雨野(あまの)
DONEひふ幻ドロライお題「逃避行」幻太郎と幻太郎に片思い中の一二三がとりとめのない話をする物語。甘くないです。暗めですがハッピーエンドだと思います。
一二三が情けないので解釈違いが許せない方は自衛お願いします。
また、実在する建物を参照にさせていただいていますが、細かい部分は異なるかと思います。あくまで創作内でのことであるとご了承いただければ幸いです。
いつもリアクションありがとうございます!
歌いながら回遊しよう「逃避行しませんか?」
寝転がり雑誌を読む一二三にそう話しかけてきた人物はこの家の主である夢野幻太郎。いつの間にか書斎から出てきたらしい。音もなく現れる姿はさすがMCネームが〝Phantom〟なだけあるな、と妙なところで感心した。
たっぷりと時間をかけた後で一二三は「……夢野センセ、締め切りは〜?」と問いかけた。小説家である彼のスケジュールなんて把握済みではあるが〝あえて〟質問してみる。
「そうですねぇ、締め切りの変更の連絡もないのでこのままいけば明日の今頃、という感じですかね」
飄々と述べられた言葉にため息ひとつ。ちらりと時計を見る。午後9時。明日の今頃、ということは夢野幻太郎に残された時間は24時間というわけだ。
4524寝転がり雑誌を読む一二三にそう話しかけてきた人物はこの家の主である夢野幻太郎。いつの間にか書斎から出てきたらしい。音もなく現れる姿はさすがMCネームが〝Phantom〟なだけあるな、と妙なところで感心した。
たっぷりと時間をかけた後で一二三は「……夢野センセ、締め切りは〜?」と問いかけた。小説家である彼のスケジュールなんて把握済みではあるが〝あえて〟質問してみる。
「そうですねぇ、締め切りの変更の連絡もないのでこのままいけば明日の今頃、という感じですかね」
飄々と述べられた言葉にため息ひとつ。ちらりと時計を見る。午後9時。明日の今頃、ということは夢野幻太郎に残された時間は24時間というわけだ。
雨野(あまの)
MAIKING完成したらネップリとかで本作るのも良いかな〜とか何とか考え中仮 伊弉冉一二三という男はデリカシーというものを忘れてこの世に生まれてきたのだろうと常々思っている。短くはない付き合いの中で、そのデリカシーのなさに何度青筋を立てたかは幻太郎自身にも把握できていない。そのぐらい心の柔らかい部分にずかずかと入ってくるのだ、伊弉冉一二三という男は。まあ、そんな奴とこいびとどうし、というものになってしまったのだから、人生何があるか分からないなぁ〜なんて呑気に考える今日この頃。
そうそう、青筋を立てたことの一つが先日の出来事だった。
夜も深まった時間帯。扇風機のみで夜を越せる気温となり、快適に惰眠を貪っていたあの夜。
クスクスという笑い声とシャッター音で目が覚めた。朧げな感覚の中で薄らと目を開くとこちらにスマートフォンを向ける伊弉冉一二三の姿があった。寝起きのためいまいち状況が読み込めない中、頭をフル回転させた。
377そうそう、青筋を立てたことの一つが先日の出来事だった。
夜も深まった時間帯。扇風機のみで夜を越せる気温となり、快適に惰眠を貪っていたあの夜。
クスクスという笑い声とシャッター音で目が覚めた。朧げな感覚の中で薄らと目を開くとこちらにスマートフォンを向ける伊弉冉一二三の姿があった。寝起きのためいまいち状況が読み込めない中、頭をフル回転させた。
雨野(あまの)
DONEひふ幻ドロライ3月お題『春の嵐』お題お借りしました。
モブ女主人公ですがひふ幻に対して恋愛的な絡みはしません。
花信風吹き荒れる「はあ〜〜〜〜」
廊下に特大のため息が響き渡る。言うまでもなく自身の口から出たものだ。ああ、胃が痛い。
女性誌のライターとして配属された新人だ。過酷な仕事である上に編集長から叱られることも少なくないがやりがいを感じている。何より書くことが好きだから続けられている。
有名人にインタビューをすることも多く、大御所の女優に冷たく当たられることもあったが、今日の仕事はそれとは別のベクトルで気を遣うこととなるだろう。
女性誌の大型企画として九ヶ月限定の連載が始まる。イケブクロ、ヨコハマ、シブヤ、シンジュク、ナゴヤ、オオサカのディビジョンラップバトルの代表者をシャッフルして、二名ずつに分かれて対談を行うといった企画だ。それに数名のライターが当てられる。本来なら自身は新人ということもあり、こういった大型企画を担当することはないのだが〝勉強のため〟という編集長のありがた〜いお言葉により一組だけ担当することになった。
6461廊下に特大のため息が響き渡る。言うまでもなく自身の口から出たものだ。ああ、胃が痛い。
女性誌のライターとして配属された新人だ。過酷な仕事である上に編集長から叱られることも少なくないがやりがいを感じている。何より書くことが好きだから続けられている。
有名人にインタビューをすることも多く、大御所の女優に冷たく当たられることもあったが、今日の仕事はそれとは別のベクトルで気を遣うこととなるだろう。
女性誌の大型企画として九ヶ月限定の連載が始まる。イケブクロ、ヨコハマ、シブヤ、シンジュク、ナゴヤ、オオサカのディビジョンラップバトルの代表者をシャッフルして、二名ずつに分かれて対談を行うといった企画だ。それに数名のライターが当てられる。本来なら自身は新人ということもあり、こういった大型企画を担当することはないのだが〝勉強のため〟という編集長のありがた〜いお言葉により一組だけ担当することになった。
雨野(あまの)
DONEメリーバッドエンド「キス……してください」
「ダメだって言ってんじゃん〜そういうのは好きな人としなって」
屈折なく笑う顔に何度目かの失恋をする。せめてもの負け惜しみで「嘘ですよ。冗談です」と唱えると彼は優しく微笑んだ。
身体は重ねても口付けはしない。セックスなんかよりキスの方がよっぽど深い愛を感じられる。
これが彼の掲げる信念だ。
互いの体の隅々まで知っておきながら唇の温度は知らない。伊弉冉一二三と夢野幻太郎はそういった奇妙な関係だった。
好きな人と、ね。伊弉冉一二三は今までも事あるごとに線引きをしてきた。お前とはあくまで遊びなんだぞ、という線引き。こちらが本気にならないように細心の注意を払って。そんなものは無意味なのに可笑しな男だ。
1272「ダメだって言ってんじゃん〜そういうのは好きな人としなって」
屈折なく笑う顔に何度目かの失恋をする。せめてもの負け惜しみで「嘘ですよ。冗談です」と唱えると彼は優しく微笑んだ。
身体は重ねても口付けはしない。セックスなんかよりキスの方がよっぽど深い愛を感じられる。
これが彼の掲げる信念だ。
互いの体の隅々まで知っておきながら唇の温度は知らない。伊弉冉一二三と夢野幻太郎はそういった奇妙な関係だった。
好きな人と、ね。伊弉冉一二三は今までも事あるごとに線引きをしてきた。お前とはあくまで遊びなんだぞ、という線引き。こちらが本気にならないように細心の注意を払って。そんなものは無意味なのに可笑しな男だ。
