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    kor_game87

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    続きものの4話。まだまだ続く
    オルスト

    #LAL_腐

    君の世界『第3層-3』 ぽつぽつと点在する光を手掛かりに、私は暗闇の中を走り続ける。
     どこまでもどこまでも続く一本道。いくら走っても行き止まりはなく、体力に自信がある自分でも息が荒くなってきた。
     やがて走ることが出来なくなって、その場で息を整えていると、何処かでガリガリと音がする。ぶつぶつ呟く人の声と共に。
     私は音の方へ足を向け、歩み始める。
     暫く歩いていると、キノコの光が等間隔に並んでいることに気づいた。ガリガリ音が大きくなって、それと共に人の声も大きくなる。
    「ここをこうして……あぁ違う。こっちの式が……あぁ! どうして上手くいかない!」
     ぼんやりと光るキノコの中、ストレイボウが木の幹を削りながら、羽ペンで数式めいたものを書いていた。その木は大人一人を寝転ばせたくらいの太さがあり、枝と葉が洞窟全体を覆っている。光を遮っていたのは、全てこの木の仕業なのだろうか?
     木の幹をよく見ると、所々古い傷が付いている。恐らく全てストレイボウが付けたものだろう。
    「ストレイボウ」
    「ひっ!」
     彼は私の声にびくっと跳ねた。ゆっくりと振り向いて目を合わせる。目尻は涙で濡れていた。
    「どうして怯えているの」
    「やめて、くれ。来るな……」
     ストレイボウは木の後ろに引っ込んでしまった。先程までの嫌味ったらしさはどこへ行ったのだろう。
    「大丈夫だ、何も危害は加えない。大丈夫だから」
    「うそ、だろ? オルステッドも俺を見捨てるんだ。そうに決まってる……」
    「どうして。見捨てなんてしない」
    「見捨てる、そうなんだろ……?」
     何度問うても、彼は『見捨てる』の一点張り。それならと、質問を変えてみる。
    「どうしてそう思ったの?」
    「俺が悪い奴だから、駄目な奴だから。全部ばれた。もうお前が俺と一緒にいる必要なんてない」
    「そんなことない! 私はストレイボウが好きだよ!」
     私は叫ぶ。ストレイボウが駄目な奴? そんな事一度も思った事ない!
    「やめてくれ! そんな嘘要らない! まともに魔法も編み出せない俺は要らない!」
     ストレイボウは、またくしゃくしゃと髪を掻きむしる。
    「もっと頑張らなきゃいけないのに、できる奴にならなきゃいけないのに、それも出来ない! 俺は悪い奴だ!」
    「違う……違う!」
     私は、気がつくとストレイボウを後ろから抱き止めていた。
    「ストレイボウ、聞いてくれ。私は君が必要なんだ」
     ぴく、と彼の肩が動く。
    「……本当に?」
    「本当だよ。現実世界の出来事はまだ信じられないけど、魔王山まで一緒に来てくれて嬉しかったんだよ」
    「……そうか。それがもし、もし本当なら、この先も大丈夫だろう。でも」
     ストレイボウは、ゆっくりと私の抱き止めていた手を解く。
    「それが違っていたのなら、お前は完全に俺に呑み込まれる。ここより下は、もっと酷い所だから」
     次の瞬間木の根が蠢き出し、根の一部に巻き付かれて、根元へと一気に呑み込まれた。

     大人の姿でも寂しい子供な彼に「待って」と言えなかった。

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