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MAIKING途中書きのどんきつねさん的なきたさん。まだようやく両片想いになったくらいの段階。
治はこの頃お店の2階に住んでいます。
小さなキッチンに見合わない大きな冷蔵庫を置いていて、部屋は和室なのでテーブルじゃなくちゃぶ台で食事。
お店が軌道に乗ってきて、時間的にも金銭的にも余裕ができてきたらもうちょっと広い近所のマンションに引っ越します。
白狐宮治にとって『飯を食う』という行為は、人生の中で1番の幸福な時間であった。ところがこの数日、落ち着いてその至福の時間を過ごせていない。
おにぎり宮の営業を終え、一人暮らしにしては立派な冷蔵庫のある部屋に戻り、一日頑張った自分のために拵えた夕飯の並んだちゃぶ台の向こうに、ちょこんと正座する想い人、北信介の姿があった。いつもと変わらない服装のそのひとには、本来あるはずのない、狐のものと思われる真っ白いふわふわの尻尾と、頭の上にはツンと立ち上がった同じく白くふわふわの三角形の耳が存在していた。彼は治が食事を摂る間、きちんと正座をしたまま、じっとその様子を見守っている。
これが、治がここ最近落ち着いて至福の時を過ごせていない大きな理由だった。そもそも実家で農業を営んでいる彼が、こんな時間に街中の治の部屋にいるはずがないのである。
3286おにぎり宮の営業を終え、一人暮らしにしては立派な冷蔵庫のある部屋に戻り、一日頑張った自分のために拵えた夕飯の並んだちゃぶ台の向こうに、ちょこんと正座する想い人、北信介の姿があった。いつもと変わらない服装のそのひとには、本来あるはずのない、狐のものと思われる真っ白いふわふわの尻尾と、頭の上にはツンと立ち上がった同じく白くふわふわの三角形の耳が存在していた。彼は治が食事を摂る間、きちんと正座をしたまま、じっとその様子を見守っている。
これが、治がここ最近落ち着いて至福の時を過ごせていない大きな理由だった。そもそも実家で農業を営んでいる彼が、こんな時間に街中の治の部屋にいるはずがないのである。
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MOURNINGおにぎり屋さんでのないしょのひとコマあるよる「北さん、順番につくりますんで、もうちょっと待っとってくださいね。はいこれ、いちばん美味しいとこ」
おにぎり宮。
治はひっきりなしに入る注文を切り盛りしながら、焼きたてのだし巻き玉子や、炙ったたらこ、漬物などの端っこを綺麗に盛り合わせた小皿を信介に差し出した。
「ありがとう。よう繁盛しとるやんか」
「ありがたいことです」
「こんな忙しい時に寄ってもうて、すまんな」
「いえいえ、いつでも気にせんと、どんどん寄ってくださいよ」
「俺のことは気にせんでええよ。メシ食うたら帰るから」
半分ほどになっていた信介のグラスに冷たい麦茶を注いだところで、若いスタッフによってほくほくと湯気を立てるお櫃が運ばれてきた。
カタン
手早く、そして丁寧に。櫃にしゃもじがもどされる心地よい音に信介は聞き耳を立てた。
1394おにぎり宮。
治はひっきりなしに入る注文を切り盛りしながら、焼きたてのだし巻き玉子や、炙ったたらこ、漬物などの端っこを綺麗に盛り合わせた小皿を信介に差し出した。
「ありがとう。よう繁盛しとるやんか」
「ありがたいことです」
「こんな忙しい時に寄ってもうて、すまんな」
「いえいえ、いつでも気にせんと、どんどん寄ってくださいよ」
「俺のことは気にせんでええよ。メシ食うたら帰るから」
半分ほどになっていた信介のグラスに冷たい麦茶を注いだところで、若いスタッフによってほくほくと湯気を立てるお櫃が運ばれてきた。
カタン
手早く、そして丁寧に。櫃にしゃもじがもどされる心地よい音に信介は聞き耳を立てた。