雨野(あまの)
DONEひふ幻ドロライ2月お題『バレンタインデー』にまつわる話です。いつもリアクションありがとうございます。励みになっています。恋が溶けた バレンタインデー。チョコレート会社の策略うんぬん言われているが、この国では好きな相手にチョコレートを渡す日という認識だ。好きな相手だけではなく友達やお世話になっている人へに対しての友チョコ、義理チョコなんていうものも存在している。幻太郎も例に漏れず行きつけの喫茶店のマスターから、お世話になっている出版社の編集長から、読者から等々、いたるところでチョコレートをもらった。そのどれもが本命ではないだろうが悪い気はしない。
幻太郎自身は、というと毎年お返しを考えることに精一杯なので〝あげる〟ことに関しては専門外だ。
しかし今年は例年と違ったバレンタインデーになりそうだ、とも予感していた。
伊弉冉一二三という男がいる。シンジュクナンバーワンホストでありシンジュクディビジョン代表麻天狼のメンバーである。いわば幻太郎のライバルにあたる。しかもちょっとした〝トラブル〟から幻太郎は一二三のことがとりわけ苦手だった。
3680幻太郎自身は、というと毎年お返しを考えることに精一杯なので〝あげる〟ことに関しては専門外だ。
しかし今年は例年と違ったバレンタインデーになりそうだ、とも予感していた。
伊弉冉一二三という男がいる。シンジュクナンバーワンホストでありシンジュクディビジョン代表麻天狼のメンバーである。いわば幻太郎のライバルにあたる。しかもちょっとした〝トラブル〟から幻太郎は一二三のことがとりわけ苦手だった。
雨野(あまの)
DONEひふ幻ドロライ2月のお題『猫』にまつわる話です。ありきたりですが猫になります。※猫化注意いつもリアクションありがとうございます。励みになります。
猫になった日の過ごし方「うにゃあ〜」
自身が発したとは思えないほどに可愛らしい声だ。声、というよりかは鳴き声の方が正しいか。普段は使わない近道を使ったのが悪かった。突如、後ろから憎悪のこもったリリックをぶつけられ、目が覚めたら〝猫〟になっていた。んな、二次創作みたいな展開になるなんて嘘だろ!?と思いたいが残念ながら現実だ。それに仮にこれが二次創作だとしたら猫耳に尻尾なんていう可愛らしい姿になっていただろうが現実なので自身の姿はまんま〝猫〟だった。
手(前足)を暫し眺める。猫の足だと自宅に辿り着くのはどれぐらいだろうか。かなり時間がかかってしまうかもしれないが、自宅にさえ着いてしまえばあとはどうにでもなるだろう、と歩き出す。しかし思考まで猫になってなくて良かった、と安堵する。人間の記憶を失ってしまったら自宅までの道のりも思い出せないだろう。
6398自身が発したとは思えないほどに可愛らしい声だ。声、というよりかは鳴き声の方が正しいか。普段は使わない近道を使ったのが悪かった。突如、後ろから憎悪のこもったリリックをぶつけられ、目が覚めたら〝猫〟になっていた。んな、二次創作みたいな展開になるなんて嘘だろ!?と思いたいが残念ながら現実だ。それに仮にこれが二次創作だとしたら猫耳に尻尾なんていう可愛らしい姿になっていただろうが現実なので自身の姿はまんま〝猫〟だった。
手(前足)を暫し眺める。猫の足だと自宅に辿り着くのはどれぐらいだろうか。かなり時間がかかってしまうかもしれないが、自宅にさえ着いてしまえばあとはどうにでもなるだろう、と歩き出す。しかし思考まで猫になってなくて良かった、と安堵する。人間の記憶を失ってしまったら自宅までの道のりも思い出せないだろう。
雨野(あまの)
DONE付き合っていないひふ幻。一二三が幻太郎をカワイイカワイイと言うだけの話です。オチなしヤマなし。※某チャンネルの一二三役の声優さんの発言から連想して書きましたが、あくまでキャラ同士の恋愛として書いています。声優さん同士では考えていませんのでご留意くださいませ。2022年書き納めです、たくさん読んでいただいて幸せでした。ありがとうございます。 2112
雨野(あまの)
DONEひふ幻ドロライ第二回お題『イルミネーション』に沿った話です。お題に沿ってるか?と疑問に感じたのでボツにしようと思っていたのですが、せっかくなので晒してみようと。一応https://poipiku.com/4947781/7973889.htmlの続きですが、読まなくても分かると思います。会話多めのギャグ風です。いつも読んでいただきありがとうございます。活力です。甘く愉快な夜にふたりきり「わ〜、目が痛い……」
「あ、幻太郎〜!おつおつ〜!仕事落ち着いた?」
乱れた髪に着崩した着物、肩に羽織っている物は白いブランケットという親しい人以外には見せないであろうみっともない姿に優越感が募り、思わず笑みがこぼれる。
「ええ。まずは、といったところでしょうかね。本当の修羅場はこれからですよ」
「ガチで年末進行ヤバいもんね〜!てか、ちゃんと襖閉めてよ!寒いんだって〜!書斎もちゃんと閉めた?」
「はいはい。今日もお母さんはうるさいですねぇ」
「もお〜!お母さんじゃなくて愛しい恋人っしょ?」
「……ノーコメントで」
「何で〜!?」
幻太郎は俺の声を無視して、畳の上にある飾りを手に取った。
「電飾ですか」
「イルミネーションライトって言ってよ〜!」
3049「あ、幻太郎〜!おつおつ〜!仕事落ち着いた?」
乱れた髪に着崩した着物、肩に羽織っている物は白いブランケットという親しい人以外には見せないであろうみっともない姿に優越感が募り、思わず笑みがこぼれる。
「ええ。まずは、といったところでしょうかね。本当の修羅場はこれからですよ」
「ガチで年末進行ヤバいもんね〜!てか、ちゃんと襖閉めてよ!寒いんだって〜!書斎もちゃんと閉めた?」
「はいはい。今日もお母さんはうるさいですねぇ」
「もお〜!お母さんじゃなくて愛しい恋人っしょ?」
「……ノーコメントで」
「何で〜!?」
幻太郎は俺の声を無視して、畳の上にある飾りを手に取った。
「電飾ですか」
「イルミネーションライトって言ってよ〜!」
雨野(あまの)
DONEひふ幻ドロライ第二回お題『イルミネーション』に沿った話です。幻太郎に片想いしている一二三の話です。幻太郎←←一二三って感じです。いつも読んでくださる皆さま、ありがとうございます。励みになります。
SNOW DANCE カシャカシャ。小気味良いシャッター音を響かせて息をはぁっと吐き出す。白い息が舞えば、辺りの空気がますます冷えるような錯覚に陥る。ぶるりと身震い一つ。夜道にぽつんと佇む明かりに吸い寄せられ、自販機のボタンを二回押した。缶の温もりを手に馴染ませたのちに飲んだコーヒーは格別の美味さだった。
夢野幻太郎の助手……と言えば聞こえが良いが、雑用係をするようになって数ヶ月が経つ。敵対同士である俺と幻太郎がどういったわけか共に食事をする仲となり、どういったわけか俺は幻太郎に恋心を抱いていた。思い立ったら即行動というわけで何度か彼に想いを打ち明けているが、その度に「お断りします」と拒否され続けている。
