……支援?
    「えっと……支援でいいの? 主力じゃなくて?」
    「何言ってるんだ。主力は魔法だし、前衛は支援が基本だろ。そもそも剣は攻撃力がそれほど無いんだから」
    「う、うーん……ストレイボウがそう言うなら……」
    「ほら、気を引き締めないと。魔王との戦いだ」
     ストレイボウにぽんと背中を叩かれる。どうやら、この世界は偽魔王との戦いの直前の時間らしく、ハッシュ様やウラヌス様もいらっしゃる。ストレイボウの話によると、伝説の勇者はウラヌス様に変わっていた。
    「魔王! 姿を現せ!」
     ウラヌス様が魔王像の前で声を上げる。すると魔王が何もない場所から竜巻を起こし、その中から翼を広げて現れた。
    「これはこれは、勇者ウラヌス。随分と久しいな」
    「また戦う事になるとはの。覚悟せい!」
     ウラヌス様の掛け声と共に、私とハッシュ様は魔王へ攻撃を仕掛ける。いつもの通り間合いを詰め、Vシャインを仕掛けようとしたその時。
    「馬鹿者! 何をしている!」
     ハッシュ様の怒号が聞こえる。それと同時に魔王の攻撃をもろに喰らってしまった。頭がふらふらする。酷い目眩だ。前戦った時は、こんな状態にならなかったのに。
    「剣士は錯乱させるのが仕事だというのに、急にどうしたんだコイツは!」
    「フン、剣士などその程度か。ウラヌスと新しき勇者の力、見せてもらおうか」
     あぁそうか、この世界は魔法が主力なのか。だから戦い方も違うんだ。
     駄目だ、意識がもたない。また別の世界に飛ばされる──

     「困ってるみたいだね?」
    「え?」
     今度は辺り一面真っ暗。声の主は……?
    「こっちこっち。目の前にいるよ」
     目線を下へと向ける。そこには二つ目の世界にいた、小さなストレイボウが、こちらをじっと見つめていた。
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