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MOURNING天使とちみきたさんのハイブリッド書きたいところだけ
天使のたまご宮治は昨夜、『人を拾う』という、人生になかなかない経験をした。しかも背中に大きな翼のある人間だ。
最近彼は調理師学校に通う傍ら、修行のつもりで入った居酒屋のバイトで突如ホールに出されることになり、いっそ辞めようかと迷っていた。
バイトを始めて2年。決して仕事が出来ないわけではないと自負している。居酒屋にありがちな雑多なメニューは全てマスターしたし、どこかの高級料亭から流れてきたと噂の寡黙で頑固な板長に叩き込まれた包丁捌きは、宴会のお造りを任されるほどになっていた。
ただ、雇われ店長から接客の方が向いているなどと煽てられ、頼み込まれて断りきれなかったのだ。
最近、マナーの悪いサラリーマン客が増えてきて、女子学生は残らず辞めて行き、ホールスタッフが足りていないのは明らかだったし、ホールに学生バイトしかいないような居酒屋で、ひときわ体格の良い自分に楯突く客がいなかったのもある。
5042最近彼は調理師学校に通う傍ら、修行のつもりで入った居酒屋のバイトで突如ホールに出されることになり、いっそ辞めようかと迷っていた。
バイトを始めて2年。決して仕事が出来ないわけではないと自負している。居酒屋にありがちな雑多なメニューは全てマスターしたし、どこかの高級料亭から流れてきたと噂の寡黙で頑固な板長に叩き込まれた包丁捌きは、宴会のお造りを任されるほどになっていた。
ただ、雇われ店長から接客の方が向いているなどと煽てられ、頼み込まれて断りきれなかったのだ。
最近、マナーの悪いサラリーマン客が増えてきて、女子学生は残らず辞めて行き、ホールスタッフが足りていないのは明らかだったし、ホールに学生バイトしかいないような居酒屋で、ひときわ体格の良い自分に楯突く客がいなかったのもある。
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DOODLE付き合いはじめてすぐくらいのいちゃいちゃあめ沛然と軽トラックの天井を打つ雨の響き。
ガラスの向こうの景色はひっきりなしに打ちつける雨粒でぼんやりとした抽象画のようになっていた。
なんとなく流していたラジオの声もかき消され、この狭い空間に二人、取り残されてしまったようだ。
忙しなく動くワイパーの動きも追いつかず、仕方なく治は路肩に車を寄せ、ハザードのボタンを押した。
助手席で心配そうにフロントガラスいっぱいの抽象画を眺めていた北信介もその判断に賛成らしく、一旦シートベルトを外すと、ゴソゴソと作業着のポケットを探りはじめた。
「この様子ならすぐに止むやろ。飴ちゃん、食うか」
「いただきます」
出てきたのは熱中症対策であろう、真新しい塩飴。
(相変わらずちゃんとしてはんのやな)
953ガラスの向こうの景色はひっきりなしに打ちつける雨粒でぼんやりとした抽象画のようになっていた。
なんとなく流していたラジオの声もかき消され、この狭い空間に二人、取り残されてしまったようだ。
忙しなく動くワイパーの動きも追いつかず、仕方なく治は路肩に車を寄せ、ハザードのボタンを押した。
助手席で心配そうにフロントガラスいっぱいの抽象画を眺めていた北信介もその判断に賛成らしく、一旦シートベルトを外すと、ゴソゴソと作業着のポケットを探りはじめた。
「この様子ならすぐに止むやろ。飴ちゃん、食うか」
「いただきます」
出てきたのは熱中症対策であろう、真新しい塩飴。
(相変わらずちゃんとしてはんのやな)
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MOURNING双子が進路について喧嘩するタイミングが、北さん卒業後の三年の時だと勘違いしていて、