告白も三回を超えた辺りだろうか、辟易とした様子で「小生と交際したいのならば、好きにならせる努力をしてくださいよ」と吐き捨てられたのである。というわけでかぐや姫の心を射止めるべく奔走する帝のごとく、俺も夢野幻太郎に好かれようと雑用係を買って出た。
4083夢野幻太郎の助手……と言えば聞こえが良いが、雑用係をするようになって数ヶ月が経つ。敵対同士である俺と幻太郎がどういったわけか共に食事をする仲となり、どういったわけか俺は幻太郎に恋心を抱いていた。思い立ったら即行動というわけで何度か彼に想いを打ち明けているが、その度に「お断りします」と拒否され続けている。
告白も三回を超えた辺りだろうか、辟易とした様子で「小生と交際したいのならば、好きにならせる努力をしてくださいよ」と吐き捨てられたのである。というわけでかぐや姫の心を射止めるべく奔走する帝のごとく、俺も夢野幻太郎に好かれようと雑用係を買って出た。
雨野(あまの)
DONE恋人同士のひふ幻。一二三に嫉妬して欲しい幻太郎の話です。モブ出ますが、恋愛的には絡みません。いつも読んでいただきありがとうございます。活力です。センチメントは君次第「来週〜?おけまる〜!じゃあ、その日俺っちはこの家の掃除でもしてようかな〜!」
恋人である伊弉冉一二三が平然と述べたため、夢野幻太郎は面を食らった。
「あ、あの……相手は今をときめく若手俳優なんです」
「あ〜!今、めっちゃ人気らしいね〜!何?次の実写化の主演ってその人なん〜?」
「……ええ。その方も小生の小説のファンらしくて」
「んで、雑誌の企画で小説に出てくる場所の聖地巡礼するってわけね〜!」
「……はい。長時間、留守にするかと」
「おっけ〜!寒いだろうから暖かい格好しなきゃね〜!」
普段と様子が違う彼に首を傾げながら風呂場へと向かった。
嫉妬深い彼のことだからイケメン俳優とのデート企画なんて聞いた日には騒ぎ立てて、説得するのにも小一時間かかることを覚悟していたのに。蓋を開けてみるとこれだ。
5188恋人である伊弉冉一二三が平然と述べたため、夢野幻太郎は面を食らった。
「あ、あの……相手は今をときめく若手俳優なんです」
「あ〜!今、めっちゃ人気らしいね〜!何?次の実写化の主演ってその人なん〜?」
「……ええ。その方も小生の小説のファンらしくて」
「んで、雑誌の企画で小説に出てくる場所の聖地巡礼するってわけね〜!」
「……はい。長時間、留守にするかと」
「おっけ〜!寒いだろうから暖かい格好しなきゃね〜!」
普段と様子が違う彼に首を傾げながら風呂場へと向かった。
嫉妬深い彼のことだからイケメン俳優とのデート企画なんて聞いた日には騒ぎ立てて、説得するのにも小一時間かかることを覚悟していたのに。蓋を開けてみるとこれだ。
雨野(あまの)
DONE恋人同士のひふ幻。ポッキーの日のアレ。多分、ギャグ。わたしだけ今日が11月11日の世界線に生きているので遅刻じゃありません。いつもリアクションありがとうございます。励みになります。ビターチョコだなんて嘘だ 静まり返る真夜中。おそらくほとんどの人が眠っているであろう時間帯に歩くのは割と好きだ。澄んだ空気に革靴がコツコツと鳴り響くのは形容し難い心地良さを感じる。しかも、恋人の自宅に向かうとなれば尚更。
店を出る前にメッセージを送ったところ『執筆中なのでうるさくしないのであれば来ても良いですよ』という可愛げのない返事がきたことを思い出してくすりと笑う。
まあ、それでも「来るな」とは言わないのだから愛されているなぁ〜とか思ったりして。なんて自惚れかな。本人に聞いたら間違いなく「自惚れですね」と言われてしまいそうだ。
通い慣れた玄関の引き戸をカラカラと開け、一歩足を踏み入れると暖かい空気に混じって彼の使用する石けんの香りまで漂ってきたので不覚にも胸がときめく。
2614店を出る前にメッセージを送ったところ『執筆中なのでうるさくしないのであれば来ても良いですよ』という可愛げのない返事がきたことを思い出してくすりと笑う。
まあ、それでも「来るな」とは言わないのだから愛されているなぁ〜とか思ったりして。なんて自惚れかな。本人に聞いたら間違いなく「自惚れですね」と言われてしまいそうだ。
通い慣れた玄関の引き戸をカラカラと開け、一歩足を踏み入れると暖かい空気に混じって彼の使用する石けんの香りまで漂ってきたので不覚にも胸がときめく。
雨野(あまの)
DONEひふ幻ドロライ第一回お題「初めての」に沿ったストーリーです。付き合いたてのひふ幻。幻太郎に名前で呼んで欲しい一二三の話です。不穏っぽいけど激甘です。パワフル少女漫画。ひふ幻ドロライという素敵な企画に参加できて嬉しいです。
そして読んでくださる皆さん、いつもリアクションありがとうございます。何よりの活力です。
one two three step by step「ねぇ〜良いじゃん」
「何がですか?おやつはさっきあげたでしょ。ポチ」
「誰がポチだっての!!」
「おや、お犬様ではなかったですか?」
ワンワン、と鳴き真似をしてから茶目っ気たっぷりに笑う人物はシブヤディビジョン代表Fling Posseのメンバー兼俺の恋人である夢野幻太郎だ。
つい一ヶ月前に恋人になったばかりで俺たちはラブラブのアツアツである。と言いたいところだが、一つだけ不満を抱いていた。
「ポチじゃなくて一二三でしょ?ほら、リピートアフターミー!ひ、ふ、み」
「ジ、ゴ、ロ」
「もお〜幻太郎〜!」
幻太郎が恋人同士になっても未だに〝伊弉冉さん〟と呼んでくることだ。まだキスすらも交わしていない二人だから、恋人同士ということを実感するためにも名前で呼んで欲しいと頼んでいるのにこうやってのらりくらりとかわされてしまう。これでは友人同士となんら変わりがないではないか。
5657「何がですか?おやつはさっきあげたでしょ。ポチ」
「誰がポチだっての!!」
「おや、お犬様ではなかったですか?」
ワンワン、と鳴き真似をしてから茶目っ気たっぷりに笑う人物はシブヤディビジョン代表Fling Posseのメンバー兼俺の恋人である夢野幻太郎だ。
つい一ヶ月前に恋人になったばかりで俺たちはラブラブのアツアツである。と言いたいところだが、一つだけ不満を抱いていた。
「ポチじゃなくて一二三でしょ?ほら、リピートアフターミー!ひ、ふ、み」
「ジ、ゴ、ロ」
「もお〜幻太郎〜!」
幻太郎が恋人同士になっても未だに〝伊弉冉さん〟と呼んでくることだ。まだキスすらも交わしていない二人だから、恋人同士ということを実感するためにも名前で呼んで欲しいと頼んでいるのにこうやってのらりくらりとかわされてしまう。これでは友人同士となんら変わりがないではないか。
雨野(あまの)
DONEセフレ関係のひふ幻。back numberさんの『エメラルド』という曲から連想し書きました。あの歌詞通りに当てはめただけなので不都合があれば削除するかもしれません。曲のまま甘くないです。ひふ幻webオンリーばらゆき2開催おめでとうございます!
