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    かべうちのかべ

    DONE再掲
    ・初めて激オコしたネ君と何が悪かったか分かってないブの話

    第1回ブラネロ冬春ワンドロライ、4回目のお題:喧嘩 より。
    2021.8.30にTwitter掲載済。
    『らしくない』「……」
    「ネロ?なんだそんな恐い顔して」
    「これ……、どうした?」
    「お、それな。美味かったぜ!」
    「……食ったのか?」
    「おう」
    「昨日、これだけは食うなって、言っといたよな?」
    「そう……だったか?まぁ、でもこんな美味そうなもん我慢できねぇし、また作ればいいだろ?」
     悪びれもせずにそう言って笑うブラッドリーとは反対に、ネロは感情を落としたように無表情だ。何度か耐えるように呼吸を繰り返していたが、どうにも収まらない怒りがあふれ出す。
    唇をかみしめ、顔をゆがめてブラッドリーをにらみつけるとキッチンから荒々しく駆けだした。感情にまかせた言葉を吐き捨てて。
    「てめぇは……野菜でも食ってろ!」
    「は? おい、ネロ!」

     涙こそ出てはいないが、明らかに傷ついた表情で去って行ったネロに困惑するブラッドリーは、何がなんだかさっぱりと分かっていなかった。そのまま呆然と扉を見つめ考え込むが、何度思い返してみてもいつものつまみ食いとなにも変わらない行動だったと思う。
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    umemhyk

    DONE【1話前編】ブラッドリー×モブ(名前無し)の夢小説のようなものを初めての小説として書いてみました。

    もしもあなたが、違うかたちでブラッドリーに出逢ったら?
    真っ白な大地を背に飛ぶ魔法使いへの憧れ。胸の奥にあるそのきらめきを、盗賊は必ず見つけ出す。どこでどんなふうに生まれても、“太陽”はきっとあなたを照らしてくれる…

    そんな祈りを込めてこの物語をお届けします。
    名も無き花はひだまりに揺れて 一輪目・名も無き銀細工師 〜前編〜カランカラン。

    その魔法使いは前触れもなくやって来た。
    まるで私の旅立ちを見計らったかのように。

    漆黒と白銀の髪、射抜くような夕闇色の瞳。

    「ようじじい」

    「いらっしゃいませ…おお、これはこれはブラッドリー様。久方ぶりですなあ」

    「あ、お前あん時のちっちゃいのか」

    「ははは、こんな老いぼれにちっちゃいのは止してくださいよ」

    「よく言うぜ。俺様の半分も生きてねえのによ」

    お師匠が何やら親しげに話しているのは、数十年ぶりにうちの店に来た“常連”だ。

    西の国の北東部、北の国との国境に近いこの銀細工屋は北からの来客も多い。なかでも盗賊を名乗る魔法使いの太客が数十年に一度来るとは聞いていたけれど、まさかたった一年修行に来ている私がその姿を見られるなんて。しかもここから旅立つ前日に。
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