時系列が合わなくなってしまいました。。
北さん在校中は治の進路についてまだ決まってなかった場合のifの話として読んでいただけたらとおもいます。。
はー、やらかした。
天気雨稲荷崎高校バレー部三年生の引退の日、晴れ渡った青空に、キラキラと小雨がパラついた。
「はは、狐の嫁入りや。誰やろな」
体育館で三年生の最後の挨拶を終え、校門の前で卒業生、在校生、入り乱れて記念撮影をした後、北信介は後輩の宮治を学校の裏山にある小さな社に連れ出した。
山肌に沿って長く連なる赤い鳥居をくぐり、呑気に笑う信介のすぐ後ろを歩きながら、治はなぜ今自分がこんなところに呼び出されたのか、緊張を隠しきれずガチガチになっていた。
どれくらい登って来たのか、眼下には稲荷崎高校のある街の、さらにその先には、信介の実家のあるあたり、広大な緑の景色が広がっている。
「治、何も憶えてないんか?」
「何がですか?」
「ほうか。まぁええわ」
2822「はは、狐の嫁入りや。誰やろな」
体育館で三年生の最後の挨拶を終え、校門の前で卒業生、在校生、入り乱れて記念撮影をした後、北信介は後輩の宮治を学校の裏山にある小さな社に連れ出した。
山肌に沿って長く連なる赤い鳥居をくぐり、呑気に笑う信介のすぐ後ろを歩きながら、治はなぜ今自分がこんなところに呼び出されたのか、緊張を隠しきれずガチガチになっていた。
どれくらい登って来たのか、眼下には稲荷崎高校のある街の、さらにその先には、信介の実家のあるあたり、広大な緑の景色が広がっている。
「治、何も憶えてないんか?」
「何がですか?」
「ほうか。まぁええわ」
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TRAINING🍙の気持ちが、双子から離れて🌾さんに寄っていく過程はどんな感じだったんだろう?という妄想。二人もう付き合ってます。
大人になって二人とも実家を出た前提で、何かの用事で帰ってきてるときの二人の会話。
兄弟喧嘩「なぁ、ツム」
「なんや、サム」
「北さん、今頃何してはんのやろな」
「…………」
治の問いかけへの侑の返答はなく、雑誌をめくる音だけが静かに響いた。
高校を卒業し、双子が二人とも実家を出た今も、実家に顔を出せば部屋にはあの頃と同じ2段ベッドが待っていた。双子が成長したからと言って、家の間取りが変わるわけではない。
「なぁ、ツム」
「なにて」
「北さ「もうわかったわ!!!」」
声と同時に上段に横になっていた侑の腰のあたりの床板が、急に盛り上がり始めた。二枚に分かれた床板の継ぎ目の部分を下段の治が器用に両足を使って押し上げているのだ。
「こらこらこらこら!やめえや!!」
侑が地元を離れて数年。いつの間にか、北さんこと北信介と双子の片割れ治が良い仲になっていた。いつの間にか、と言っても全く心当たりがないわけではない。おにぎり宮を開業するにあたって、いろいろと相談を聞いてもらっている様子だったし、おにぎりに北さんの育てたお米を使わせてもらうことはもちろん、稲刈りの手伝いや、田植え、野菜の収穫、最近では北さんのおばあちゃんのゆみえさんに店を手伝ってもらっていることすらあった。
1835「なんや、サム」
「北さん、今頃何してはんのやろな」
「…………」
治の問いかけへの侑の返答はなく、雑誌をめくる音だけが静かに響いた。
高校を卒業し、双子が二人とも実家を出た今も、実家に顔を出せば部屋にはあの頃と同じ2段ベッドが待っていた。双子が成長したからと言って、家の間取りが変わるわけではない。
「なぁ、ツム」
「なにて」
「北さ「もうわかったわ!!!」」
声と同時に上段に横になっていた侑の腰のあたりの床板が、急に盛り上がり始めた。二枚に分かれた床板の継ぎ目の部分を下段の治が器用に両足を使って押し上げているのだ。
「こらこらこらこら!やめえや!!」