ひふ幻界隈がさらに盛り上がるよう願いながらわたしも書かせていただいてます。
いつもリアクションありがとうございます。
嘘つきの行く末 すぅと息を吸い込む。吐き出したタイミングでドアをノック。乾いた音の後に「はい」という声がして、しばらくするとドアが開き、端正な顔の持ち主が姿をあらわした。ホテル独特の匂いが広がるその部屋はエグゼクティブルームだ。一度スイートルームを取ったこともあるが、「落ち着かない」と眉を顰められたためランクを落とした。それでもスタンダードな部屋やラブホテルを選ばないのは彼に対する敬いの気持ちとお互いに名の知れたディビジョンラップバトルの代表者であるがゆえだ。
「遅くなってすまないね。幻太郎くん」
「構いませんよ。お仕事ですもの。どうぞ、早く中へ」
そう促され、廊下を一瞬だけ確認すると早急に部屋へと足を踏み入れた。シティホテルのエグゼクティブクラスとはいえ何処に週刊誌の記者が潜んでいるか分からない。いざとなれば取材のためホテルに行っただけ、と言えば良いのだが〝火のないところに煙は立たない〟理論で面白おかしく騒ぎ立てられるのも不愉快だ。記者というものはそういう奴らなのだ。
3777「遅くなってすまないね。幻太郎くん」
「構いませんよ。お仕事ですもの。どうぞ、早く中へ」
そう促され、廊下を一瞬だけ確認すると早急に部屋へと足を踏み入れた。シティホテルのエグゼクティブクラスとはいえ何処に週刊誌の記者が潜んでいるか分からない。いざとなれば取材のためホテルに行っただけ、と言えば良いのだが〝火のないところに煙は立たない〟理論で面白おかしく騒ぎ立てられるのも不愉快だ。記者というものはそういう奴らなのだ。
雨野(あまの)
DONEセフレ関係のひふ幻。幻太郎が匂わせ行為をしちゃう話。幻太郎→一二三で視点が変わります。甘くないです。ひふ幻webオンリーばらゆき2開催おめでとうございます!
ひふ幻界隈がさらに盛り上がるよう願いながらわたしも書かせていただいてます。
いつもリアクションありがとうございます。
不透明な僕たちは「これ何?」
一二三は激怒した。なんちゃって。
伊弉冉一二三と関係を持つようになって彼が本気で憤慨したところは見たことがない。今現在もそうだ。眉を顰めて、声も普段より抑えてあるが、怒ってはいないだろう。
きっとこの男は怒ることに関して慣れていない。つくづく難儀な奴だなと思う。その女性恐怖症も。
「何って……貴方のスマートフォンですね」
「そーゆーこと言ってんじゃねぇの!これ!」
一二三は左手に持ったスマートフォンの液晶をこちらに見せ、右手の人差し指でコツンコツンと音を鳴らす。美しくて長い指だな〜だとかリズム良く鳴らされた音が心地良いな〜なんてこの場に似つかわしくないことばかりを考えた。
「おや、まあ。これは小生のSNSではないですか」
5935一二三は激怒した。なんちゃって。
伊弉冉一二三と関係を持つようになって彼が本気で憤慨したところは見たことがない。今現在もそうだ。眉を顰めて、声も普段より抑えてあるが、怒ってはいないだろう。
きっとこの男は怒ることに関して慣れていない。つくづく難儀な奴だなと思う。その女性恐怖症も。
「何って……貴方のスマートフォンですね」
「そーゆーこと言ってんじゃねぇの!これ!」
一二三は左手に持ったスマートフォンの液晶をこちらに見せ、右手の人差し指でコツンコツンと音を鳴らす。美しくて長い指だな〜だとかリズム良く鳴らされた音が心地良いな〜なんてこの場に似つかわしくないことばかりを考えた。
「おや、まあ。これは小生のSNSではないですか」
雨野(あまの)
DONE恋人同士のひふ幻。ちょいエロ。R-15ぐらい。ひふ幻がそれぞれ相手を泣かせてしまうシチュエーションってどんな感じかなって想像して創作しました。オチなしヤマなし意味なし。供養。そのうち幻太郎が一二三を泣かせてしまうバージョン書きます。愛憎相半ばする本能「幻太郎〜チチチーッス!おわっ!」
呑気なかけ声とともに家に入ってきた男を引きずるようにして居間へと連れて行く。ただし、ゆっくり、響かないように。繋いだ手の向こう側から「ちょ、ちょっと〜!いきなり何なの〜?」と非難する声が聞こえるが無視だ、無視。
畳を踏み込むとふたり分の重みでぎしりと音が立てられた。逃げないように両手を握り向かい合えば、どこか居心地が悪そうに目を泳がせる彼を精一杯睨みつける。
「小生に何か言うことありませんか?」
「ん〜。幻太郎、愛してるよ♡」
思わず緩みそうになる頬を引き締める。こいつのペースに巻き込まれては駄目だ。
はあ、とため息を吐き出し、彼のシャツのボタンに手をかけた。
「いやん!幻太郎ってば大胆♡」と言いつつ、やんわりと俺の手を抑えようとしているのなんてお見通しなんだからな。
3226呑気なかけ声とともに家に入ってきた男を引きずるようにして居間へと連れて行く。ただし、ゆっくり、響かないように。繋いだ手の向こう側から「ちょ、ちょっと〜!いきなり何なの〜?」と非難する声が聞こえるが無視だ、無視。
畳を踏み込むとふたり分の重みでぎしりと音が立てられた。逃げないように両手を握り向かい合えば、どこか居心地が悪そうに目を泳がせる彼を精一杯睨みつける。
「小生に何か言うことありませんか?」
「ん〜。幻太郎、愛してるよ♡」
思わず緩みそうになる頬を引き締める。こいつのペースに巻き込まれては駄目だ。
はあ、とため息を吐き出し、彼のシャツのボタンに手をかけた。
「いやん!幻太郎ってば大胆♡」と言いつつ、やんわりと俺の手を抑えようとしているのなんてお見通しなんだからな。
雨野(あまの)
DONE再び付き合ってないひふ幻のキスにまつわる話です。(前回のとは違う世界線です)独帝要素があり独歩、帝統が出てくるので苦手な方は自衛してください。kissing you ふと目が覚めると三つの寝息が聞こえる。がーがーとうるさい寝息とたまにうなされるかのように出される寝息はテーブルの向こう側から。すぅすぅという安らかな寝息は俺のすぐ隣から。むくりと上体を起こしテーブルを見やるとそこは盛大に散らかっていた。寿司桶、酒の瓶、皿、箸、ティッシュ、コップ、湯呑みエトセトラ……。普段ならきちんと片付けをしてから眠りにつくのだが、昨日は祝いごとということもあり、羽目を外してそのまま眠ってしまったのを思い出す。
