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    oaaaaae

    @oaaaaae

    D4、有馬くんに狂った女の末路。
    小説はpixivのが読みやすい。あとはTwitterに落としたメモを自分の備忘録として置いています。

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    斜烏様 https://x.com/pqo8cb/status/1803828861957738842?s=46&t=saTLp5msxs0gz90KLjQgHg のファン小説

    #D4

    extinguish 夕暮れの路地裏を疎らな距離感で闊歩する男が4人。談笑するでもなく各々の速度で暗闇に紛れて進む。数本の路地裏の曲がり道を経て、廃墟と言って差し支えないビルの前にたどり着く。タブレットで地図を見ていた阿久根は顔を上げると、後ろに続く3人へ片腕をかざして止まるように促す。

    「ここですね」
    「…ここか。燐童が先頭でナビゲート、俺と丞武が両翼に別れて突っ込む。有馬は…」
    「留守番してるわ」
    「見張り、ですね。煙草の数本のうちに終えるでしょうからよろしくお願いします〜」
    「おう」

     言葉少なに打ち合わせると谷ケ崎による合図で3人は廃ビルの中へ音もなく吸い込まれていく。その後ろ姿を半分も見送らないうちに、有馬はふらふらと足の赴くまま斜向かいの路地へ歩を進め、壁に背をつける。
     ポケットから取り出した煙草へ火をつけて、深く吸い込み、顎を上げてゆっくりと吐き出す。煙が揺らめく向こうには分厚い雲に隠された太陽。開発に失敗でもしたのか、戦争の痕跡がそのままなのか、朽ち果てた雑踏ビルが立ち並ぶ路地には人影はない。繁華街からも程遠く鳥すら寄り付かない路地は静まり返り、有馬の呼吸の音と、廃ビルから時折聞こえる悲鳴だけが木霊する。

    「──…?」

     1本目を吸い終わり、地面に擦り付けるべくしゃがみ込む。そうしてそのまま間を開けず2本目の煙草へ火をつけた刹那。路地に一陣の風が吹き込む。それは砂埃と共に、壁に貼り付ついていたらしい大判の紙を何枚か有馬の足元へと落とした。
     見るからにポスターといった風合いの紙の中央には、王座のような仰々しい椅子に腰掛け、前を見据えて微笑む長い黒髪の女。そして、縁取られ大きな文字で文章が並ぶ。

    『武器のない世界へ!──中王区』
    『もう二度と戦争は起こさせません──中王区』
    『平和な日常を──中王区』

     煙草を咥えたまま書いてある文言へ緩慢と目を通す。読めはするが、脳が理解を拒むキレイゴトの数々。野風に晒され、色褪せすらしているものの破損することはなくその存在感を誇示している。

     中王区に個人的な怨みはない。ただただ、いけ好かなかった。自分たちの良いようにルールを変え、武器を奪い、統治しようとする。キレイゴトで埋め尽くされた世界に暴力は必要ないと糾弾し、邪魔者は監獄にぶち込む。ルールを作った者が強いのは世の理。それで自分が強者なのだと吹聴する。くだらない。

    「有馬」

     不意に名を呼ぶ声に思考に耽っていたのを自覚し、声のした方へ目線を向ける。どうやら早くも任務の片がついたらしく、谷ケ崎がビルの前から消えていた有馬を探していたようだった。
     無意識と吸っていた煙草も短くなっていた。ちょうどいい灰皿とばかりにキレイゴトの並ぶ紙へ押し付け、火を消す。

    「今行く」

     グシャ。立ち上がると同時に普段の仕草と変わらず、落とした吸殻をスニーカーの靴ですり潰す。必然とポスターは見るも無惨な芥と成り果てた。
     後ろを振り返ることもなければ急ぐでもなく、呼ばれた声の主の元へ歩みを進める。

    「どこ行ってたんだ…。…なんだ、何かいいことでもあったのか?」

     後ろを振り返ることはない。後悔はない。自分が歩んだ道、犯した罪に躊躇いはない。しかし、与えられる未来が誰かによるものであれば、それは甘受できるものではない。

    「いーや?ただ、気に入らねぇもんは全て弾いちまえばいい、って再確認したトコ」
    「再確認?…まぁいい。ふたりが待ってる。行くぞ」
    「ヘイヘイ、リーダー様」

     後ろを振り返ることはない。進む先を未来と言うなら、明るい未来なんてものは切望しちゃいない。寧ろ混沌とした未来を望んでいる。未来を切り開くのは自分、そして、こいつらと。それぞれ目的は違う。歩む道も違う。しかしおそらくは、辿り着く行き先は同じ。気に入らないものは全て弾き、生温い平穏の全てを覆すべく。

    「ほざけ偽善者」
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