侑が地元を離れて数年。いつの間にか、北さんこと北信介と双子の片割れ治が良い仲になっていた。いつの間にか、と言っても全く心当たりがないわけではない。おにぎり宮を開業するにあたって、いろいろと相談を聞いてもらっている様子だったし、おにぎりに北さんの育てたお米を使わせてもらうことはもちろん、稲刈りの手伝いや、田植え、野菜の収穫、最近では北さんのおばあちゃんのゆみえさんに店を手伝ってもらっていることすらあった。
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TRAININGちょっとした喧嘩未遂からの仲直り嫉妬その日、北信介は、おにぎり宮の2階、宮治の居室の台所で絶望していた。
つい先日、祖母に分けてもらった上等のクリームクレンザーで、この部屋にあるいくつかの鍋の、ちょうど半分をピカピカに磨き上げた後のことだった。
「残りはまた今度」
そう言って帰宅し、そして今日がその「また今度」だった。
日々使い込まれ、焦げ付いて茶色くなった鍋を綺麗に磨き上げる作業は、この上なく心地よい時間だった。今日という日を楽しみにしていたと言っても過言ではない。
ところが。
「なあ、治。鍋、傷だらけやんか」
不器用にところどころまだらに残った汚れと擦り傷で、鍋は見るも無惨な姿になっていた。
「………はい。すんません」
背後から、この部屋の主のしょぼくれた声が響く。高身長なはずの彼にしてはかなり下の位置からだった。たぶん自主的に正座をしているのだろう。
1523つい先日、祖母に分けてもらった上等のクリームクレンザーで、この部屋にあるいくつかの鍋の、ちょうど半分をピカピカに磨き上げた後のことだった。
「残りはまた今度」
そう言って帰宅し、そして今日がその「また今度」だった。
日々使い込まれ、焦げ付いて茶色くなった鍋を綺麗に磨き上げる作業は、この上なく心地よい時間だった。今日という日を楽しみにしていたと言っても過言ではない。
ところが。
「なあ、治。鍋、傷だらけやんか」
不器用にところどころまだらに残った汚れと擦り傷で、鍋は見るも無惨な姿になっていた。
「………はい。すんません」
背後から、この部屋の主のしょぼくれた声が響く。高身長なはずの彼にしてはかなり下の位置からだった。たぶん自主的に正座をしているのだろう。
polarbear_b_s
MOURNING去年書いたものの、二人をどうくっつけようか考えているうちに、別の話で戸森君の人物設定を他のキャラで使っちゃったので(背が高いから雇われた等)もう使えないから供養ですきっかけは戸森君 今年の晦日はちょうど定休日にあたる曜日だったので、おにぎり宮は12月29日をもって年内営業を終了し、晦日に大掃除をして大晦日からのんびりすることにした。
経営もやっと軌道に乗り出しバイトを雇う余裕もできて、初めて雇った戸森という青年はおっとりとしているがよく気の効く働き者で、初めて雇う側に立った治にしたらとてもやりやすい相手だった。その戸森と二人で朝から普段できない棚の奥や冷蔵庫などを念入りに掃除していた。
あと2日で新年ということで街もざわめき、店の前の通りも人通りが多い。
「戸森君は帰省せんの?たしか奈良の方やったやんな?」
棚から食器を取り出して拭き掃除をしていた戸森は振り返ることなく返事をした。
3419経営もやっと軌道に乗り出しバイトを雇う余裕もできて、初めて雇った戸森という青年はおっとりとしているがよく気の効く働き者で、初めて雇う側に立った治にしたらとてもやりやすい相手だった。その戸森と二人で朝から普段できない棚の奥や冷蔵庫などを念入りに掃除していた。
あと2日で新年ということで街もざわめき、店の前の通りも人通りが多い。
「戸森君は帰省せんの?たしか奈良の方やったやんな?」
棚から食器を取り出して拭き掃除をしていた戸森は振り返ることなく返事をした。