俺の親友、観音坂独歩に恋人が出来たと報告されたときは本当に驚いた。何せ仕事、仕事で誰かと恋愛しているなんて一切感じさせなかったからだ。いや、もしかすると一二三の仕事中である夜中に相手と想いを通わせていたのかもしれない。
6980俺の親友、観音坂独歩に恋人が出来たと報告されたときは本当に驚いた。何せ仕事、仕事で誰かと恋愛しているなんて一切感じさせなかったからだ。いや、もしかすると一二三の仕事中である夜中に相手と想いを通わせていたのかもしれない。
雨野(あまの)
DONE付き合ってないひふ幻のキスにまつわる話です。多分ギャグ教えて、伊弉冉さん「キス、してみませんか?」
彼の箸に挟まるは天ぷら。キスの天ぷら。つまりこういうことだろう。キスの天ぷらを見て口付けとはどのような心地なのか、と思い一二三に声をかけた、と。
「どーせ、キスの天ぷら見てキスってどんなんか気になって言ってるだけっしょ〜?」と思ったことを口にすれば、夢野幻太郎は「おや。小生の考えていることがよく分かりましたね」なんてとぼけた様子で返してきた。
「俺っちたち付き合ってないし、好き合ってるわけでもないんだしさ、それはヤバくね?」
かぼちゃの天ぷらを一口齧ると小気味の良い音が立てられる。揚げ物は揚げたてが美味いってのは周知の事実である。それ故にこの男の戯言に付き合っている暇などないのだが、そんな事情は知らぬ、とばかりに幻太郎は話を蒸し返した。
5028彼の箸に挟まるは天ぷら。キスの天ぷら。つまりこういうことだろう。キスの天ぷらを見て口付けとはどのような心地なのか、と思い一二三に声をかけた、と。
「どーせ、キスの天ぷら見てキスってどんなんか気になって言ってるだけっしょ〜?」と思ったことを口にすれば、夢野幻太郎は「おや。小生の考えていることがよく分かりましたね」なんてとぼけた様子で返してきた。
「俺っちたち付き合ってないし、好き合ってるわけでもないんだしさ、それはヤバくね?」
かぼちゃの天ぷらを一口齧ると小気味の良い音が立てられる。揚げ物は揚げたてが美味いってのは周知の事実である。それ故にこの男の戯言に付き合っている暇などないのだが、そんな事情は知らぬ、とばかりに幻太郎は話を蒸し返した。
雨野(あまの)
DONEひふ幻の何てことないただの日常です。過去も未来も都合良く忘れたふりをして、ふたりの時間を育んで欲しいですね。
思い思われ、明け六つ 生温い微睡みの中で隣接する熱が離れていく気配を感じとった。もうそんな時刻か。時間も、かかる負荷も忘れて愛し合い、気絶するように眠りについたのは何時だったのだろうか。受け入れる側に負担がかかることに違いはないが、彼だって昨晩は何度も果てたくせに、難なく起床出来るタフさには毎度驚かされる。
『幻太郎、俺っちより若いのに体力なさすぎっしょ〜!』という架空の声は無視して、再び就眠するためにケットを手繰りよせる。きっとそのうち朝食に呼ばれるだろう。
彼が炊事する音を浅い眠りの中で聞く朝が、幻太郎は好きだった。
しかし、いつまで経ってもその音が耳に届くことはなく、代わりに華やかな香りとともに熱が戻ってくる。彼が二度寝するなんて珍しい。まあ、今日は特別な予定があるわけでもないから、こういう日があっても悪くないだろう。たまには自分が朝食を作っても良いかもしれない、と冷蔵庫の中に思いを馳せていると、馴染みのない温度を感じ取る。
2555『幻太郎、俺っちより若いのに体力なさすぎっしょ〜!』という架空の声は無視して、再び就眠するためにケットを手繰りよせる。きっとそのうち朝食に呼ばれるだろう。
彼が炊事する音を浅い眠りの中で聞く朝が、幻太郎は好きだった。
しかし、いつまで経ってもその音が耳に届くことはなく、代わりに華やかな香りとともに熱が戻ってくる。彼が二度寝するなんて珍しい。まあ、今日は特別な予定があるわけでもないから、こういう日があっても悪くないだろう。たまには自分が朝食を作っても良いかもしれない、と冷蔵庫の中に思いを馳せていると、馴染みのない温度を感じ取る。
雨野(あまの)
DONE死ネタです。個人的に死ネタが地雷気味で読んだことがないので他の方の作品と類似しているかもしれません。もしそういった場合には削除いたしますので教えていただけると幸いです。仏教的な考え方が含まれているので苦手な方は自衛なさってください。 1750雨野(あまの)
DONE付き合っていないひふ幻が海に行く話です。「夕日が綺麗」と口にすると失恋してしまう、っていうジンクスを書き上げた後に思い出しました。ふたり、夏に溺れる 俺と夢野幻太郎の関係は妙なものだ。好敵手であり、友人であり、かと言ってそこに存在しているものは友情なんかでは片付けられず、互いに慈しみ合っている……と俺は勝手に解釈している。もちろん交際もしていなければキスや抱擁などもしていない。それでもふたりの間にはたしかな愛があると思っている。
〝好きだよ、付き合おう〟とどちらかが言い出せば簡単に繋がることが出来るはずだ。それでも互いにそうしないのは言葉での約束がいかに陳腐なものか理解しているからだろうか。
美味しいね、と言いながら食事を共にしたり、何をするわけでもなく一緒にぼうっとワイドショーを眺めたり、夏には庭で花火をして騒いだり、そしてたまに互いを労わるように手を握り縁側で夜空を眺める。そういう何気ない日常が続くだけで幸せだった。
4364〝好きだよ、付き合おう〟とどちらかが言い出せば簡単に繋がることが出来るはずだ。それでも互いにそうしないのは言葉での約束がいかに陳腐なものか理解しているからだろうか。
美味しいね、と言いながら食事を共にしたり、何をするわけでもなく一緒にぼうっとワイドショーを眺めたり、夏には庭で花火をして騒いだり、そしてたまに互いを労わるように手を握り縁側で夜空を眺める。そういう何気ない日常が続くだけで幸せだった。
雨野(あまの)
DONE一応、一二三誕生日おめでとう作品です。付き合ってないひふ幻。クイズ大会してます。あえて遅刻しました。あえてです。本当です。答えをどうぞ!「夢野センセ、これ何?」
「おや、テレビで観たことないですか?ここのボタンを押すと……」
彼はそう言ってテーブルの上のピンポンブザーを一回だけ押した。ピンポーンと軽快な音が鳴ると赤い丸が描かれたプレートが勢いよく立ち上がる。
「越後製菓!」
「この遊びしたくて買ったん?」
「そんな訳ないじゃないですか。それだったら本物そっくりの餅の形したやつ買いますよ」
「あっそ」
犬猿の仲だった一二三と幻太郎の距離が近付いたのはここ半年のこと。シンジュクの街で真っ青な顔をした夢野幻太郎に遭遇したことがきっかけだった。敵と言えども具合の悪そうな人を放っておけるほど一二三は冷酷ではない。彼も本当に調子が悪かったのだろう「具合悪そうだけどどうかしたのかい?」と聞いた一二三に対して「貧血だと思います……」と素直に答えた。それならば、と一二三と独歩の暮らすマンションへと招き入れ、介抱ついでに手料理も振る舞った。
7271「おや、テレビで観たことないですか?ここのボタンを押すと……」
彼はそう言ってテーブルの上のピンポンブザーを一回だけ押した。ピンポーンと軽快な音が鳴ると赤い丸が描かれたプレートが勢いよく立ち上がる。
「越後製菓!」
「この遊びしたくて買ったん?」
「そんな訳ないじゃないですか。それだったら本物そっくりの餅の形したやつ買いますよ」
「あっそ」
犬猿の仲だった一二三と幻太郎の距離が近付いたのはここ半年のこと。シンジュクの街で真っ青な顔をした夢野幻太郎に遭遇したことがきっかけだった。敵と言えども具合の悪そうな人を放っておけるほど一二三は冷酷ではない。彼も本当に調子が悪かったのだろう「具合悪そうだけどどうかしたのかい?」と聞いた一二三に対して「貧血だと思います……」と素直に答えた。それならば、と一二三と独歩の暮らすマンションへと招き入れ、介抱ついでに手料理も振る舞った。
雨野(あまの)
DONEディビジョンシャッフル前日譚のひふ幻です。組み合わせについて独自の解釈や捏造ありなのでご了承いただける方のみお読みください。*ドラパ内容についてのネタバレはありませんがチームの組み合わせについてのネタバレはあります。
ここは前夜祭「その不細工な顔いい加減やめてもらえませんか」
「ひっでぇ〜!シンジュクナンバーワンホストに向かって不細工って!」
更に唇を尖らせるも幻太郎は涼しい顔をしてお茶を啜るのみだった。先程、一二三特製の絶品麻婆豆腐と酢豚に棒棒鶏の中華三昧コースを食べ「もうこれ以上食べたら死ぬ……」とまで言っていた恋人は現在、お茶請けの羊羹をぱくりと口に入れている。満腹じゃなかったのかよ、と心の中で突っ込むが、消化するスピードはやっぱり二十代半ばだな〜若いなぁ〜なんて思ったりして。彼との年齢差に自然と頬が緩んでしまう。一二三はこの年下の恋人が可愛くて仕方がないのだ。
「だってさぁ〜!ディビジョンをシャッフルって、ぜってぇ幻太郎と一緒になれるって思ってたのにぃ〜!」
5231「ひっでぇ〜!シンジュクナンバーワンホストに向かって不細工って!」
更に唇を尖らせるも幻太郎は涼しい顔をしてお茶を啜るのみだった。先程、一二三特製の絶品麻婆豆腐と酢豚に棒棒鶏の中華三昧コースを食べ「もうこれ以上食べたら死ぬ……」とまで言っていた恋人は現在、お茶請けの羊羹をぱくりと口に入れている。満腹じゃなかったのかよ、と心の中で突っ込むが、消化するスピードはやっぱり二十代半ばだな〜若いなぁ〜なんて思ったりして。彼との年齢差に自然と頬が緩んでしまう。一二三はこの年下の恋人が可愛くて仕方がないのだ。
「だってさぁ〜!ディビジョンをシャッフルって、ぜってぇ幻太郎と一緒になれるって思ってたのにぃ〜!」
雨野(あまの)
DONE付き合ってないひふ幻。匂うはずがない一二三の匂いがしちゃう幻太郎の話。不治の病 それは朝食に、とたまごサンドに齧り付いたときだった。ああ、まただ。小さく舌打ちをして、とりあえず口の中のものを咀嚼する。何てことないただのたまごサンド。マヨネーズの風味が効いたたまごサラダをふわふわのパンで挟んだ素朴なものだ。近所のコンビニで買ってきたそれは人気の品物だ、とテレビのバラエティー番組でも紹介されていた。自身だって〝本来なら〟美味しくいただけたであろうそのサンドイッチを見つめ、ため息を吐く。
夢野幻太郎は一週間前よりとある症状に悩まされていた。それは今のようにふとした瞬間にやってくるのだ。
忌まわしいあいつの匂い。嗅いだだけで不夜城が脳裏によぎる華やかで艶やかな匂い。あいつ──伊弉冉一二三の匂いが自身に纏わりつくかのように香るのだ。もちろんあいつはこの場にいないのに。こうなってしまっては食欲も失せてしまう。一口だけ齧ったたまごサンドをラップに包み、冷蔵庫へと運ぶ。夜になれば食欲もわいてくるはず、あるいは〝野良猫〟にあげてしまっても良いな、とも思った。不幸中の幸いなのは外食中じゃなかったことだろう。さすがに飲食店に赴き、一口だけ食べて残してしまうのは心苦しい。
4737夢野幻太郎は一週間前よりとある症状に悩まされていた。それは今のようにふとした瞬間にやってくるのだ。
忌まわしいあいつの匂い。嗅いだだけで不夜城が脳裏によぎる華やかで艶やかな匂い。あいつ──伊弉冉一二三の匂いが自身に纏わりつくかのように香るのだ。もちろんあいつはこの場にいないのに。こうなってしまっては食欲も失せてしまう。一口だけ齧ったたまごサンドをラップに包み、冷蔵庫へと運ぶ。夜になれば食欲もわいてくるはず、あるいは〝野良猫〟にあげてしまっても良いな、とも思った。不幸中の幸いなのは外食中じゃなかったことだろう。さすがに飲食店に赴き、一口だけ食べて残してしまうのは心苦しい。
雨野(あまの)
DONEhttps://shindanmaker.com/804548様からお題いただいて書いたひふ幻です。お題→ ひふ幻のお話は
「人は本当に悲しいとき、涙が出ないのだと知った」で始まり「ふと思い付いて、ごく自然に筆を執った」で終わります。
貴方に生かされる 人は本当に悲しいとき、涙が出ないのだと知った。
彼がこの家から出て行って三日が経つ。だが、俺は未だに泣けずにいた。別に強がる必要もない。この家には俺一人なのだから思う存分泣いたら良いのだ。それなのに涙は一滴も出なかった。
巷で〝泣ける〟と話題の映画を観ても涙は出なかった。それならば、と読む度に涙を流す歴史小説を試してみるがそれもまったくというほど涙が出なかった。
自分はおかしくなってしまったのだろうか。彼が俺の体の一部や機能さえも一緒に連れて行ってしまったのだろうか。もし、そうだとしたらいっそ体も心も魂でさえも全て奪い去ってくれて良かったのに。
もう初夏へと向かっているはずなのに自分の手は氷のように冷たく不快感を抱く。少しでも温めようと両手を擦り合わせるがあまり意味はなさそうだ。昼間なのに雨のせいかどんよりと暗い雰囲気が漂う。しとしとと鳴る雨音を聞きながら暫し目を閉じ彼のことを考えた。太陽みたいに明るい人なのに、どうしてこんな天気の日に思い浮かべてしまうのだろう。いや、雨だろうと晴れだろうと関係ない。ところ構わず彼のことを考えているじゃないか、と自分に物申す。
2194彼がこの家から出て行って三日が経つ。だが、俺は未だに泣けずにいた。別に強がる必要もない。この家には俺一人なのだから思う存分泣いたら良いのだ。それなのに涙は一滴も出なかった。
巷で〝泣ける〟と話題の映画を観ても涙は出なかった。それならば、と読む度に涙を流す歴史小説を試してみるがそれもまったくというほど涙が出なかった。
自分はおかしくなってしまったのだろうか。彼が俺の体の一部や機能さえも一緒に連れて行ってしまったのだろうか。もし、そうだとしたらいっそ体も心も魂でさえも全て奪い去ってくれて良かったのに。
もう初夏へと向かっているはずなのに自分の手は氷のように冷たく不快感を抱く。少しでも温めようと両手を擦り合わせるがあまり意味はなさそうだ。昼間なのに雨のせいかどんよりと暗い雰囲気が漂う。しとしとと鳴る雨音を聞きながら暫し目を閉じ彼のことを考えた。太陽みたいに明るい人なのに、どうしてこんな天気の日に思い浮かべてしまうのだろう。いや、雨だろうと晴れだろうと関係ない。ところ構わず彼のことを考えているじゃないか、と自分に物申す。
雨野(あまの)
DONE付き合っているひふ幻。いちゃいちゃさせたくて書いたのでキャラ崩壊してます。ギャグ風。ヤマなしオチなし。汝、罪人なり「おや、貴方もここの控え室でしたか」
幻太郎はドアを開け一二三の顔を確認するとすぐにそう口にした。
「わっ、やったね!」と思わずこぼすと彼は咎めるように鋭い眼光を向けてくる。あ、メンゴメンゴ。
「貴方と同じ部屋番号を引いてしまうなんて運も尽きたもんですねぇ」と芝居がかった台詞を吐くもんだからくすくすと笑いが込み上げる。それにつられるようにして幻太郎も頬を緩めた。そして廊下をキョロキョロと見回し人がいないことを確認すると小走りで一二三のいるソファへと近付いてきた。
「そんな走って来なくても俺っちは逃げないって」と笑いながら言ってやる。もう、可愛いんだから。
幻太郎はソファに座ると一二三の懐に入り込んできて「時間が勿体ないから急いだんですよ」と笑った。駄目。俺の恋人が可愛すぎる。
3003幻太郎はドアを開け一二三の顔を確認するとすぐにそう口にした。
「わっ、やったね!」と思わずこぼすと彼は咎めるように鋭い眼光を向けてくる。あ、メンゴメンゴ。
「貴方と同じ部屋番号を引いてしまうなんて運も尽きたもんですねぇ」と芝居がかった台詞を吐くもんだからくすくすと笑いが込み上げる。それにつられるようにして幻太郎も頬を緩めた。そして廊下をキョロキョロと見回し人がいないことを確認すると小走りで一二三のいるソファへと近付いてきた。
「そんな走って来なくても俺っちは逃げないって」と笑いながら言ってやる。もう、可愛いんだから。
幻太郎はソファに座ると一二三の懐に入り込んできて「時間が勿体ないから急いだんですよ」と笑った。駄目。俺の恋人が可愛すぎる。
雨野(あまの)
MOURNING恋人同士のひふ幻。仲良く散歩してる。かっこいい一二三などいません。かっこいい(?)幻太郎はいます。モブ出てきますが一瞬です。供養。駆け出したら止まらない「じゃあ、次回作も期待しているよ」
「はい、ありがとうございます。失礼します」
「おっまた〜せ……って誰かと話してた?」
トイレから戻ってきた一二三が去って行く背中を訝しげに見つめた。くすり、と笑いを一つこぼす。この男は嫉妬深いのだ。
「ええ。◯◯先生ですよ」
「◯◯って……あの有名な作家さん!?」
「まさにそのお方です」
「ほえ〜。あんな見た目してんだ〜。意外とおっさんじゃん!」
「こら、聞こえますよ」
相変わらずな物言いの恋人を嗜める。しかし「メンゴメンゴ」と言いながら太陽のような笑顔を見せられてしまうとついつい許してしまうのは惚れた弱みだろうか。伊弉冉一二三は罪深い人物である。
「何話してたん?」
「偶然お会いしたからご挨拶と……小生の書いた本についてですかね」
2723「はい、ありがとうございます。失礼します」
「おっまた〜せ……って誰かと話してた?」
トイレから戻ってきた一二三が去って行く背中を訝しげに見つめた。くすり、と笑いを一つこぼす。この男は嫉妬深いのだ。
「ええ。◯◯先生ですよ」
「◯◯って……あの有名な作家さん!?」
「まさにそのお方です」
「ほえ〜。あんな見た目してんだ〜。意外とおっさんじゃん!」
「こら、聞こえますよ」
相変わらずな物言いの恋人を嗜める。しかし「メンゴメンゴ」と言いながら太陽のような笑顔を見せられてしまうとついつい許してしまうのは惚れた弱みだろうか。伊弉冉一二三は罪深い人物である。
「何話してたん?」
「偶然お会いしたからご挨拶と……小生の書いた本についてですかね」
雨野(あまの)
MOURNING付き合ってないひふ幻。酔っ払い幻太郎が見たくて書いた。んー力不足。供養。シチュエーション被りとかもあるかもしれない。受が心を通じ合わせるのに戸惑う様子や一回拒否するシチュエーションが好きなのかも。この小説から他の小説にも引用するかも。ビジネスの話「おやおや、おばんです〜いらしてたんですね〜」
この家の家主は引き戸を開けて中に入るといつもより間延びした声を出した。赤ら顔。とろんとした目。おまけに体から発せられるアルコール臭。てか、俺の家じゃないのに何故、俺が出迎えているんだ。深くため息を吐き出しながら「『いらしてたんですね〜』じゃなくてさ〜話聞かせてくれって呼んだの夢野センセじゃん」と彼を咎めた。
俺と夢野幻太郎のこの妙な交流は三ヶ月前から始まった。新作の参考にしたいからホスト業のことを聞かせてくれ、と一二三と独歩の住むマンションに訪れたときは本当に驚いた。何しろ一二三は以前、幻太郎の服装のことに口を出し、逆鱗に触れてしまっていたからだ。激昂した相手に縋るほど困っているのか幻太郎は「以前のことは水に流すので協力してもらえませんか」と頭を下げてきたのだ。一二三はその依頼を快く引き受け、それから度々、夢野邸に呼び出されては仕事内容だったり、客とのやり取りだったりを彼に教えている。そして今日も例に漏れずに呼び出された……は良いが家に入って早々、「ちょっと野暮用がありまして……少しの間待ってていただけませんか?」と言って彼は出かけてしまったのだ。まあ今日は仕事も休みだし、何の予定もないし、少しの間なら……と思ったのが間違いだった。彼は一時間待っても二時間待っても帰って来なかった。その間も着信を入れたりメッセージを送ったりするものの一二三のスマートフォンは律儀に沈黙していた。
7732この家の家主は引き戸を開けて中に入るといつもより間延びした声を出した。赤ら顔。とろんとした目。おまけに体から発せられるアルコール臭。てか、俺の家じゃないのに何故、俺が出迎えているんだ。深くため息を吐き出しながら「『いらしてたんですね〜』じゃなくてさ〜話聞かせてくれって呼んだの夢野センセじゃん」と彼を咎めた。
俺と夢野幻太郎のこの妙な交流は三ヶ月前から始まった。新作の参考にしたいからホスト業のことを聞かせてくれ、と一二三と独歩の住むマンションに訪れたときは本当に驚いた。何しろ一二三は以前、幻太郎の服装のことに口を出し、逆鱗に触れてしまっていたからだ。激昂した相手に縋るほど困っているのか幻太郎は「以前のことは水に流すので協力してもらえませんか」と頭を下げてきたのだ。一二三はその依頼を快く引き受け、それから度々、夢野邸に呼び出されては仕事内容だったり、客とのやり取りだったりを彼に教えている。そして今日も例に漏れずに呼び出された……は良いが家に入って早々、「ちょっと野暮用がありまして……少しの間待ってていただけませんか?」と言って彼は出かけてしまったのだ。まあ今日は仕事も休みだし、何の予定もないし、少しの間なら……と思ったのが間違いだった。彼は一時間待っても二時間待っても帰って来なかった。その間も着信を入れたりメッセージを送ったりするものの一二三のスマートフォンは律儀に沈黙していた。
カヤ🌙
DONEひふ誕らしさのカケラもないんですがおめでとうの気持ちはあります……。ホストモードが腹立たしくてホスクラで管を巻くユメノの話であります。
【伊弉冉一二三という男は女性が好きである】【伊弉冉一二三という男は女性が好きである】
「常々思っていたのですよ。伊弉冉一二三というホストは女性が好きなのかということを」
「そんなにも僕のことを考えてくれていたのかい? 嬉しいよ」
幻太郎は一二三のたわごとを聞き流してブランデーを流し込む。強烈な甘い香りと熱が喉を焼き、思考が少しクリアになった。
彼のテリトリーで、無防備な身を晒して好き勝手な管を巻く。高揚感と羞恥心で頭の中身が煮えてしまいそうだった。
「女性のことを――とりわけ自分の客を大切にしているのは認めましょう。だがそれは果たして好き……心惹かれていると言ってよいものでしょうか。愛って、もっと身勝手なものだと思うのです」
「へぇ」
一二三は足を組み替えて興味深そうに幻太郎の話に耳を傾けている。余裕ぶった態度にささやかな苛立ちを覚えた幻太郎は口元に薄笑いを浮かべて整ったかんばせを睨む。
1489「常々思っていたのですよ。伊弉冉一二三というホストは女性が好きなのかということを」
「そんなにも僕のことを考えてくれていたのかい? 嬉しいよ」
幻太郎は一二三のたわごとを聞き流してブランデーを流し込む。強烈な甘い香りと熱が喉を焼き、思考が少しクリアになった。
彼のテリトリーで、無防備な身を晒して好き勝手な管を巻く。高揚感と羞恥心で頭の中身が煮えてしまいそうだった。
「女性のことを――とりわけ自分の客を大切にしているのは認めましょう。だがそれは果たして好き……心惹かれていると言ってよいものでしょうか。愛って、もっと身勝手なものだと思うのです」
「へぇ」
一二三は足を組み替えて興味深そうに幻太郎の話に耳を傾けている。余裕ぶった態度にささやかな苛立ちを覚えた幻太郎は口元に薄笑いを浮かべて整ったかんばせを睨む。
こわたつみ
DOODLEひふ幻入れ替わりネタのです。
色々下手なんですけど…とりあえずこの思いを投稿してみたかったです…………
設定
📚に片想い🥂が疲れたので風呂に入ろうとして、アッ!!!!!!ってなる所
その後描き加え→
なんで幻太郎の家に一二三が行き着いたのか?
の部分を描きました。 3
こわたつみ
DOODLE忙しくなる前に会って致した時にめちゃくちゃマークをつけられ「俺っちの事思い出してね♡でもオナニーしちゃダメだよ、我慢しててね?今度会ったらいっぱいするかんね」を風呂上がりに思い出して、クソッ…となっている小生です。boh2boh
DONE薔薇に雪解け2開催おめでとうございます!ARBネタのひふ幻です。
ARBのイベントストーリーやってないと意味分からないと思いますすみません……
鍋ネタの時の話です。遭難エピソードにも触れてます。
ARB……いつだって恐ろしい爆弾を落とし続ける…… 1218